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第6章 ランスとイリヤ

12 【イリヤ自重する?】

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<<イリヤ視点>>
本当にもう、お兄ちゃんたら派手にやらかしてくれるんだから!!

お兄ちゃんが自己紹介合戦で魔法を使ったことで、学校は大騒ぎです。

別に悪いことをしたわけじゃ無いんだけど、入学そうそうに目立つのもね。

お兄ちゃんの性格だから、ちょっと調子に乗っちゃったんだと思う。

おかげで、わたしの周りにも人だかりが出来てしまっています。

皆んなわたしにも魔法を期待しているみたい。

一応わたしは自重していますよ。

水晶玉は割れちゃったけどね。

あれはしょうがないと思うの。

だって、水晶玉に手を乗せるように言われて、軽く触れただけなんだから。

わたしだって割りたくなかったの。本当よ。

お兄ちゃんの騒ぎがあった翌日、わたし達は、校長室に呼ばれたんです。

お父様とお母様も一緒に。

結論から言うと、お兄ちゃんが怒られることは無くて、今後の教育方針についてだって。

校長室に入ったら、机が2つあって、わたしとお兄ちゃんが並んで試験を受けたの。

読み書き、算術、理科、歴史、地理と一通りあったんだけど、そんなに難しくなかったからすぐに解けたの。

結構時間は余っちゃった。

お兄ちゃんは、少し悩んでたけどね。

わたしは480点でお兄ちゃんは、430点だって。

ちょっとミスしちゃったみたい。

校長先生や担任のスペル先生は驚いていたけど。

「カトウ公爵様、今ご子息やご令嬢に解いて頂いた問題は、昨年の中学校の卒業試験です。

おふたりの得点は、王立アカデミーに首席レベルで入学できるレベルですな。

奥様が、あのリザベート様ということを考えれば、あと8年後であれば、わたしどもも得心できますが、3歳の現状でこの成績は、全く想定外です。

また、ランス君の担任であるステファン先生からは、ランス君が宮廷魔導師長を上回る魔法を使用したと報告が入っています。

公爵様、わたしどもはおふたりのような優秀なお子様をお預かりできることは、この上無い喜びですが、今後このおふたりの教育をどのようにしていけば良いかご相談させて頂きたいと思っています。」

「校長先生、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

わたしとしては、子供らしく友達を作って、一緒に遊ぶ時間を用意してあげたいと思っています。

このふたりは、ますます勉強も魔法も伸びていくと思います。

どこかで、同級生と交われなくなる時が来るかも知れませんが、その時までは、普通の子供としていろいろと教えてあげて頂けませんか?」

校長先生は少し考えてからお父様に話し始めたの。

「公爵様、よく理解致しました。ご希望に添えるように、教育方針を考えて行きたいと思います。

おふたりがおられることで、この学校全体のレベルが上がるように考えて行きたいと思いますので、ご両親もご協力お願い致しましす。」

「校長先生、よろしくお願いします。」

こうして、わたし達は小学校を続けることができるようになったのでした。



<<スペル先生視点>>
イリヤちゃんすごい。

あの試験を450点採って卒業した子が、今年の王立アカデミー首席入学なのよ。

すごいなんてもんじゃ無いわね。

もちろんお兄さんのランス君も十分すご過ぎるんですけど。


さて、校長先生とステファン先生と3人で相談中です。

あの2人、勉強や魔力もすごいんだけど、精神的にも既に大人なのよね。

特にランス君なんか、入学式前に貴族の子弟の大半を友達にしたみたいで、クラスの中心的存在になっているみたい。

イリヤちゃんは、ランス君と比べるとかなり大人しいのだけど、引っ込み思案というよりは自重している感じ?

クラスの男の子達を上手く操って、クラスの雰囲気を上手く作ってくれているみたい。

イリヤちゃんがランス君をサポートしたら、2人は歴史に名を残すような為政者になるんじゃ無いかしらね。

ちょっと話しはそれたけど、3人で相談した結果、2人には学級委員として、クラスをまとめてもらうことにしました。

あと、高等学校みたいに研究会を作って、そこで自由な研究をして貰おうということになりました。

上級生や教師も混じって、皆んなでレベルを上げていければと思います。

上級生の中にも何人か逸材がいるから伸ばしてあげたいし。

研究会は、ランス君とイリヤちゃんの希望を確認したところ、ランス君が都市開発で、イリヤちゃんが薬学ってことになったの。

イリヤちゃんは、純粋に薬学を発展させて、少しでも病気で苦しむ人を助けてあげたいと考えているみたい。

すごく良い子だよ。

ランス君は、単純に家を建てたり橋を作ったりするのが好きなのね。

でも、建築技術が高まればもっと生活水準は高くなるだろうから、目の付け所は良いと思うわ。

研究会の顧問は、わたしとステファン先生がなることになったけど、テーマが大き過ぎてわたし達だけじゃ無理かな。

そう思っていたある日、沢山の研究者が学校にやって来た。

研究会に参加させて欲しいって。

わたしでも名前を聞いたことのある有名な学者様達よ。

校長先生が、王城に研究会設置の報告に行った際に聞きつけたらしいの。

集まった研究者の大半は、イリヤちゃんのご両親が行った、農村改革や行政改革に携わっていたみたいです。

ご両親への恩返しと、新しい発見を求めての参加となりました。

学校としては、こんな高名な学者様に支援して頂けるのだから有り難いんだけど、こんな調子でランス君やイリヤちゃんが普通の子供としての学校生活を送れるかどうか心配です。
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