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第6章 ランスとイリヤ
2 【天才児との遭遇】
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<<パターソン視点>>
面接から1週間後、わたしはカトウ公爵家に住み込みでお世話になるため、ここカトウ公爵家に引越して来た。
引越しって言っても鞄2つくらいしか荷物は無かったので、手軽だ。
もちろんこれだけじゃ無く、本や研究資料、論文なんかもたくさんあるが、カトウ公爵様自らがわたしの部屋を訪れて、収納魔道具っていうものに全て詰め込んで持って行ってしまった。
なんだあの収納魔道具ってのは!
あんなにあったいろんなモノが一瞬で小さなポーチの中に消えていったのだ。
わたしの研究者としての血が騒ぐ。
絶対、公爵様の弟子にしてもらおうと心に誓った。
とりあえず、最低限必要な下着や服を鞄に詰め込み、他に残ったものは処分を頼んで、住み慣れた部屋を後にする。
公爵家に着くとあの門番がいた。
「今日からお世話になります。よろしくお願いします。」
「そうですか、お互い頑張りましょう。」
門番のリンクさんと軽く挨拶を交わし、お屋敷の中に入っていく。
使用人入り口に行くとクリスさんが来てくれた。
「パターソンさん、本日からですね。
よろしくお願いしますね。」
「ありがとうございます。精一杯頑張ります。」
「では、とりあえず部屋に案内します。
荷物だけ置いて、旦那様や奥様にご挨拶に参りましょう。」
クリスさんに案内されてわたしに割り当てられた部屋に入ると、公爵様の収納魔道具に入っていた大量の荷物が、既に分類されて床に置いてあった。
わたしは鞄を置くと、クリスさんに付いてリビングへと向かった。
リビングには、マサル様とリザベート様、それと2人に抱かれた2人の子供がいる。
子供と言うか、まだ赤ちゃんと呼んでもおかしくない頃だが。
「旦那様、パターソン様をお連れしました。」
「カトウ公爵、奥様、本日よりお世話になります、パターソン・ヘッドでございます。
よろしくお願い致します。」
「主のマサルです。こちらは妻のリザベートです。
この2人は、ランスとイリヤです。」
「パターソン様、はじめまして。リザベートです。
よろしくお願いします。」
「長男のランスです。魔法騎士を目指しています。
ご指導よろしくお願いします。」
「長女のイリヤです。わたしは、魔法と薬学を究めたいと思っています。
よろしくお願いします。」
えっ、リザベート様の後に何か聞こえたぞ。
ランスとイリヤって、……
まさかこの子達が、あんなにしっかり話せる訳があるまい。
幻聴か?
「パターソン先生、言い忘れたんですが、わたしもお兄ちゃんも魔道具を作りたいのでいろいろ教えてくださいね。」
声がしたので、イリヤちゃんの方を見ると、リザベート様の膝の上で微笑んで、ウインクをしていた。
「あのぉ、公爵様。
家庭教師をするのは、もしかしてこのおふたりですか?」
「そうですよ。あれっ、説明してませんでしたっけ。
すいません。
この2人で間違い無いです。
まだ1歳半なんですが、一応小学校に入れるくらいまでは学力はあると思います。」
1歳半!!
小学校入学時くらいの学力!!
さっきの言葉使いを考えると、そんなもんとっくに超えている気がするけど。
天才だ。人知を超えた天才がいる。
「公爵様、わたしが家庭教師を務めさせて頂いてもよろしいのでしょうかのでしょうか?
このような天才児、わたしには恐れ多い気がしますが。」
「先生には、普通に接して頂きたいのです。
わたしやリザベートが教育すると、非常識な人間になってしまう恐れがあるから、大人になるまでは、絶対止めるように、といろんなところから、指摘が入っていまして。
なんとかよろしくお願い致します。パターソン先生。」
マサル様の話しに、わたしは素直に納得する。
この天才児達に、神掛かった魔法の使い手のマサル様が指導したら、驚異の学力を持つリザベート様が英才教育したら、普通の大人になるイメージがつかない。
「わ、わかりました。かならずや普通の大人に育つよう指導させて頂きます。」
あれっ、なんか凄く失礼なことを言っている気がするが。
周りを見渡すと、4人の顔に安堵の微笑みが見えるので、良しとしよう。
その後、お茶を頂きながら教育方針や時間割を決めた。
子供達も一緒になって決めている光景は側から見ると、とてもシュールな光景だっただろう。
そんなことを考えながら、明日から始まる新しい生活に、少し不安になるのであった。
面接から1週間後、わたしはカトウ公爵家に住み込みでお世話になるため、ここカトウ公爵家に引越して来た。
引越しって言っても鞄2つくらいしか荷物は無かったので、手軽だ。
もちろんこれだけじゃ無く、本や研究資料、論文なんかもたくさんあるが、カトウ公爵様自らがわたしの部屋を訪れて、収納魔道具っていうものに全て詰め込んで持って行ってしまった。
なんだあの収納魔道具ってのは!
あんなにあったいろんなモノが一瞬で小さなポーチの中に消えていったのだ。
わたしの研究者としての血が騒ぐ。
絶対、公爵様の弟子にしてもらおうと心に誓った。
とりあえず、最低限必要な下着や服を鞄に詰め込み、他に残ったものは処分を頼んで、住み慣れた部屋を後にする。
公爵家に着くとあの門番がいた。
「今日からお世話になります。よろしくお願いします。」
「そうですか、お互い頑張りましょう。」
門番のリンクさんと軽く挨拶を交わし、お屋敷の中に入っていく。
使用人入り口に行くとクリスさんが来てくれた。
「パターソンさん、本日からですね。
よろしくお願いしますね。」
「ありがとうございます。精一杯頑張ります。」
「では、とりあえず部屋に案内します。
荷物だけ置いて、旦那様や奥様にご挨拶に参りましょう。」
クリスさんに案内されてわたしに割り当てられた部屋に入ると、公爵様の収納魔道具に入っていた大量の荷物が、既に分類されて床に置いてあった。
わたしは鞄を置くと、クリスさんに付いてリビングへと向かった。
リビングには、マサル様とリザベート様、それと2人に抱かれた2人の子供がいる。
子供と言うか、まだ赤ちゃんと呼んでもおかしくない頃だが。
「旦那様、パターソン様をお連れしました。」
「カトウ公爵、奥様、本日よりお世話になります、パターソン・ヘッドでございます。
よろしくお願い致します。」
「主のマサルです。こちらは妻のリザベートです。
この2人は、ランスとイリヤです。」
「パターソン様、はじめまして。リザベートです。
よろしくお願いします。」
「長男のランスです。魔法騎士を目指しています。
ご指導よろしくお願いします。」
「長女のイリヤです。わたしは、魔法と薬学を究めたいと思っています。
よろしくお願いします。」
えっ、リザベート様の後に何か聞こえたぞ。
ランスとイリヤって、……
まさかこの子達が、あんなにしっかり話せる訳があるまい。
幻聴か?
「パターソン先生、言い忘れたんですが、わたしもお兄ちゃんも魔道具を作りたいのでいろいろ教えてくださいね。」
声がしたので、イリヤちゃんの方を見ると、リザベート様の膝の上で微笑んで、ウインクをしていた。
「あのぉ、公爵様。
家庭教師をするのは、もしかしてこのおふたりですか?」
「そうですよ。あれっ、説明してませんでしたっけ。
すいません。
この2人で間違い無いです。
まだ1歳半なんですが、一応小学校に入れるくらいまでは学力はあると思います。」
1歳半!!
小学校入学時くらいの学力!!
さっきの言葉使いを考えると、そんなもんとっくに超えている気がするけど。
天才だ。人知を超えた天才がいる。
「公爵様、わたしが家庭教師を務めさせて頂いてもよろしいのでしょうかのでしょうか?
このような天才児、わたしには恐れ多い気がしますが。」
「先生には、普通に接して頂きたいのです。
わたしやリザベートが教育すると、非常識な人間になってしまう恐れがあるから、大人になるまでは、絶対止めるように、といろんなところから、指摘が入っていまして。
なんとかよろしくお願い致します。パターソン先生。」
マサル様の話しに、わたしは素直に納得する。
この天才児達に、神掛かった魔法の使い手のマサル様が指導したら、驚異の学力を持つリザベート様が英才教育したら、普通の大人になるイメージがつかない。
「わ、わかりました。かならずや普通の大人に育つよう指導させて頂きます。」
あれっ、なんか凄く失礼なことを言っている気がするが。
周りを見渡すと、4人の顔に安堵の微笑みが見えるので、良しとしよう。
その後、お茶を頂きながら教育方針や時間割を決めた。
子供達も一緒になって決めている光景は側から見ると、とてもシュールな光景だっただろう。
そんなことを考えながら、明日から始まる新しい生活に、少し不安になるのであった。
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