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第5章 新しい生活の始まり

14 【新婚旅行2】

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<<メアリ視点>>
旦那様と奥様って本当に凄い方々なんですね。

昨夜、モーグル王城で開かれた王様主催の晩餐会は、モーグル王国の貴族から大商人、官僚や地方の領主、代官、村長まで、あらゆる方々が集まっておられ、お城の中では入りきらない程です。

わたし達は、旦那様と奥様のメイドとして、参加させて頂きました。

急遽兵士の訓練所を整えての開催となったようですが、地位の高い方々がこれだけの数集まられるとは、旦那様達の名声は凄いものだと、改めて感動しました。

高い名声を持つ人のところには、利権を求めて自然に人が集まるものです。

キンコー王国の公爵様ともなれば、このくらいは当たり前なのかも知れません。

しかし、実際に立食形式の晩餐会が始まって驚いたのは、参加者のほとんどが、旦那様や奥様の直接のお知り合いだったことなのです。

実は、中央広場から王城に向かう馬車の中で、ハッカ様から旦那様のこの国での功績を教えて頂きました。

貧しかったこの国の事情から始まり、国際連合加盟、この国に最初の物流センター建設、近隣諸国への道路整備、オアシスや駅の開発、長年開発を困難にしていた大型魔物の討伐等、旦那様がこの国を救って来た経緯が次々と語られます。

話しを聞いているだけで、この国の国民が旦那様を神格化している理由が分かります。

同様に、奥様がこの国に与えた影響についても教えて頂きました。

奥様も、講演会や現地での直接の指導等を通じて、大きな影響を与えておらるようです。

その中でおふたりに影響を受けた方々や実際に一緒に働いた方々が、この晩餐会に集まられているということです。

旦那様も奥様もすごく楽しそうです。

昔話に花が咲き、少し前の隕石騒動の話しになり、今回の結婚式と祝福の光の話しと、話しが尽きることは無さそうです。



<<モーグル王国ハミル村村長ヤナセ視点>>
今わたしは王城の晩餐会に出席させて頂いております。

本来であれば村長のわたしなど、このような高貴な席に出ることなど叶うはずもありませんが、今回は国王様のご配慮で、全ての街や村の代表が参加させて頂いているのです。

マサル様やリザベート様にはいくら感謝しても感謝しきれない程のものを頂きました。


マサル様が救って下さるまでは、この辺りの村は、中央から取り残された砂漠の村として、少しの希望も残っていませんでした。

僅かに湧く泉だけを頼りに生きていますが、その泉もいつ枯れるか知れない状況でした。

100年ほど前までは、この辺りも緑豊かなオアシスの地だったと記録にありますが、当時主産業であった鍛治生産で多くの木を伐採したことが影響したのでしょうか、緑はだんだん姿を消し、それに伴い気温が上昇、オアシスの砂漠化は急速に進んだのでした。

少ない水といくらかの農場から採れる食糧で食い繫いでおりましたが、その生活を手放すのも時間の問題となっていた時、マサル様が現れられました。

マサル様が村を訪れ、魔法を使われると、枯れかけていた泉には水が溢れ、砂漠には緑が戻ってきました。

同時に王都からトカーイ帝国まで続く大きな街道が村の近くを通り、この街道を通る多くの商人や旅人のオアシスとして、村は生き返ったのです。

後に、王都騎士団の騎士団長様から謝罪がありました。
現在の街道がある辺り一帯にはワームの魔物がおり、王都から支援出来なかったとのことでした。
ちなみに、その魔物もマサル様が倒されたそうです。

その後、村を訪れられたリザベート様から村の経営や特産品開発等の助言も頂き、村はこれまでに無い活気に満ちております。

この度のご成婚、ハミル村村民を上げてお祝い申し上げます。



<<ナーカ教国シン教皇>>
「シン様、マサル殿がお着きになられたようです。」

「そうか。では、お迎えに行こうか。」

書類から顔を上げて、カイヤに応える。

レイの反乱からもう1年になるか。

あの時は、偶然居合わせたマサル殿のおかげで、上手く乗り切れただけでなく、人間との融和も実現することができた。

それにより、ナーカも他国との交易によって、国を豊かにしていく道筋がついたのだ。

我が神である魔王様のお導きに違いない。


カイヤと共に空中を駆けながら元ハーン帝国国境まで向かう。

当時そこにあった結界は既に無く、今はそこに駅と国定公園があり、賑わいを見せている。

駅の中にある貴賓室に向かうと、マサル殿の変わらぬ笑顔と聖女と呼ばれる奥方が見えた。

「シン教皇、カイヤ宰相、ご無沙汰してます。
いやぁ、ここの賑わいは凄いですね。
販売されている商品も、各国の物が並び、交易も上手くいっているようですね。」

「マサル殿、リザベート殿、久しぶりですね。
ご成婚及び公爵の叙爵、おめでとうございます。

交易の成功は、奥方の尽力のおかげです。
リザベート殿、そうですな。」

「シン教皇様、ありがとうございます。

わたしはこれまでの経験から幾つかの案を出させて頂いただけです。

教皇様やカイヤ宰相、その他関わられたこの国の皆様の最終的なご判断が、結果として残ったと思っております。」

「相変わらず、謙虚ですなぁ。

おふたりのその姿勢が、大陸中に対してこれだけの成果をもたらしておるのですな。

とにかくおふたり共、おめでとう。」

カイヤの歯にモノを着せぬ言い方だが、的を得ている。

あの時、マサル殿が現れなかったら、リザベート殿の的確なアドバイスがなかったら、間違いなく今の状況は無かっただろう。

さあ、今回彼等は国賓であり、かけがえのない友人なのだから、精一杯もてなさせて頂こう。
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