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第4章 リザベートの結婚狂想曲
14 【婚活エレジー2】
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<<ジン視点>>
嫁探しを始めた俺は、知り合いに片っ端から声を掛けた。
元々武骨で、言葉少ない俺に知り合いは多くはなかったが、それでも真面目に勤めてきたのでそれなりの信用はあるつもりだった。
しかし、領主の息子を私刑にしたことや、浮気をして彼女を捨てたとのうわさもあり、縁談の話しは一向に来ない。
騎士団長も探してくれているが、見つからないそうだ。
そんなある日、ふと婚活パーティーのうわさを聞いた。
ハローマ王国王都に最近できた写真館で写真というものを購入すれば、結婚相手が高確率で見つかるといううわさだ。
早速写真館に行ってみた。精緻な肖像画を描いてくれるようだ。
壁にサンプルが飾ってあるが、とても手で書いたとは思えない。
鏡を見ているような肖像画がそこにある。これが写真というものか。
金貨10枚は、俺の給与では厳しいところだが、無理をして写真を撮ってもらった。
これで、婚活パーティーに参加できる。
最初のパーティーで、いろいろな女性と話しをした。
この中に俺の結婚相手が見つかるかも知れない。そう喜んでいたのもつかの間、1人の女性が俺を見て震え出した。
後で知ったのだが、彼女は俺が我を忘れて領主の息子達を私刑しているところを見ていたのだそうだ。
そのあまりにも凄惨な状況を思い出して震えていたということだ。
それは、会場内に自然に伝播し、次第に俺に近づいてくる女性はいなくなってしまった。
その様子を見ていたのであろう、1人の女性が俺に近づいてきた。
「わたしはこのパーティーの主催者のヤリテと申します。少しお話しをよろしいでしょうか?」
俺は頷くと彼女の後に付いていった。
「少しお困りのようでしたので声を掛けさせていただきました。
ご事情をお聞かせ願えますか?」
俺は、隠密任務以外の部分を正直に話した。
「事情はよく分かりました。私どもも協力させて頂きますので、根気強く頑張りましょう。
是非婚姻まで漕ぎつけて彼女を安心させてあげましょうね。」
ヤリテは、優しくそう言うと次回以降のパーティーのスケジュールを教えてくれた。
そして最初から数えて6回目のパーティーが始まった。
「はぁ、やはりうわさが広まってしまっているな。話もさせてもらえない。もうだめか。」
独り言をつぶやく俺に、ヤリテさんが1人の女性を伴ってやってきた。
「ジンさん、今回もご参加ありがとうございます。
今日はこの方をご紹介したいと思いお連れしました。マヤさんとおっしゃいます。
マヤさんは、キンコー王国の元騎士様ですのよ。
是非、お話しでもいかがですか?」
「マヤです。シン殿、お相手願えますでしょうか。」
「シンです。こちらこそよろしくお願いします。
ところでヤリテさん、マヤ殿にわたしの話しはしていただいておりますか?」
「はい、させて頂きました。
マヤさんはそんなことは、気にならないと。
それとマヤさんからもジンさんにお話しがあるそうです。」
「ジン殿、実はわたしの背中には大きな抉り傷があるのだ。
2年程前に、ビッグベアの討伐時にヘマをした。
もし、気になるのなら断ってくれてもいいぞ。」
「そんなもん、騎士としてあって当たり前だろ。
俺にも無数にある。
俺は、一切気にしない。」
「良かったわ。
それじゃあ、わたしは行きますね。
おふたりでよくお互いをアピールして下さいね。」
ヤリテさんは俺達に押し付けること無く、自然に話しが出来るようにお膳立てして、どこかに消えた。
<<マヤ視点>>
だから、こんな所に来たくなかったのだ。
親から説得され、写真などという珍妙なものを撮らされた。
わたしはキンコー王国で騎士をしていた。
女性は、男性に比べて年齢に伴う体力の衰えが激しいため、キンコー王国では、25歳を過ぎると強制的に、騎士から外れる。
わたしも、ビッグベアに背中をやられて入院治療してから、体力的に難しさを感じていたので、24歳で退役することにした。
さて、退役後であるがやはり結婚をするべきだと思う。
同僚の男性の中から選ぶというのが王道だが、自分より弱い奴と結婚したいと思うか?
そうすると相手はかなり絞られる。
しかも、そのほとんどは既婚者だ。
男の身になってみると、自分より強い女を貰おうと思うか?
まして、背中に大きな傷がある女を。
そうなのだ、いくら望もうと相手がいなければ、どうしようもない。
結局親に泣きつかれて、婚活パーティーなるものにやって来た。
しかし、成人してから騎士一筋のわたしに、女らしさや会話力を求めるのは、無理がある。
しかも集まっている男達は皆弱い。
パーティーも終わりに近づいたので帰ろうと歩き出したところで、主催者を名乗る女性に声を掛けられた。
「如何でしたでしょうか?」
「希望する相手も見つからなければ、相手をしてくれる男もいなかった。
残念だが、今夜は引き揚げるとしようと思う。」
「もし宜しければ、相手に求める希望を教えて頂けませんでしょうか?」
わたしは、その女性 ヤリテに自分より強いこと、背中の傷を厭わないことの2点を伝えた。
「キンコー王国の方ではないですが、それでも大丈夫ですか?」
「全く問題ない。」
「よかった。実は1名マヤさんのお眼鏡に適いそうな方がおられます。
是非お会い頂きたいのですが、来週ハローマ王国で、このパーティーがあります。
そちらにお越し願えますでしょうか?」
こうしてわたしは、ジン殿と出会った。
彼の不幸な境遇には、同じ騎士として身につまされる。
何より、彼は強い。そして、わたしの背中の傷など全く気にしない。
わたしにとっては理想的な男だ。
2ヶ月後、ハローマ王国に行く決意をしたわたしを両親は優しく見送ってくれた。
こうしてヤリテさんの尽力により、わたし達は2人で写った写真をカトウ運輸から貰うことになったのだった。
余談だが、最近新婚旅行がブームになっている。
前までは、長距離の移動など危険が多くて、一般人にはなかなか行けるものではなかった。
それが街道が整備され、各地に駅ができたことで、ずいぶん安全に旅ができるようになった。
カトウ運輸が、トラック馬車を改造した長距離乗合トラック馬車を主要都市間で定期運行し始めたことで、より早く安全で快適に旅ができるようになり、昨今の婚姻増加と相まって、新婚旅行がブームになったそうだ。
わたし達は今、長距離乗合トラック馬車の中にいる。
もちろん新婚旅行旅行だ。
嫁探しを始めた俺は、知り合いに片っ端から声を掛けた。
元々武骨で、言葉少ない俺に知り合いは多くはなかったが、それでも真面目に勤めてきたのでそれなりの信用はあるつもりだった。
しかし、領主の息子を私刑にしたことや、浮気をして彼女を捨てたとのうわさもあり、縁談の話しは一向に来ない。
騎士団長も探してくれているが、見つからないそうだ。
そんなある日、ふと婚活パーティーのうわさを聞いた。
ハローマ王国王都に最近できた写真館で写真というものを購入すれば、結婚相手が高確率で見つかるといううわさだ。
早速写真館に行ってみた。精緻な肖像画を描いてくれるようだ。
壁にサンプルが飾ってあるが、とても手で書いたとは思えない。
鏡を見ているような肖像画がそこにある。これが写真というものか。
金貨10枚は、俺の給与では厳しいところだが、無理をして写真を撮ってもらった。
これで、婚活パーティーに参加できる。
最初のパーティーで、いろいろな女性と話しをした。
この中に俺の結婚相手が見つかるかも知れない。そう喜んでいたのもつかの間、1人の女性が俺を見て震え出した。
後で知ったのだが、彼女は俺が我を忘れて領主の息子達を私刑しているところを見ていたのだそうだ。
そのあまりにも凄惨な状況を思い出して震えていたということだ。
それは、会場内に自然に伝播し、次第に俺に近づいてくる女性はいなくなってしまった。
その様子を見ていたのであろう、1人の女性が俺に近づいてきた。
「わたしはこのパーティーの主催者のヤリテと申します。少しお話しをよろしいでしょうか?」
俺は頷くと彼女の後に付いていった。
「少しお困りのようでしたので声を掛けさせていただきました。
ご事情をお聞かせ願えますか?」
俺は、隠密任務以外の部分を正直に話した。
「事情はよく分かりました。私どもも協力させて頂きますので、根気強く頑張りましょう。
是非婚姻まで漕ぎつけて彼女を安心させてあげましょうね。」
ヤリテは、優しくそう言うと次回以降のパーティーのスケジュールを教えてくれた。
そして最初から数えて6回目のパーティーが始まった。
「はぁ、やはりうわさが広まってしまっているな。話もさせてもらえない。もうだめか。」
独り言をつぶやく俺に、ヤリテさんが1人の女性を伴ってやってきた。
「ジンさん、今回もご参加ありがとうございます。
今日はこの方をご紹介したいと思いお連れしました。マヤさんとおっしゃいます。
マヤさんは、キンコー王国の元騎士様ですのよ。
是非、お話しでもいかがですか?」
「マヤです。シン殿、お相手願えますでしょうか。」
「シンです。こちらこそよろしくお願いします。
ところでヤリテさん、マヤ殿にわたしの話しはしていただいておりますか?」
「はい、させて頂きました。
マヤさんはそんなことは、気にならないと。
それとマヤさんからもジンさんにお話しがあるそうです。」
「ジン殿、実はわたしの背中には大きな抉り傷があるのだ。
2年程前に、ビッグベアの討伐時にヘマをした。
もし、気になるのなら断ってくれてもいいぞ。」
「そんなもん、騎士としてあって当たり前だろ。
俺にも無数にある。
俺は、一切気にしない。」
「良かったわ。
それじゃあ、わたしは行きますね。
おふたりでよくお互いをアピールして下さいね。」
ヤリテさんは俺達に押し付けること無く、自然に話しが出来るようにお膳立てして、どこかに消えた。
<<マヤ視点>>
だから、こんな所に来たくなかったのだ。
親から説得され、写真などという珍妙なものを撮らされた。
わたしはキンコー王国で騎士をしていた。
女性は、男性に比べて年齢に伴う体力の衰えが激しいため、キンコー王国では、25歳を過ぎると強制的に、騎士から外れる。
わたしも、ビッグベアに背中をやられて入院治療してから、体力的に難しさを感じていたので、24歳で退役することにした。
さて、退役後であるがやはり結婚をするべきだと思う。
同僚の男性の中から選ぶというのが王道だが、自分より弱い奴と結婚したいと思うか?
そうすると相手はかなり絞られる。
しかも、そのほとんどは既婚者だ。
男の身になってみると、自分より強い女を貰おうと思うか?
まして、背中に大きな傷がある女を。
そうなのだ、いくら望もうと相手がいなければ、どうしようもない。
結局親に泣きつかれて、婚活パーティーなるものにやって来た。
しかし、成人してから騎士一筋のわたしに、女らしさや会話力を求めるのは、無理がある。
しかも集まっている男達は皆弱い。
パーティーも終わりに近づいたので帰ろうと歩き出したところで、主催者を名乗る女性に声を掛けられた。
「如何でしたでしょうか?」
「希望する相手も見つからなければ、相手をしてくれる男もいなかった。
残念だが、今夜は引き揚げるとしようと思う。」
「もし宜しければ、相手に求める希望を教えて頂けませんでしょうか?」
わたしは、その女性 ヤリテに自分より強いこと、背中の傷を厭わないことの2点を伝えた。
「キンコー王国の方ではないですが、それでも大丈夫ですか?」
「全く問題ない。」
「よかった。実は1名マヤさんのお眼鏡に適いそうな方がおられます。
是非お会い頂きたいのですが、来週ハローマ王国で、このパーティーがあります。
そちらにお越し願えますでしょうか?」
こうしてわたしは、ジン殿と出会った。
彼の不幸な境遇には、同じ騎士として身につまされる。
何より、彼は強い。そして、わたしの背中の傷など全く気にしない。
わたしにとっては理想的な男だ。
2ヶ月後、ハローマ王国に行く決意をしたわたしを両親は優しく見送ってくれた。
こうしてヤリテさんの尽力により、わたし達は2人で写った写真をカトウ運輸から貰うことになったのだった。
余談だが、最近新婚旅行がブームになっている。
前までは、長距離の移動など危険が多くて、一般人にはなかなか行けるものではなかった。
それが街道が整備され、各地に駅ができたことで、ずいぶん安全に旅ができるようになった。
カトウ運輸が、トラック馬車を改造した長距離乗合トラック馬車を主要都市間で定期運行し始めたことで、より早く安全で快適に旅ができるようになり、昨今の婚姻増加と相まって、新婚旅行がブームになったそうだ。
わたし達は今、長距離乗合トラック馬車の中にいる。
もちろん新婚旅行旅行だ。
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