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第4章 リザベートの結婚狂想曲

4 【レイン皇帝への謁見2】

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<<リザベート視点>>
王城から派遣された馬車に揺られながら、お城に向かいます。

向かいの席にはエルン公爵様、隣の席には、サリナさんが座っています。

後ろの馬車には、エルン家の執事やメイドが乗っています。

馬車の前後左右には騎士が1人づつ馬車を囲うように配置されています。

「リズさん、そのポーチ可愛いですね。」

「ふふっ、これはねマサルさんが作ってくれたポーチ型収納魔道具なのよ。

いくらでも収納できて、中は時間の概念がないから、あったかい物は、いつまでもあったかいのよ。
しかも、ドレスなんかを入れておくと、勝手に浄化されシワ伸ばしもされるのよ。

便利でしょ。」

「なんだかよくわからないけど、ドレスがたくさん収納できて、食べ物が腐らないのは便利ですね。

マサルさんって、あのハーバラの奇跡の英雄マサル様ですか?」

「そうよ、たぶんそのマサルさん。」

マサルさん、自分が英雄って呼ばれているのを知ったらどう思うかしらね。

「リザベート殿、今ちらっと話しを聞いていたのだが、そのポーチは、時空収納袋かね。」

エルン公爵が、食い気味に入ってきました。

「時空収納袋というと、創造神マリス様が、この世界を作る為の材料を入れておられたという、伝説の魔道具ですね。

これは似た機能ですが、違うと思います。

マサルさんのお手製ですから。

元々は、カトウ運輸で使おうと考えて作った物ですが、番頭さんに使用することを大反対されたので、使わなかったんです。

それはそうですよね。
こんな物が大量にあったら物流センターもいらないですし、大量の雇用も無くなってしまいますから。」

「それをリザベート殿が頂いたと。」

「そうです。試作の1つしか作ってなかったので。
もらう時、浄化とシワ伸ばしの機能を付与してもらいました。」

「このポーチのことをネクター王はご存知なのですか?」

「もちろんご存知です。
呆れておられました。

マサルさんが、作り方を特許登録しようとしたら、全力で止められていましたが。

危険物指定で、作るのは控えるように念を押されていました。

これは、わたしの視察に便利なので、無理を言って使わせてもらっています。

わたし以外には、ただのポーチとしてしか使えないように加工もしてもらっています。」

「そうでしょうな。こんな物がいくつもあったら、秘密裡に武器も運び放題で、一瞬で国が滅んでしまいますよ。

ネクター王が聡明な方で良かった。

ところで、リザベート殿は、いつもおひとりで行動されておられるのですか?」

「いつもは大体2人ですね。
1人は滅多に無いです。」

「魔物や山賊に襲われるとか危険だと思うのですが?」

「一応、父母から護身術は習っていました。

これでも結構強いんですよ。

後、いろんな護身用の魔道具も持っています。

マサルさん、結構過保護ですから。

例えば、簡易結界発生魔道具とか、全方位攻撃用魔道具とか。

ネクター王は、その魔道具一式だけで、1国の軍隊に匹敵するって顔を引攣らせておられました。」

「そっ、その装備は使ったことがあるのですか?」

「2年程前に一度だけ、山賊で確か…殲滅なんとかってのが、襲ってきた時ですね。」

「もしかして、殲滅ナイツ団ですか?
大陸一の戦力を誇り、壊滅に動いた国軍を逆に壊滅させたという。
確かに2年前から見なくなりましたが、まさか。」

「それだと思います。
突然襲撃してきたので、結界を張ってから、全方位攻撃してしまいました。

1分くらいで、全滅したのでとりあえずこのポーチに一切を入れて持ち帰り、ネクター王にお願いして処分してもらいました。

とんでもない火力でした。
おいそれとは使えないですね。」

「それもマサル様が。……」

「そうです。さすがにこれは特許登録とは言わなかったですね。」

「……………ネクター王も大変だ。」

こんなたわいもない話しをしていると、やがて馬車は王城の門をくぐって城内に入って行きます。

お城の入城口でサイツ様が待っていて下さいました。

「リザベート様、お待ち致しておりました。

ご案内致しますので、こちらにお願いします。
サリナ様もご一緒にどうぞ。」

「サイツ様、ありがとうございます。
本日も、よろしくお願い致します。」



わたしとサリナさんは貴賓室で、ドレスを着せて頂いています。

レイン皇帝からプレゼントされたドレスは、シンプルな作りですが、淡いブルーの最高級の生地を使い、華美ではなく落ち着いた仕上がりになっています。

サリナさんのドレスは、明るいピンク色で、年齢相応の可愛い仕上がりになっています。

「リズさん、どうかしら?」
「サリナさん、とっても可愛くて、似合っているわ。」

「ふふふ、ありがとう。
リズさんは、大人の女性って感じで、とってもきれい。」

「ありがとうね。嬉しいわ。」

トントン

「謁見の準備が整いました。
今からご案内致します。
ご準備は大丈夫でしょうか。」

「「大丈夫です。」」

「では、わたしの後についてお越し下さい。」

長い廊下を歩くと、一際豪華な扉の前に着きました。

案内してくれた女性が扉を軽く叩くと、両開きの扉が左右に開きました。

開いた扉の傍で控えていたサイツ様のエスコートで、レイン皇帝の正面まで移動しました。

腰を落として、礼を執ります。

サリナさんもすぐ横にいて腰を落としています。

「リザベート・ナーラ殿、この度は帝国カレッジでの講演の件、誠に嬉しく思う。

聴講したサイツの言によると、非常に有意義で貴重な内容であったと聞き及ぶ。

わたしも是非お話しを伺いたかったが、所用があり残念であった。
この後晩餐会を用意しておるので、その時にでも話しを聞かせて欲しい。

さて、エルン公爵家令嬢サリナ。
この度の講演はそなたの発案であり、開催までの準備にもかなりの尽力を尽くしたそうだの。

大儀であった。

それで学生達の様子はどうであった?」

「はい、皆真剣に聴講し、中には感動の涙を流すものも見受けられました。

また、庶民の改革への考え方やどう自発的に説得、誘導して行くか等、庶民目線から見た方法論を展開されるところなど、今まであまり考えたことがありませんでしたので、とても新鮮で貴重な時間を過ごすことができました。

講演後の教室でも、農村改革の話しで持ちきりで、皆の興奮が続いておりました。」

「そうか、これで農村改革、行政改革に積極的に携わる若者が増えてくれれば、この講演を実現した甲斐があったというものだ。」

「この興奮が改革の発展に結びつくよう、生徒会長として様々な企画と啓蒙活動を進めて行きます。」

「頼んだぞ、サリナ。

さて、リザベート殿。
今回の講演会は、我が国の更なる発展の大きな一助になるものと期待するものである。

サリナは、そなたに傾倒しており、そなた同様にこの帝国で官僚として改革に尽力したいと常々申しておる。
今後も引き続きサリナに助力してやって欲しい。」

「承知致しました。
サリナ様とは今後も大切な友人として、末長くお付き合いさせて頂きたいと思っています。

また、キンコー王国としましても、友好国のトカーイ帝国と共に発展していくことを望んでいると、ネクター王からも伺っております。

わたしと致しましても、両国の発展のために少しでも尽力できますよう、今後も尽くしてまいる所存です。」

「うむ、そなたの今後の活躍期待しておるぞ。」


こうして、レイン皇帝陛下との謁見は無事終わったのでありました。
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