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第3章 国際連合は活躍する
27【ハーン帝国に愛の鞭を】
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<<マサル視点>>
「魔族がソラン教団の背景にいるかも知れませんね。」
俺の発した言葉に皆が一斉にこちらを向く。
マリス様からもらったタブレットでソラン共和国を襲った魔族を調べると、400年間ソランの地に居たことまではわかったのだが、その後の足取りがわからない。
また、ナーカ教国の現教皇について調べても、その正体はわからなかった。
つまり、タブレットでわからないイコール マリス様の創造物以外 イコール 魔族 となったわけである。
魔族は寿命が長い。今ナーカ教国を牛耳っている者達が、ソランを襲った者達と同じとも考えられる。
「マサル殿、ナーカ教国の教皇が魔族だとは、どういった推論からでしょうか?」
ハッカ外務大臣の質問に答える。
もちろんタブレットのことは話せない。
「魔族は古い文献の中に登場しますが、今現在、存在しているかどうかは不明です。
ただ、キンコー王国ヨーシノの森での瘴気増大やハローマ王国で発生した元ホンノー人の事件等、魔族絡みの事案も発生しています。
魔族の寿命が、数100年と長い事実を考慮すると、ソランを襲った魔族が生きていて、100年前にナーカ教国を乗っ取ったと考えても不思議は無いと思います。」
俺の説明に一同は、静かにうなづく。
「とりあえず、ハーン帝国に対する基本方針を決めましょう。
ナーカ教国については、不明な点が多いので、もう少し調査をしてから考えた方が良いですね。」
「マサル殿の言うとおりだ。
面倒だが、はっきりしているハーン帝国から片付けた方が良いだろう。」
アーノルド様の発言により、この後、ハーン帝国に対する国際連合の対応について話し合った。
<<アーノルド視点>>
マサル殿から、ナーカ教国における魔族の存在に関する可能性を示唆された。
魔族については、古い古文書にその存在を見つけられる程度の知識しかないが、強力な魔法と頑強な肉体を持っていると言われる。
果たして本当に今でもいるのかは疑問であるが、ヨーシノの森での出来事は、儂もネクター王から聞いている。
マリス様の使徒であるならば間違いは無いだろう。
とにかくナーカ教国については不明な点も多いから慎重に動くべきか。
ここは、マサル殿の言うとおり、ハーン帝国から処理しておこう。
あいつらは本当にどうしようもないからな。
「アーノルド様、どういう手段で進めていきましょうか?」
スポック事務局長が尋ねてくる。
もちろん、ハーン帝国のことだ。
「そうだな、単純に資料を見せて問い詰めたところで、嘘八百でのらりくらりとシラを切り通すでだろうな。
ああいう連中は無視をするに限るが、モーグル王国にそれだけの嫌がらせをしているとなれば、そうも行くまい。
いっそのこと、国際連合加盟国全てにネゴをして、大陸の大部分からハブらせてやろうかの。
あの国は他国からの輸入や施しが無いと、半年も持つまいて。」
儂は軽い気持ちで言ったのだが、その場にいた皆は凍りついたように固まっていた。
<<スポック視点>>
現在、国際連合本部では加盟国による定例国際会議が開かれています。
モーグル王国から宰相と外務大臣が来訪されてから1ヶ月が経ちました。
あの後、わたし達はそれぞれの場所に赴き、今日の会議の議題の1つである、ハーン帝国に対する制裁措置についての調査と、加盟各国に対するネゴに奔走しておりました。
わたしは、国際連合事務局長として国際連合への加盟案内を名目にハーン帝国の王城に入り、ハーン王や外務大臣の隣国に対する考え方やその奥にあるであろう背景を調査します。
また、アニスさん達数名には、旅行者として入ってもらい、市民のモーグル王国に対する感情や教育内容等について調査してもらいました。
3日間の滞在と調査期間にしては少し短かったのですが、それなりの調査結果は出せたと思います。
「スポックさん、国民に対する調査結果ですが、ひと言で言うと、唯我独尊ですね。
被害者意識が強く僻み根性が染み付いています。
生活にも困窮しており、他人を慮る気持ちは薄く、自分だけが良ければそれで良いという感覚が根付いているようです。
飲食店に入っても、他店の悪口を堂々と広言して、自店の方が優れているとアピールしてきます。
どこの店に入ってもですよ。
信じられないです。
また周辺国に対する情報も操作されているみたいです。
『隣国ではこんな不祥事があり、我が国はこんなにも優れている』とか、『隣国が新たに開発した装置は、実は我が国が開発していた技術をパクったものだ。』とか、とにかく、自国がどれだけ優れているか、隣国がどれだけ悪どく我々を貶めているかを常に情報として流しています。
国民性もそうですが、あんな環境にいたら周辺諸国に悪い思いしか抱かないでしょうね。」
アニスさんの報告に、街の調査を行ったメンバーが激しく同意しています。
「王城での会談結果も似たようなものでしたよ。
連合に加盟する条件に無茶苦茶な要求をしてきたりと、かなり上目線でしたね。
また、『周辺諸国はこんなに理不尽だから何とかしろ』と散々悪口を聞かされましたよ。」
わたしの言葉に皆も首を縦に振り相槌を打ちます。
どうやらモーグル王国の主張は、正しいことが証明できました。
ーーーーーーーーーーーーーー
定例会議の議題でモーグル王国が抱える問題になった時、わたしは自分達の調査結果を報告しました。
そうすると、ハーン帝国の周辺諸国のほとんどが、自国もモーグル王国程ではないにしろ、ハーン王国には手を焼いていると発言し、満場一致でハーン帝国への制裁が決まりました。
ハーン王国が輸入を依存している、キンコー王国、トカーイ帝国、ハローマ王国が輸出制限をかけることになりました。
3国からみたらハーン帝国への輸出などたかが知れており、何の影響もありませんが、ハーン帝国から見れば、主要産業の製造業が成り立たなくなり、庶民の暮らしにも影響が出るでしょう。
これで困って、泣きついてくれれば、国際連合として色々と手を打てるのですが。
まぁ2ヶ月もしたらなんらかのアクションを起こしてくると思いますので、それまで待ってみましょう。
1ヶ月半が過ぎた頃、ハーン帝国の驚くべきニュースが流れてきました。
ハーン帝国がナーカ教国に吸収され、消滅してしまったのです。
「魔族がソラン教団の背景にいるかも知れませんね。」
俺の発した言葉に皆が一斉にこちらを向く。
マリス様からもらったタブレットでソラン共和国を襲った魔族を調べると、400年間ソランの地に居たことまではわかったのだが、その後の足取りがわからない。
また、ナーカ教国の現教皇について調べても、その正体はわからなかった。
つまり、タブレットでわからないイコール マリス様の創造物以外 イコール 魔族 となったわけである。
魔族は寿命が長い。今ナーカ教国を牛耳っている者達が、ソランを襲った者達と同じとも考えられる。
「マサル殿、ナーカ教国の教皇が魔族だとは、どういった推論からでしょうか?」
ハッカ外務大臣の質問に答える。
もちろんタブレットのことは話せない。
「魔族は古い文献の中に登場しますが、今現在、存在しているかどうかは不明です。
ただ、キンコー王国ヨーシノの森での瘴気増大やハローマ王国で発生した元ホンノー人の事件等、魔族絡みの事案も発生しています。
魔族の寿命が、数100年と長い事実を考慮すると、ソランを襲った魔族が生きていて、100年前にナーカ教国を乗っ取ったと考えても不思議は無いと思います。」
俺の説明に一同は、静かにうなづく。
「とりあえず、ハーン帝国に対する基本方針を決めましょう。
ナーカ教国については、不明な点が多いので、もう少し調査をしてから考えた方が良いですね。」
「マサル殿の言うとおりだ。
面倒だが、はっきりしているハーン帝国から片付けた方が良いだろう。」
アーノルド様の発言により、この後、ハーン帝国に対する国際連合の対応について話し合った。
<<アーノルド視点>>
マサル殿から、ナーカ教国における魔族の存在に関する可能性を示唆された。
魔族については、古い古文書にその存在を見つけられる程度の知識しかないが、強力な魔法と頑強な肉体を持っていると言われる。
果たして本当に今でもいるのかは疑問であるが、ヨーシノの森での出来事は、儂もネクター王から聞いている。
マリス様の使徒であるならば間違いは無いだろう。
とにかくナーカ教国については不明な点も多いから慎重に動くべきか。
ここは、マサル殿の言うとおり、ハーン帝国から処理しておこう。
あいつらは本当にどうしようもないからな。
「アーノルド様、どういう手段で進めていきましょうか?」
スポック事務局長が尋ねてくる。
もちろん、ハーン帝国のことだ。
「そうだな、単純に資料を見せて問い詰めたところで、嘘八百でのらりくらりとシラを切り通すでだろうな。
ああいう連中は無視をするに限るが、モーグル王国にそれだけの嫌がらせをしているとなれば、そうも行くまい。
いっそのこと、国際連合加盟国全てにネゴをして、大陸の大部分からハブらせてやろうかの。
あの国は他国からの輸入や施しが無いと、半年も持つまいて。」
儂は軽い気持ちで言ったのだが、その場にいた皆は凍りついたように固まっていた。
<<スポック視点>>
現在、国際連合本部では加盟国による定例国際会議が開かれています。
モーグル王国から宰相と外務大臣が来訪されてから1ヶ月が経ちました。
あの後、わたし達はそれぞれの場所に赴き、今日の会議の議題の1つである、ハーン帝国に対する制裁措置についての調査と、加盟各国に対するネゴに奔走しておりました。
わたしは、国際連合事務局長として国際連合への加盟案内を名目にハーン帝国の王城に入り、ハーン王や外務大臣の隣国に対する考え方やその奥にあるであろう背景を調査します。
また、アニスさん達数名には、旅行者として入ってもらい、市民のモーグル王国に対する感情や教育内容等について調査してもらいました。
3日間の滞在と調査期間にしては少し短かったのですが、それなりの調査結果は出せたと思います。
「スポックさん、国民に対する調査結果ですが、ひと言で言うと、唯我独尊ですね。
被害者意識が強く僻み根性が染み付いています。
生活にも困窮しており、他人を慮る気持ちは薄く、自分だけが良ければそれで良いという感覚が根付いているようです。
飲食店に入っても、他店の悪口を堂々と広言して、自店の方が優れているとアピールしてきます。
どこの店に入ってもですよ。
信じられないです。
また周辺国に対する情報も操作されているみたいです。
『隣国ではこんな不祥事があり、我が国はこんなにも優れている』とか、『隣国が新たに開発した装置は、実は我が国が開発していた技術をパクったものだ。』とか、とにかく、自国がどれだけ優れているか、隣国がどれだけ悪どく我々を貶めているかを常に情報として流しています。
国民性もそうですが、あんな環境にいたら周辺諸国に悪い思いしか抱かないでしょうね。」
アニスさんの報告に、街の調査を行ったメンバーが激しく同意しています。
「王城での会談結果も似たようなものでしたよ。
連合に加盟する条件に無茶苦茶な要求をしてきたりと、かなり上目線でしたね。
また、『周辺諸国はこんなに理不尽だから何とかしろ』と散々悪口を聞かされましたよ。」
わたしの言葉に皆も首を縦に振り相槌を打ちます。
どうやらモーグル王国の主張は、正しいことが証明できました。
ーーーーーーーーーーーーーー
定例会議の議題でモーグル王国が抱える問題になった時、わたしは自分達の調査結果を報告しました。
そうすると、ハーン帝国の周辺諸国のほとんどが、自国もモーグル王国程ではないにしろ、ハーン王国には手を焼いていると発言し、満場一致でハーン帝国への制裁が決まりました。
ハーン王国が輸入を依存している、キンコー王国、トカーイ帝国、ハローマ王国が輸出制限をかけることになりました。
3国からみたらハーン帝国への輸出などたかが知れており、何の影響もありませんが、ハーン帝国から見れば、主要産業の製造業が成り立たなくなり、庶民の暮らしにも影響が出るでしょう。
これで困って、泣きついてくれれば、国際連合として色々と手を打てるのですが。
まぁ2ヶ月もしたらなんらかのアクションを起こしてくると思いますので、それまで待ってみましょう。
1ヶ月半が過ぎた頃、ハーン帝国の驚くべきニュースが流れてきました。
ハーン帝国がナーカ教国に吸収され、消滅してしまったのです。
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