62 / 382
第3章 国際連合は活躍する
19【国際連合は世界に広がる1】
しおりを挟む
<<国際連合事務局アニス視点>>
わたしの名前は、アニスと申します。
ワーカ領でアーノルド様付きのメイド長をしておりました。
アーノルド様が、国際裁判所?の所長に就任されることになったので、わたしもナーラ領までついて来ました。
当初は、アーノルド様の身の回りのお世話をさせて頂く予定でしたが、今は国際連合の事務局で各国からの要望や苦情、相談等の受付をしております。
何故そんなことになったって?
確かに、こちらに来てすぐは、アーノルド様のメイドをやっていたんです…………
ここはナーラ城内にある貴賓室です。
昨日の夜、アーノルド様とわたしは、ワーカ領の兵士を護衛として、ナーラ城に到着しました。
ナーラ城では、ネクター王、クラーク・ナーラ大公爵、ヘンリー・ナーラ公爵、ユーリスタ様等の面々がアーノルド様の歓迎会をご用意してくださってました。
皆様の国際連合、国際裁判所に対する期待の表れだと思います。
ワーカ領を出てからこちらに着くまでの時間に、アーノルド様から、国際連合と国際裁判所の話しを伺いました。
わたしも一応アカデミーを卒業しておりますので、アーノルド様の仰っていることは概ね理解出来ているつもりです。しかし、理解出来るからこそ、設立と運営の難しさもわかるのです。
もし本当にこの案が実現し、キチンと運営されれば、みんなが平和で安定した暮らしを送れるようになるでしょう。
わたしも、こんな歴史的な事業の設立に立ち会えるのは、とても嬉しいです。
でも誰がこんなことを考えついたのでしょう?
もしかしてユーリスタ様かも。
ユーリスタ様がアカデミー時代に書かれた行政改革に纏わるレポートは、今もわたしのバイブルです。
歓談が1時間程過ぎた頃でしょうか、1人の青年が部屋に入ってきました。
彼はその場にいる重鎮方に挨拶をしながら、頭を掻いています。
「すいません、遅くなりました。
ハーバラ村で収穫祭が長引いてしまいまして。
もうしわけありませんでした。」
「問題無い。ハーバラ村の今年の収穫量は、昨年の3倍近いと報告にあったぞ。
その立役者のマサル殿が、収穫祭にいなければ盛り上がるまい。」
そう言いながらネクター王は、その青年を笑顔で迎えた。
「そう言って頂けると助かります。
アーノルド様、先日はありがとうございました。」
「マサル殿、老骨ながらもうひと働きさせてもらうことになったのお。
よろしくな。」
「こちらこそよろしくお願いします。
アーノルド様の実績とお人柄があれば、間違いなく成功すると思います。」
「まぁまぁ、マサル様、とりあえず席にお着きください。」
「ユーリスタ様ありがとうございます。
それでは、失礼しまして。」
あの青年が、マサル様ですか。
先日アーノルド様の部屋の窓から飛び出して、空を飛んで戻ってきたと皆が噂していたお方ですね。
わたしは、屋敷の中にいたので直接は見ていないのですが、ものすごい勢いでで飛んで行ったのを誰が見たなどとメイド部屋で大騒ぎになっていましたね。
まぁ娯楽に乏しい土地柄ですからね、ちょっとしたことでも、大騒ぎにしちゃうんですよね。
「アニス、あなたもこちらにいらっしゃいな。」
憧れのユーリスタ様にお声をかけて頂けた。
?が熱くなってきました。
「あっいえ、わ、わたしなど。」
急に緊張して吃ってしまいました。
「そうだ、アニスもこちらに来たらいい。
ネクター王、ワーカ領のハスキー侯爵家の2女のアニスです。
我が家で、長らくメイド長を務めてくれています才女ですな。」
「そうか、ハスキー侯爵家の令嬢か。
今夜は、身内だけのフランクな席だ。
遠慮なくこちらに来るが良いぞ。」
ネクター王に、そう言われると行かないのは、不敬罪になってしまいます。
ユーリスタ様は、マサル様の隣に席を作って下さいました。
「アニス様ですね。マサルです、よろしくお願いします。」
席に着いたのはいいのですが、場違い感がハンパありません。
それに気づいたマサル様が先に声を掛けて下さいました。
「マサル様、ハスキー侯爵家のアニスです。
よ、よろしくお願い致します。」
後が続かない。どうしよう。
「あっ、そういえば、先日ワーカ城にお越し頂いたと聞いております。
わたしどものメイドが、マサル様が空を飛ぶのを見たと大騒ぎ致しておりました。」
「いやあ、やっぱり見られてましたよね。
気付かれて大騒ぎにならないように、素早く移動したつもりだったんですが。」
ええっ、肯定されてしまった。
どうしよう!
「マサル様、空を飛べるのですか?」
「マサル殿、それは本当か?」
ユーリスタ様、ヘンリー様の好奇心旺盛な夫婦を焚き付けてしまいました。
「最近覚えたのですよ。さっきもハーバラ村から飛んできました。」
「この前、ワーカ城で目の前で飛ぶところを見ましたのじゃ。
ハヤブサみたいな速さでしたわ。」
アーノルド様が自慢気に話し出すと、その場はもう止まらない。
「儂も見たいものだ。マサル殿、飛べるか?」
「大丈夫ですよ。窓際までお越し頂けますか?」
マサル様の後をついて、皆で移動する。
「じゃ近くを一周してきます。
このランプをお借りしますね。」
マサル様は、そう言うと4階の窓から飛び出してしまいました。
マサル様の持つランプの灯が暗い夜に映えます。
その灯は、窓から見える範囲を上下左右に数度動いた後、ものすごい勢いで遠ざかっていきました。
小さくなっていく灯が見えなくなり、しばらくして別の方向から灯が近づいてきて、窓からマサル様が入ってきました。
皆大興奮です。手を叩きながらマサル様を迎えます。
「さすがは、女神マリス様の使徒だ。マサル殿、今更儂らは驚かんぞ。」
ネクター王の言葉に、マサル様は胸の前に手を当てて頭を下げて戯けます。
また、皆爆笑です。
メイド達の噂は、本当だったのですね。
これからは、あの子達の噂にも耳を傾けましょう。
今度会うときは、今日の話しをお土産にして。
わたしの名前は、アニスと申します。
ワーカ領でアーノルド様付きのメイド長をしておりました。
アーノルド様が、国際裁判所?の所長に就任されることになったので、わたしもナーラ領までついて来ました。
当初は、アーノルド様の身の回りのお世話をさせて頂く予定でしたが、今は国際連合の事務局で各国からの要望や苦情、相談等の受付をしております。
何故そんなことになったって?
確かに、こちらに来てすぐは、アーノルド様のメイドをやっていたんです…………
ここはナーラ城内にある貴賓室です。
昨日の夜、アーノルド様とわたしは、ワーカ領の兵士を護衛として、ナーラ城に到着しました。
ナーラ城では、ネクター王、クラーク・ナーラ大公爵、ヘンリー・ナーラ公爵、ユーリスタ様等の面々がアーノルド様の歓迎会をご用意してくださってました。
皆様の国際連合、国際裁判所に対する期待の表れだと思います。
ワーカ領を出てからこちらに着くまでの時間に、アーノルド様から、国際連合と国際裁判所の話しを伺いました。
わたしも一応アカデミーを卒業しておりますので、アーノルド様の仰っていることは概ね理解出来ているつもりです。しかし、理解出来るからこそ、設立と運営の難しさもわかるのです。
もし本当にこの案が実現し、キチンと運営されれば、みんなが平和で安定した暮らしを送れるようになるでしょう。
わたしも、こんな歴史的な事業の設立に立ち会えるのは、とても嬉しいです。
でも誰がこんなことを考えついたのでしょう?
もしかしてユーリスタ様かも。
ユーリスタ様がアカデミー時代に書かれた行政改革に纏わるレポートは、今もわたしのバイブルです。
歓談が1時間程過ぎた頃でしょうか、1人の青年が部屋に入ってきました。
彼はその場にいる重鎮方に挨拶をしながら、頭を掻いています。
「すいません、遅くなりました。
ハーバラ村で収穫祭が長引いてしまいまして。
もうしわけありませんでした。」
「問題無い。ハーバラ村の今年の収穫量は、昨年の3倍近いと報告にあったぞ。
その立役者のマサル殿が、収穫祭にいなければ盛り上がるまい。」
そう言いながらネクター王は、その青年を笑顔で迎えた。
「そう言って頂けると助かります。
アーノルド様、先日はありがとうございました。」
「マサル殿、老骨ながらもうひと働きさせてもらうことになったのお。
よろしくな。」
「こちらこそよろしくお願いします。
アーノルド様の実績とお人柄があれば、間違いなく成功すると思います。」
「まぁまぁ、マサル様、とりあえず席にお着きください。」
「ユーリスタ様ありがとうございます。
それでは、失礼しまして。」
あの青年が、マサル様ですか。
先日アーノルド様の部屋の窓から飛び出して、空を飛んで戻ってきたと皆が噂していたお方ですね。
わたしは、屋敷の中にいたので直接は見ていないのですが、ものすごい勢いでで飛んで行ったのを誰が見たなどとメイド部屋で大騒ぎになっていましたね。
まぁ娯楽に乏しい土地柄ですからね、ちょっとしたことでも、大騒ぎにしちゃうんですよね。
「アニス、あなたもこちらにいらっしゃいな。」
憧れのユーリスタ様にお声をかけて頂けた。
?が熱くなってきました。
「あっいえ、わ、わたしなど。」
急に緊張して吃ってしまいました。
「そうだ、アニスもこちらに来たらいい。
ネクター王、ワーカ領のハスキー侯爵家の2女のアニスです。
我が家で、長らくメイド長を務めてくれています才女ですな。」
「そうか、ハスキー侯爵家の令嬢か。
今夜は、身内だけのフランクな席だ。
遠慮なくこちらに来るが良いぞ。」
ネクター王に、そう言われると行かないのは、不敬罪になってしまいます。
ユーリスタ様は、マサル様の隣に席を作って下さいました。
「アニス様ですね。マサルです、よろしくお願いします。」
席に着いたのはいいのですが、場違い感がハンパありません。
それに気づいたマサル様が先に声を掛けて下さいました。
「マサル様、ハスキー侯爵家のアニスです。
よ、よろしくお願い致します。」
後が続かない。どうしよう。
「あっ、そういえば、先日ワーカ城にお越し頂いたと聞いております。
わたしどものメイドが、マサル様が空を飛ぶのを見たと大騒ぎ致しておりました。」
「いやあ、やっぱり見られてましたよね。
気付かれて大騒ぎにならないように、素早く移動したつもりだったんですが。」
ええっ、肯定されてしまった。
どうしよう!
「マサル様、空を飛べるのですか?」
「マサル殿、それは本当か?」
ユーリスタ様、ヘンリー様の好奇心旺盛な夫婦を焚き付けてしまいました。
「最近覚えたのですよ。さっきもハーバラ村から飛んできました。」
「この前、ワーカ城で目の前で飛ぶところを見ましたのじゃ。
ハヤブサみたいな速さでしたわ。」
アーノルド様が自慢気に話し出すと、その場はもう止まらない。
「儂も見たいものだ。マサル殿、飛べるか?」
「大丈夫ですよ。窓際までお越し頂けますか?」
マサル様の後をついて、皆で移動する。
「じゃ近くを一周してきます。
このランプをお借りしますね。」
マサル様は、そう言うと4階の窓から飛び出してしまいました。
マサル様の持つランプの灯が暗い夜に映えます。
その灯は、窓から見える範囲を上下左右に数度動いた後、ものすごい勢いで遠ざかっていきました。
小さくなっていく灯が見えなくなり、しばらくして別の方向から灯が近づいてきて、窓からマサル様が入ってきました。
皆大興奮です。手を叩きながらマサル様を迎えます。
「さすがは、女神マリス様の使徒だ。マサル殿、今更儂らは驚かんぞ。」
ネクター王の言葉に、マサル様は胸の前に手を当てて頭を下げて戯けます。
また、皆爆笑です。
メイド達の噂は、本当だったのですね。
これからは、あの子達の噂にも耳を傾けましょう。
今度会うときは、今日の話しをお土産にして。
21
お気に入りに追加
333
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる