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第3章 国際連合は活躍する

19【国際連合は世界に広がる1】

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<<国際連合事務局アニス視点>>
わたしの名前は、アニスと申します。
ワーカ領でアーノルド様付きのメイド長をしておりました。

アーノルド様が、国際裁判所?の所長に就任されることになったので、わたしもナーラ領までついて来ました。

当初は、アーノルド様の身の回りのお世話をさせて頂く予定でしたが、今は国際連合の事務局で各国からの要望や苦情、相談等の受付をしております。

何故そんなことになったって?

確かに、こちらに来てすぐは、アーノルド様のメイドをやっていたんです…………


ここはナーラ城内にある貴賓室です。
昨日の夜、アーノルド様とわたしは、ワーカ領の兵士を護衛として、ナーラ城に到着しました。
ナーラ城では、ネクター王、クラーク・ナーラ大公爵、ヘンリー・ナーラ公爵、ユーリスタ様等の面々がアーノルド様の歓迎会をご用意してくださってました。
皆様の国際連合、国際裁判所に対する期待の表れだと思います。

ワーカ領を出てからこちらに着くまでの時間に、アーノルド様から、国際連合と国際裁判所の話しを伺いました。

わたしも一応アカデミーを卒業しておりますので、アーノルド様の仰っていることは概ね理解出来ているつもりです。しかし、理解出来るからこそ、設立と運営の難しさもわかるのです。

もし本当にこの案が実現し、キチンと運営されれば、みんなが平和で安定した暮らしを送れるようになるでしょう。

わたしも、こんな歴史的な事業の設立に立ち会えるのは、とても嬉しいです。

でも誰がこんなことを考えついたのでしょう?
もしかしてユーリスタ様かも。
ユーリスタ様がアカデミー時代に書かれた行政改革に纏わるレポートは、今もわたしのバイブルです。

歓談が1時間程過ぎた頃でしょうか、1人の青年が部屋に入ってきました。

彼はその場にいる重鎮方に挨拶をしながら、頭を掻いています。

「すいません、遅くなりました。
ハーバラ村で収穫祭が長引いてしまいまして。
もうしわけありませんでした。」

「問題無い。ハーバラ村の今年の収穫量は、昨年の3倍近いと報告にあったぞ。
その立役者のマサル殿が、収穫祭にいなければ盛り上がるまい。」

そう言いながらネクター王は、その青年を笑顔で迎えた。

「そう言って頂けると助かります。

アーノルド様、先日はありがとうございました。」

「マサル殿、老骨ながらもうひと働きさせてもらうことになったのお。
よろしくな。」

「こちらこそよろしくお願いします。
アーノルド様の実績とお人柄があれば、間違いなく成功すると思います。」

「まぁまぁ、マサル様、とりあえず席にお着きください。」

「ユーリスタ様ありがとうございます。
それでは、失礼しまして。」

あの青年が、マサル様ですか。
先日アーノルド様の部屋の窓から飛び出して、空を飛んで戻ってきたと皆が噂していたお方ですね。
わたしは、屋敷の中にいたので直接は見ていないのですが、ものすごい勢いでで飛んで行ったのを誰が見たなどとメイド部屋で大騒ぎになっていましたね。

まぁ娯楽に乏しい土地柄ですからね、ちょっとしたことでも、大騒ぎにしちゃうんですよね。

「アニス、あなたもこちらにいらっしゃいな。」

憧れのユーリスタ様にお声をかけて頂けた。
?が熱くなってきました。

「あっいえ、わ、わたしなど。」

急に緊張して吃ってしまいました。

「そうだ、アニスもこちらに来たらいい。
ネクター王、ワーカ領のハスキー侯爵家の2女のアニスです。
我が家で、長らくメイド長を務めてくれています才女ですな。」

「そうか、ハスキー侯爵家の令嬢か。
今夜は、身内だけのフランクな席だ。
遠慮なくこちらに来るが良いぞ。」

ネクター王に、そう言われると行かないのは、不敬罪になってしまいます。

ユーリスタ様は、マサル様の隣に席を作って下さいました。

「アニス様ですね。マサルです、よろしくお願いします。」

席に着いたのはいいのですが、場違い感がハンパありません。

それに気づいたマサル様が先に声を掛けて下さいました。

「マサル様、ハスキー侯爵家のアニスです。
よ、よろしくお願い致します。」

後が続かない。どうしよう。
「あっ、そういえば、先日ワーカ城にお越し頂いたと聞いております。

わたしどものメイドが、マサル様が空を飛ぶのを見たと大騒ぎ致しておりました。」

「いやあ、やっぱり見られてましたよね。
気付かれて大騒ぎにならないように、素早く移動したつもりだったんですが。」

ええっ、肯定されてしまった。
どうしよう!

「マサル様、空を飛べるのですか?」
「マサル殿、それは本当か?」
ユーリスタ様、ヘンリー様の好奇心旺盛な夫婦を焚き付けてしまいました。

「最近覚えたのですよ。さっきもハーバラ村から飛んできました。」

「この前、ワーカ城で目の前で飛ぶところを見ましたのじゃ。
ハヤブサみたいな速さでしたわ。」

アーノルド様が自慢気に話し出すと、その場はもう止まらない。

「儂も見たいものだ。マサル殿、飛べるか?」

「大丈夫ですよ。窓際までお越し頂けますか?」

マサル様の後をついて、皆で移動する。

「じゃ近くを一周してきます。
このランプをお借りしますね。」

マサル様は、そう言うと4階の窓から飛び出してしまいました。

マサル様の持つランプの灯が暗い夜に映えます。
その灯は、窓から見える範囲を上下左右に数度動いた後、ものすごい勢いで遠ざかっていきました。
小さくなっていく灯が見えなくなり、しばらくして別の方向から灯が近づいてきて、窓からマサル様が入ってきました。

皆大興奮です。手を叩きながらマサル様を迎えます。

「さすがは、女神マリス様の使徒だ。マサル殿、今更儂らは驚かんぞ。」

ネクター王の言葉に、マサル様は胸の前に手を当てて頭を下げて戯けます。

また、皆爆笑です。

メイド達の噂は、本当だったのですね。
これからは、あの子達の噂にも耳を傾けましょう。
今度会うときは、今日の話しをお土産にして。
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