上 下
33 / 382
第2章  敵はホンノー人にあり

8【閑話 穏やかな日常】

しおりを挟む
<<リザベート視点>>
今日は、久しぶりの外出日。
ゼミや生徒会活動に忙しくて、なかなか外出するほどの時間が取れなかったんだよね。

マサルさんにも連絡して待ち合わせしてるんだ。
なにを着て行こうかしら。
もう18歳になるんだから、下着もキチンとしとかないと。
マサルさんと大人の関係になる可能性もあるかも。 キャ

待ち合わせ場所は、学校の門の前。
待ち合わせ場所のメッカである、忠竜 ドラ公前で待ち合わせしようと思ってたんだけど、人が多くて危ないからって、マサルさんが、学校まで来てくれることになったの。

あっ、まずい。待ち合わせの時間になっちゃう。

慌てて着替えて、門の前にでた。
マサルさんは、もう待っていてくれた。
「マサルさん、遅れてごめんなさい。」

「リズ、久しぶり、元気にしてたか?」

「元気、元気。マサルさん、会いたかった!」
マサルさんにとびついて、腕を組んじゃった。

「おい、みんな見てるよ。なんか、男子生徒の視線が痛いんだけど。」

「気のせいだよ。それより早く行きましょう。今日は、1日大丈夫?」

「大丈夫。ユーリスタ様に、休みをもらってきたから。」

「お義母様(ユーリスタ様)ともしばらくお会いしてないわ。
産学官連携会議では会うけど、お互い立場上ねぇ。」

「買い物が済んだらユーリスタ様のところに、行くかい?」

「今日は、マサルさんとゆっくり楽しみたいから、また今度ね。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
産学官連携会議とは、お義母様の発案により発足した会議。
国や領の役人(官)とアカデミーの学生(学)、農家・商家・工場等(産)のそれぞれの代表が集まって実施される。
主に、改革案の賛否を採ったり、進め方を決めたり、新しい改革案を創出したりと、最近ではこの会議が改革の方向性を決める、重要な役割を担っている。

お義母様の考えでは、改革は続けていくことが大事だから、「皆で考えて、皆で実施する」を根付かせることが大事だって。

わたしとしては、学生が参加することで、改革の精神が、世間に浸透することが良いと思う。
マサルさんの受け売りだけどねっ。

あっそうそう、「産」には最近マサルさんの提案で出来た職業「運送業」も入っているわ。

今まで、物を運ぶのは、商人が移動のついでにやっていたんだけど、マサルさんは、改革で物の移動が急増することを予測して、「物を運ぶこと」を専門とする新しい職業「運送業」を作ったの。
ネクター王やお義母様と調整しながら、王国中に、物流ネットワーク?っていうのを作っちゃった。
そして、この世界初となる、「カトウ運輸」ができたの。
もちろん会頭は、マサルさんよ。

商人達は、始め冷ややかな目で見てたんだけど。

ところが、「カトウ運輸」が一躍注目を集めることが起きたの。

王都から北に険しい山脈を越えたところにあるタカツー領で大規模な冷害が発生して、食糧が足りなくなったの。
タカツー領は、領内での自給率が高かったから、食べる物が本当に無くなっちゃったの。
でも、自給率が高いから他領の商人があまり行って無くて物がすぐに大量に運べなかったわ。

その時、出来たばかりの「カトウ運輸」が物流ネットワークを活かして、各地からタカツー領に食糧を運んだの。

あっと言う間に食糧が運ばれて、タカツー領内での餓死者はゼロだったの。

この「カトウ運輸」の活躍により、物流ネットワークの重要性が広く知れ渡り、この職業のことを、「運輸」ってみんなが呼ぶようになったわ。

「カトウ運輸」は、これだけじゃないのよ。リタイヤした冒険者や主婦、老人の雇用も積極的に行った結果、王国内の失業率が大幅に下がったわ。
リタイヤした冒険者は、荷物の運送や個別の配達に。だって魔物と戦えるから運送に最適でしょ。
主婦や老人は、王国中に沢山ある物流センターで荷物の仕分けをしたり、伝票を書いたり。
文字や計算なんかも入ってから教えてくれるから安心。
みんな喜んで張り切って働いてくれているってマサルさんが喜んでいた。

それから1年経って、「カトウ運輸」は益々大きくなって、マサルさんは、本当なら大金持ちになってるはずなんだ。
だけど、相変わらず自分に無頓着だから、自分で自由になるお金の内、生活に必要分以外は、いろんなところでの慈善活動に使っているみたい。

本当に呆れちゃう。
まぁ、そんなマサルさんが大好きなんだけどね。

そうそう、産学官連携会議にはマサルさんも出席しているわ。
カトウ運輸の代表として。
本当は、お義母様の筆頭ブレーンだから、官側なんだけど、そちらは目立たないようにしてるから、産側で出てるの。

産側の本音が聞けるからって、お義母様は喜んでいるわ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

マサルさんと商店街を散策していると、みんなが声をかけてくれる。

それは、わたしにだったり、マサルさんにだったり。

わたしもアカデミーの活動でちょっとだけ有名になっちゃた。
もちろんマサルさんほどじゃないけどね。
マサルさんの始めた慈善活動は、なんの見返りも求めて無いから、急速に広まっていったの。
今では賛同する人達からの寄付金も多くなり、近々王立の慈善活動管理協会が発足するの。
これは、わたしのアイデア。
寄付してくれた人の善意を広く大陸中に広めたいじゃない。
また、王都以外でも適切に慈善活動をして欲しいからね。


商店街でウインドウショッピングを楽しんだり、ご飯を食べたりしていると、あっという間に時間が過ぎていく。

わたし達は、最後の目的地である教会に着いた。

わたしとマサルさんを引き合わせてくれたマリス様に、二人でお祈りするのがこのデートの決まり。

お祈りの後、マサルさんはアカデミーまで送ってくれた。

別れ際、マサルさんが何かに気を取られたスキにほっぺにチュッてしちゃった。
マサルさん、顔を真っ赤にしてぼおっとしてたから、「じゃあね。また。」って走って部屋に帰ったんだ。あー楽しかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

処理中です...