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ようこそ異世界へ

王様は俺を家来にしたいみたいです

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「そなたがヒロシ殿か。面を上げるがよい。」

国王陛下の声に、俺は頭を半分だけ上げる。これも事前に言われていたこと。

全部上げたら不敬罪になるらしい。

「遠慮せずとももっと顔を上げてもよいぞ。そなたは我が娘イリヤの命の恩人らしいからな。」

「ははー。」

俺は頭を上げて王様を見る。

年の頃は40歳手前位で立派な髭を生やしたナイスガイってところだ。

横の王妃様はもう少し若くて30過ぎくらいかな。すごく綺麗だ。

王女様は、うん、前に見た。あの時の姫様だ。

「ヒロシ殿、この度は王女を救ってくれてありがとう。

イリヤしかそちの姿を捉えることが出来なかったようだが、A級冒険者でも手を焼くシルバーウルフの群れをいとも容易く仕留めたと聞いておる。

ただのう、わしはイリヤの言うことを全面的に信用しておるのじゃが、いかんせん誰にも見えておらぬこと、疑っておる者達も多い。

そこでじゃ、魔物を入れた檻を用意した。

その魔物相手に、その時の状況を再現してもらえぬだろうか。」

き、来たよ。俺の能力を見て家来になれってパターン。

断ったら騎士団に囲まれて、逃げたら追いかけられるやつ。

まだこの国にいたいし、ミーアもいるし。

どうしたものか。

「承知しました。が、少し条件を付けさせて頂いても構いませんか?」

「おおっ、やってくれるのか!

それで条件とは?」

「1つは、あの現場に居られた姫様と騎士様に同席頂くこと。

あの時と同じがどうかを判別頂くためです。

2つ目は、人数を絞って頂くこと。

陛下とそちらに居られる方、それとそちらの陛下の護衛の方でお願いしたいです。

3つ目は、これからお見せすることを内密にお願いしたいこと。

4つ目は、もしわたしのことを評価して頂いたとしても、無理に家臣にしようと思わないことです。」

「1つ目は承知した。確認する者は必要であるからな。

3つ目も約束しよう。

4つ目は、....そうだなイリヤの恩人じゃ、そうしよう。

ただ教えてくれぬか。

2つ目なのだが、我と護衛を残すのはわかる。
だがこの大勢の中で、何故ロジー侯爵だけが残す対象なのだ?」

「先程陛下はわたしのことを疑っておられる方がおいでとおっしゃっていました。

そしてこの中で最も強い疑念の感情を持っておられたのが、そちらのロジー侯爵様だったからです。」

「ハハハハー。ロジー、これは驚いたのう。
鉄面皮と言われるお前が感情を読まれるとは。

しまったなぁ。先程約束してしまったが、我は戦闘能力よりもこちらの能力の方が欲しいぞ。

いや、2つ目も問題無い。

皆の者、下がるのじゃ。さあ見せておくれ。」

ロジー侯爵様の少し悔しそうな顔を見ながら、俺は自分を叱っていた。

無自覚の能力公開が、後の騒動に繋がるのもラノベの定番だったっけ。

広い謁見の間に俺を含めて6人が残った。

陛下の護衛の視線が怖い。

「じゃあ始めますね。一瞬ですからよく見ておいて下さい。」

俺は気配遮断の結界を身体に纏わせ、気配を完全に消す。

「残った5人は狐につままれたように俺を探して辺りをキョロキョロ。

「さあ行きますよ。」

ロジー侯爵のすぐ隣に移動して耳元で声を上げる。

一同驚いているところで高速演算発動。

瞬く間に魔物の檻に移動して、ファイヤーニードルを放つ。

ドーン!

檻の中で魔物が倒れた。

次の瞬間、俺は元の位置に移動し、気配遮断を解除した。

周りの反応を確認。

今のやつはこの前やったから大丈夫だろう。

「如何でしたか?」

俺はあの時の騎士と姫様に向かって聞いた。

「まさしくあの時と同じです。
今回は1匹だけでしたが、あの時はこれが立て続けに10匹近く…

やはりあなたがわたし達を救って下さったのですね。

本当にありがとうございました。」



姫様が答えてくれた。



「いやいや、事前に話しを聞いていたし、途中で声を出してくれたから、なんとなくわかったが、もし声が無かったら全く気が付かなかっただろう。

ロジーの顔を見てみろ。

何が起こったのか全くわかっていないようだな。

パターソン、そちはどうじゃ?」

「はっ、魔物を倒す一瞬だけ、殺気を感じることは出来ましたが、それ以外は全く感じられませんでした。」

陛下の護衛さんも驚きと共に俺により強い殺気を放ってきた。

そりゃそうだよね、気配も見せずにあの大きさの魔物を簡単に倒すような奴が守るべき人のすぐ近くにいるんだから。


「約束通り、このことは内密にお願いしますね。」

「わかった。こんなことが他に漏れでもしたら、外交問題に発展するやも知れぬ。

なにせ、音もなく気配もなく、あっという間に近寄って瞬殺できるのじゃからな。

各国の首脳陣が恐れおののくであろうて。のお、ロジー、パターソン。」

ロジー公爵様は悔しさを最早隠そうとさえされていないし、パターソンさんは剣を握る手にますます力が籠っているよ。

陛下、お願いだから煽るようなことは言わないでくださいね。





>>>>>>>>>>>>>

これは驚いた。

あの鉄面皮と呼ばれ、外交手腕ではその天性のポーカーフェイスで百戦錬磨のロジー侯爵の感情を読み取るとは。

実の親でさえ読み取れず、過去には廃嫡騒ぎまであったというのに。

しかも、あの大人数の中から何の迷いもなく的確に選びおった。

あの能力と高い攻撃力があれば、ロジーの外交手腕と合わせて、この国の更なる発展は約束されたようなものだ。

もちろん、あの巨大な魔物が眠るように倒れたことも大いに驚いたが。

イリヤやランスの確認結果をみても、イリヤを救ってくれたのは間違いなく彼だろう。

どうしても家臣に欲しいが、あれ程の手練れ、容易にはいくまい。

今日のところは諦めよう。

しかしなんとかしたいものだ。

しかし、今日は狼狽するロジーの顔を2回も見れて、我は満足じゃ。




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