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付き合うのに好き以外の理由が必要ですか?
美人な同級生が隣に座ってるとソワソワするよね
しおりを挟む橘をあぃす@デレP:はぁ、今日も可愛かった
な2の3ち@電書化:のろけ乙
ハムすこ改@デレP:爆発爆発さっさと爆発
柊人さんとのビデオ通話を終えた後、すぐにSNSアプリを確認するという習慣が付いてしまった。いや、ビデオ通話をしながら常にスマホ画面はSNSアプリを開きっぱなしなんだけど。
カメラには映らない、かつスマホを操作する様子が映らないようにカメラを置いている位置と同じ並びにスマホを立て掛けているので、多分柊人さんは気付いていないと思う。
机の上に置いていたスマホを手に持ち、部屋の電気を消し、眼鏡を外してベッドに横になる。寝る前のパソコン・スマホは脳を興奮させる為に寝付きにくくなるらしいけど、私はそんな事はないので大丈夫。
私が知らない(と柊人さんが思っている)場所で楽しそうに会話をする柊人さんを見ていると、とっても幸せな気持ちになって、心地良い眠気に襲われる。
でもまだ寝たくないんだよね~。矛盾。
ハムすこ改@デレP:そろそろ2週間でしょ? キッスキッス!
そーだそーだ、そろそろいいんじゃないですかね~? いいね、ぽちっと。あ、またいいねしちゃった。ついでだから他の投稿にもいいねして回ろう。
さすがに私も分かる。このいいねは不自然だ。誰が押したのか分からない、いいね。何がいいねなのかもよく分からないだろうと思う。
あの3人はどう思っているのだろうか、そう気になる。今の所、不気味がっている訳ではなさそう。
こういうのって、言い出すタイミングが難しいんだよね……。でも、SNSでの柊人さんを見て、好きになった事。これを先に言わないとダメだと思ってる。だから、謎のいいね事件に関しては、その後に告白する事になる、と思われる。
ハムすこ改@デレP:最近あの子が活発な気がするー
橘をあぃす@デレP:それな
あ、やっぱり指摘されちゃった。でもホント、そろそろ言い出さないと。
「好きなのに理由って必要ですか? と私は言ったけれど、SNSでの嘘偽りないあなたの姿を見て、好きになったんです」
って。
はぁ、柊人さんはそんな私を受け入れてくれるかな、うん大丈夫。絶対大丈夫。だって柊人さん私の事好きだって、大好きだって言ってくれたもん。
ふふっ、大丈夫、だいじょうぶ、だいじょおぶ……。
翌朝、いつもの時間に起きて、いつもの時間に電車に乗り、柊人さんとささやかな時間を過ごし、学校へと向かった。去り際のバイバイはするものの、スマホさえあれば24時間会話が出来る。あ、授業中にはスマホは触らない。ほとんど。
その分休み時間中にスマホをいじり倒すので、クラスの友達が最近付き合いが悪いよね~って茶化して来るけど、私がいかに柊人さんの事が好きかを語ってあげると、みんな顔を真っ赤にさせたりびっくりして腰を抜かしたりと面白いほど反応をして見せてくれた。
それ以来、私がスマホを触り出すとそっとしておいてくれるようになった。
昼休み、基本的には柊人さんの大学の昼休みとは重なる時間が少ないので、この時間に電話で話す事はない。ちょこちょことメッセージを送ったり、送られたり。
柊人さんは平気で講義中でもスマホを触ったりノートパソコンやタブレットを操作したりするんだけど、これって大学生だったらこんなものなのかな? 別に私自身優等生ぶるつもりはないんだけど、ちょっと心配。
さすがに私も友達と一緒にお弁当を食べている時まではスマホを触らない。それでも、ほとんど私や友達の恋バナの話になるので、実質柊人さんとのお付き合いを思い出す時間みたいなものだ。
「でも冬花の彼氏って大学生でしょ? それも有名私学じゃない、遊ばれてるってことはないの?」
……。
「ちょっ! そ、そんな事あるはずないじゃん!! 冬花だよ! 冬花を彼女にしといて浮気するヤツなんて、いる訳ないない!
それに冬花が選んだ人なんだから、絶対大丈夫だよ、ね!!」
「うん、柊人さんはそんな人じゃない」
おっと、場の空気を凍りつかせてしまった。私とした事が。テヘッ☆
「そ、そうだよねっ! そ、そうだ、写メ見せてもらった事ないよね!?
み、見たいなー」
ふぅ~、落ち着こう。元を辿ればクラスでもノロケまくってた私も悪い、のかも知れない。あくまで可能性。
あくまで可能性だけど、ここは場を取り成さなければならない。
「うん、いいよ。ちょっと待ってね」
スマホを取り出しロック画面を解除すると、さっきまで見ていたSNSアプリが表示され、彼の最新の投稿が目に入る。
橘をあぃす@デレP:美人な同級生が隣に座ってるとソワソワするよね
「ごめん、急用が出来た」
場合によっては柊人さんの大学へ行かなければならない。食べかけのお弁当を放置し、私は早足で廊下へと出て、そのままスマホで柊人さんへと電話を掛ける。すぐに繋がった。
「どうしたの? この時間に電話掛けて来るなんて珍しいね」
「今何してます?」
おっと、またやってしまった。柊人さんが浮気なんてする訳ないのに、すご~く冷たい声が出て来たよ? 何でかなぁ~??
「えっと、今? 今は大学の食堂でご飯食べてるけど」
あ、そう言えばさっきの投稿がいつされたものなのか、時間を確認していなかった。
「ビデオ通話出来ます?」
「どうしたの? 出来るけど、友達と一緒だからちょっと恥ずかしいんだけど……」
「音はミュートにしてもらっていいので、周りをさーっと映してほしいんですが」
「うん、分かった。でも何で敬語? 俺何かしたかな……」
一旦切るよ、と断りを入れてから、柊人さんからビデオ通話の着信が来た。ノータイム、何も隠す事がないというような雰囲気。
一瞬柊人さんの少し困ったような顔が映った後、スマホの外カメラに切り替わって周りの景色が映し出される。大学の食堂、柊人さんの言う通りの光景。おのおの喋りながら食事をしている大学生達が目に入るが、美人どころか女性の姿さえも近くに確認出来なかった。
『もういい?』
スマホのカメラが内カメラに切り替わり、柊人さんの顔が映し出される。
「はい、お騒がせしてすみません。ううん、ごめんなさい。友達に、年上の彼氏に遊ばれてるだけじゃないかって言われて、ちょっと不安になっちゃった……」
『そっか、でもこれで冬花ちゃんが安心してくれるなら、お安い御用だよ』
そう言って笑う柊人さん。でも、さっきの投稿は実際に彼の隣に美人な人が座っていて、それが原因でソワソワしたという内容で、今はいないけどさっきはいた、という事で。
美人が隣に座っていて、ソワソワした。そして私はモヤモヤする……。
私が知り得ない情報を元に、柊人さんに疑いを掛ける。これは理不尽だ。正々堂々と彼のアカウントをフォローして、そして正々堂々と「私という者がありながら!!」 と責めるのが筋だ。いや私がフォローしているなら、そもそもそんな投稿はしないだろう、と思う。多分。
『冬花ちゃん?』
「あ、うん。ごめん、私もお弁当の途中だから、切るね……」
『うん、えっと……、好きだよ』 プチッ
周りに聞こえないようにと口元を手で覆い、そう言ってくれた柊人さん。くぐもった声だったけど、ちゃんと聞こえた。好きだって言ってくれた。
でも、私のこのモヤモヤした気持ちは晴れなかった……。
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