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第二章:転生先は並行世界
美哉と橘香
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咲弥が亡くなった後も、伊吹の生活は変わらなかった。
美哉は髪の毛が少し茶色くて、陽に当たると光り輝くかのように見える。
橘香は黒髪でストレート。烏の濡れ羽色という言葉がピッタリと言える。
二人は伊吹の事を守るべき大切な存在として扱い、伊吹は前世の事もあってか、二人を実の姉のように思っていた。
美哉と橘香は物心がついたかどうかの小さな頃から、武術を習っていた。美子と京香曰く、優秀な侍女になる為には男の子を守る力をつけなければならないとの事。
伊吹がメイドかお手伝いさんかと思っていた美子と京香は、正式には侍女と呼ぶのが正解だったらしい。それも、伊吹の身の回りの世話をする為の侍女だ。
(男が希少な世界だからか。まるでラノベの主人公だな。それもR18寄りの。
こんなクソみたいな世界ではそれくらいの楽しみがないと釣り合わないよな)
咲弥が亡くなってから、伊吹は出来るだけバカな事を考えて気を紛らわしていた。
美哉と橘香は伊吹を守る為にと、屋敷の離れにある道場で美子と京香によって鍛えられている。
侍女なのに守るとは、と不思議に思う伊吹だったが、男が希少なこの世界ではそういうものなのだろうと思うようにした。
当初、伊吹は稽古に連れて行ってもらえなかったが、咲弥の死をきっかけに伊吹も加わる事になった。
「こう?」
「もっと腰に力を入れるの」
「足の親指にも力を入れるの」
伊吹が望む娯楽がない為、武術の稽古に打ち込む事が出来た。
心乃春はもしもの時の自衛の為になる、と思い直し、自らも伊吹に対して積極的に稽古をつけるようになった。
伊吹は美哉と橘香が学校へ行っている間は、美子と京香から勉強を教わる。
多少の違いはあれど、小学校程度であれば元の世界で習った内容とそう変わらない。
文字の書き取りや計算など、飲み込みの早い伊吹に驚く二人。私の孫は天才ね、と喜ぶ心乃春。
美哉と橘香は学校から帰宅すると、おやつを食べながら学校に通わない伊吹に今日はこんな出来事があった、友達とこんな話をした、何を習ったなどを教える。
「夜になると二宮金次郎の目が光るんだって!」
「モーツアルトが校庭を走るんだって!」
「それって逆じゃないの?」
そしておやつを食べ終わると伊吹も交えて宿題をして、武術の稽古の続き。その後、美哉と橘香の手でも出来る範囲で料理を手伝い、六人で夕食を摂る。
伊吹が料理の手伝いをする事は、大人達だけでなく美哉と橘香からも反対されている為、伊吹は皆が料理支度をするところを後ろから眺めている事が多い。
夕食後は心乃春か美子か京香のうちの誰か一人が、子供三人をまとめてお風呂へ連れて行く。咲弥が元気だった頃は同じようにお風呂担当に加わっていた。
赤ん坊の頃から当たり前のように一緒に入っているので、伊吹は恥ずかしいとも嫌だとも感じる事はない。当たり前の日常となっている。
入浴が終わればもう寝る時間だ。三人で伊吹の寝室へ向かう。キングサイズのベッドで伊吹が真ん中、両隣に美哉と橘香が寝転ぶ。
「悪の十字架!」
「恐怖の味噌汁!」
「開くの十時か? と今日麩の味噌汁、ね」
「すごい!」
「何で分かったの!?」
幼い頃からの当たり前の光景。自分も美哉も橘香もまだまだ幼い。伊吹が変な気を起こす事なく、早々に夢の世界へと旅立つ。
そして翌朝早くから、道場にて武術の稽古を受ける。
伊吹はそんな毎日を送っていた。
美哉は髪の毛が少し茶色くて、陽に当たると光り輝くかのように見える。
橘香は黒髪でストレート。烏の濡れ羽色という言葉がピッタリと言える。
二人は伊吹の事を守るべき大切な存在として扱い、伊吹は前世の事もあってか、二人を実の姉のように思っていた。
美哉と橘香は物心がついたかどうかの小さな頃から、武術を習っていた。美子と京香曰く、優秀な侍女になる為には男の子を守る力をつけなければならないとの事。
伊吹がメイドかお手伝いさんかと思っていた美子と京香は、正式には侍女と呼ぶのが正解だったらしい。それも、伊吹の身の回りの世話をする為の侍女だ。
(男が希少な世界だからか。まるでラノベの主人公だな。それもR18寄りの。
こんなクソみたいな世界ではそれくらいの楽しみがないと釣り合わないよな)
咲弥が亡くなってから、伊吹は出来るだけバカな事を考えて気を紛らわしていた。
美哉と橘香は伊吹を守る為にと、屋敷の離れにある道場で美子と京香によって鍛えられている。
侍女なのに守るとは、と不思議に思う伊吹だったが、男が希少なこの世界ではそういうものなのだろうと思うようにした。
当初、伊吹は稽古に連れて行ってもらえなかったが、咲弥の死をきっかけに伊吹も加わる事になった。
「こう?」
「もっと腰に力を入れるの」
「足の親指にも力を入れるの」
伊吹が望む娯楽がない為、武術の稽古に打ち込む事が出来た。
心乃春はもしもの時の自衛の為になる、と思い直し、自らも伊吹に対して積極的に稽古をつけるようになった。
伊吹は美哉と橘香が学校へ行っている間は、美子と京香から勉強を教わる。
多少の違いはあれど、小学校程度であれば元の世界で習った内容とそう変わらない。
文字の書き取りや計算など、飲み込みの早い伊吹に驚く二人。私の孫は天才ね、と喜ぶ心乃春。
美哉と橘香は学校から帰宅すると、おやつを食べながら学校に通わない伊吹に今日はこんな出来事があった、友達とこんな話をした、何を習ったなどを教える。
「夜になると二宮金次郎の目が光るんだって!」
「モーツアルトが校庭を走るんだって!」
「それって逆じゃないの?」
そしておやつを食べ終わると伊吹も交えて宿題をして、武術の稽古の続き。その後、美哉と橘香の手でも出来る範囲で料理を手伝い、六人で夕食を摂る。
伊吹が料理の手伝いをする事は、大人達だけでなく美哉と橘香からも反対されている為、伊吹は皆が料理支度をするところを後ろから眺めている事が多い。
夕食後は心乃春か美子か京香のうちの誰か一人が、子供三人をまとめてお風呂へ連れて行く。咲弥が元気だった頃は同じようにお風呂担当に加わっていた。
赤ん坊の頃から当たり前のように一緒に入っているので、伊吹は恥ずかしいとも嫌だとも感じる事はない。当たり前の日常となっている。
入浴が終わればもう寝る時間だ。三人で伊吹の寝室へ向かう。キングサイズのベッドで伊吹が真ん中、両隣に美哉と橘香が寝転ぶ。
「悪の十字架!」
「恐怖の味噌汁!」
「開くの十時か? と今日麩の味噌汁、ね」
「すごい!」
「何で分かったの!?」
幼い頃からの当たり前の光景。自分も美哉も橘香もまだまだ幼い。伊吹が変な気を起こす事なく、早々に夢の世界へと旅立つ。
そして翌朝早くから、道場にて武術の稽古を受ける。
伊吹はそんな毎日を送っていた。
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