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37:受注と工程管理
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上條課長が社長室から出て行った後、しばらく一人で社内の資料を読み漁っていた。
販売管理システムを覗いて受注報告書や売上出荷日報を確認する限り、ほぼ売上予算表の数字通りで走っているようだ。
以前社長が朝礼で話していたが、どんなに受注や売上の数字が好調であっても、売上予算表の数字との乖離が5%以上あればそれは計画失敗と言えるらしい。
どんどん仕事が入って来て、どんどん商品が出て行くのはありがたい事だが、うちの業種は製造業である。
売る物は自社で作るしかなく、うちの製品は一日や二日で完成するものではない。
顧客の納品指定日から逆算して、部材を仕入れて組み立てて検査して梱包して出荷する、という工場の工程管理が必要になる。
新たな受注はすでに入っているスケジュールの隙間を縫いながら入れ込んで行くので、仕事を入れれば入れるほど現場は混乱し、納期を守れなくなる。
顧客の向こう一年間のニーズを聞き取り、だいたいこれくらいの受注が見込めるだろうという計画を立てるのが営業部の役割だ。
その目算が5%以上の上振れをしても下振れしても、営業部の判断ミスとなる。
営業部が立てた年間受注予定を元に工場の生産管理課が仕入れの予定を立てる。
その数字を見ながら必要な資金を用意するのが経理部の役割となる。
うちの経理部は仕入れ先への支払いや顧客からの約束手形や振り込みでの入金を管理したり、社員の給与計算から経費の精算まで、業務は多岐に渡る。
もっと規模の大きな企業であれば経理課と労務課と人事課と法務課と総務課と庶務課など、細かな役割を振った部署を用意しているだろうが、五十人規模の会社であれば経理部という名の何でも部署一つのみだ。
あと、小さな会社で起こる様々な確認事項や意思決定事項は社長が判断してトップダウンで通達する形が早い。
だからこそ上條課長は俺に色んな立場の人とよく話をした方が良いとアドバイスしてくれた訳だ。
コンコンコンッ
「どうぞー」
社長室の扉がノックされ、入って来たのは営業部の野中さん。
中途採用で俺より三年前に入社された先輩社員だ。
室内に社長がいないのを確認している。
「まだ出社されてないですよ」
「そうか、良かった。俺が用事あるのはお前、じゃなくて社長補佐にでして……」
「いやいやいや、止めて下さいよ!
今まで通りにして下さいよ」
野中さんとは上條課長や工場の後輩達と一緒によく飲みに行く仲で、風俗がめちゃくちゃ好きな人だ。
俺が初めて風俗に行った時は、野中さんが半分出してやるからと言ったから付いて行ったんだった。
「本当にか? 社長にあいつクビにしろとか言わないか!?」
言わない言わない。
そもそも株主だからって社員をクビにする事は出来ないからね。
不当解雇だーって訴えられる。
「心配し過ぎですよ。
それともあれですが、思い当たる事があるんですか?」
「いや特にないけどな!?」
何でそこで声が裏返るんだよ。
思いっ切りありそうな態度じゃないか。
まぁいいけど。
販売管理システムを覗いて受注報告書や売上出荷日報を確認する限り、ほぼ売上予算表の数字通りで走っているようだ。
以前社長が朝礼で話していたが、どんなに受注や売上の数字が好調であっても、売上予算表の数字との乖離が5%以上あればそれは計画失敗と言えるらしい。
どんどん仕事が入って来て、どんどん商品が出て行くのはありがたい事だが、うちの業種は製造業である。
売る物は自社で作るしかなく、うちの製品は一日や二日で完成するものではない。
顧客の納品指定日から逆算して、部材を仕入れて組み立てて検査して梱包して出荷する、という工場の工程管理が必要になる。
新たな受注はすでに入っているスケジュールの隙間を縫いながら入れ込んで行くので、仕事を入れれば入れるほど現場は混乱し、納期を守れなくなる。
顧客の向こう一年間のニーズを聞き取り、だいたいこれくらいの受注が見込めるだろうという計画を立てるのが営業部の役割だ。
その目算が5%以上の上振れをしても下振れしても、営業部の判断ミスとなる。
営業部が立てた年間受注予定を元に工場の生産管理課が仕入れの予定を立てる。
その数字を見ながら必要な資金を用意するのが経理部の役割となる。
うちの経理部は仕入れ先への支払いや顧客からの約束手形や振り込みでの入金を管理したり、社員の給与計算から経費の精算まで、業務は多岐に渡る。
もっと規模の大きな企業であれば経理課と労務課と人事課と法務課と総務課と庶務課など、細かな役割を振った部署を用意しているだろうが、五十人規模の会社であれば経理部という名の何でも部署一つのみだ。
あと、小さな会社で起こる様々な確認事項や意思決定事項は社長が判断してトップダウンで通達する形が早い。
だからこそ上條課長は俺に色んな立場の人とよく話をした方が良いとアドバイスしてくれた訳だ。
コンコンコンッ
「どうぞー」
社長室の扉がノックされ、入って来たのは営業部の野中さん。
中途採用で俺より三年前に入社された先輩社員だ。
室内に社長がいないのを確認している。
「まだ出社されてないですよ」
「そうか、良かった。俺が用事あるのはお前、じゃなくて社長補佐にでして……」
「いやいやいや、止めて下さいよ!
今まで通りにして下さいよ」
野中さんとは上條課長や工場の後輩達と一緒によく飲みに行く仲で、風俗がめちゃくちゃ好きな人だ。
俺が初めて風俗に行った時は、野中さんが半分出してやるからと言ったから付いて行ったんだった。
「本当にか? 社長にあいつクビにしろとか言わないか!?」
言わない言わない。
そもそも株主だからって社員をクビにする事は出来ないからね。
不当解雇だーって訴えられる。
「心配し過ぎですよ。
それともあれですが、思い当たる事があるんですか?」
「いや特にないけどな!?」
何でそこで声が裏返るんだよ。
思いっ切りありそうな態度じゃないか。
まぁいいけど。
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