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31:実物資産
しおりを挟む「実は、最近ちょっとお金にルーズになっているような気がしていまして、あったらあるだけ使ってしまうような気がして怖いんですよね」
「あぁ、君は仮想通貨であれだけの利益を得たんだったな。
もう仮想通貨は止めるのか?」
先週社長と専務と一緒に食事に出た際に、どうやってこれだけの金を手にしたのか聞かれて素直に答えていたんだった。
あまりペラペラとあぶく銭が手に入ったなんて言いふらすべきじゃないぞ、とやんわり注意されたっけ。
「あれは心が落ち着かないんですよ。
特にあの時期は値動きが激しくて、夢にまで出て来ましたからね。
仮想通貨取引は投資というよりギャンブルという雰囲気だったので、やるならもっと長期スパンで考えられるものがいいです」
まぁ、仮想通貨以外の投資活動ってした事ないんだけどね。
あ、会社の株を買ったのも投資になるのか。
「証券会社に任せるっていうのもいいが、あいつらは売買のたびに発生する手数料で儲けているからな。
少しでも値動きがあれあば売れ売れ買え買えとうるさいから、自分の判断を狂わせられる事も多い。
為替もドルであればそう大きな値動きはないから短期的な利益は少ないが、その分損失も少なくて済む。
持っている間の利息も多少は発生するし、何より現地で使うという方法もあるからな」
「それはFXのようにレバレッジを掛けずに持つという事ですか?」
「私はFXに興味がないから詳しくは知らんが、外貨預金は一倍で、その外貨預金をFXでは二十倍まで取引出来るというものだろう。
FXでも利息を受け取れると聞いた事がある。
まぁ損する時も二十倍損するから、FXがハイリスクハイリターンである事は間違いないな」
仮想通貨に手を出す前はFXも視野に入れていたのである程度の知識はあるが、社長と会話が続いているので良しとする。
「社長は何に投資をされているんですか?」
「今はマンションだな」
まさかの実物資産。
社長がテーブルに投げ出していた足を下ろして前かがみになり、俺の顔をじっと見つめて来る。
「家賃収入だけでなく、マンション需要が高まれば部屋そのものを売ればまた利益が出る。
逆に需要が減って価値が下がっても、家賃収入があるから問題ない。
売らなければ損失は確定しないからな」
お、おう……。
さっきより声に力を感じる気がする。
「何、そんなに難しい事はないぞ?
どうだ、勉強がてら私のマンションを一室買ってみるか?」
そんなギラギラした目で言われても、はい買いますなんて絶対言わねーよ。
ここで言う勉強ってのは損とか苦労とかマイナスなイメージしかないわ!
その後も社長はゴルフの会員権だとかリゾート施設の会員権だとか古いバブルの匂いがする胡散臭い話を聞かせてくれた。
俺の事、騙しやすいカモだと思ってんじゃないだろうか。
いや、まぁ名誉顧問と専務の株を引き取った時点で半分騙されたようなもんなんだけど。
「バリ島の民宿が安くてな」
「いや、もう少し自分で調べてみます……」
現地の不動産を確認しに行くだけでマイナスになりそうな投資案件なんてお断りだ。
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