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26:社員持株会

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 小会議室へ場所を移し、上條課長と山崎課長と向き合って俺が座っている。

「さて、何から進めればいいのやら……」

「混乱させて悪いな、俺がもっと上手い事段取り出来れば良かったんだけど」

「いやいやいや!
 ごめんなさい、僕のせいで混乱させてしまって……」

「「いやいやいや……!」」

 三人で頭を下げ合う無意味な時間を過ごし。

「まぁとりあえず、幸坂の持ち口は四百口。
 金額にして二十万円ですね。
 この程度なら簡単に埋まると思いますけど」

「私が事務局として各会員へメールしておこう」

 今までは俺が事務局の名前で会員へ情報を送信していたのだが、今回は上條課長がやって下さるそうな。

「購入希望はすぐに埋まるとして、早くてどれくらいで幸坂へ金を返せますかね?」

「幸坂君への返金自体は、会社が立て替えて振り込めばいいだけだから気にする必要はない。
 問題は、購入希望の会員への対応だな」

 持株会の会員は俺を除いて二十五名。
 仮に全員が購入希望したとして、みんなで十六口分を分け分けするのか、それとも十六口(八千円)ぽっちならいらねぇと言うのか、各会員からの反応を見ないと決められない事が多い。

 また、代金の支払い方法も給料からの天引きや直接現金を理事長または事務局へ渡す、と複数あるので時間が掛かる。

「また時間はあるよ、決算を跨がなければ会社としても持株会としても問題にはならない」

 決算を跨いでしまうと配当金を受け取る権利が発生する。
 持株会として宙に浮いている口数は存在してはならないので、必ず誰かの持ち口でなければならない。
 その為には支払いを終わらせておけばならないが、極論を言うとその期の最終日までに払い込みを終えていれば問題ない。

「そこまで社長が把握しているんですかね?
 全く、社長はちゃんと考えているのかいないのか。
 昔から変わらないな……」

 すみません。俺が謝る事じゃないかもしれないけど、心の中で山崎課長へ謝っておいた。
 心なしか、上條課長も表情を暗くしていたような気がする。

 社員持株会は、社員が会社の株を持つ事によって経営に対する意識を持てたり、配当を受けて財産形成の一助としたり、自分達がどう動けば会社の利益になるのかを考える事に繋げたりと、会社の一員としての意識を高める為の組織と言っても過言ではない。
 そんな会の理事長をされている山崎課長。
 そしてその会の発足に携わり、現在までずっと事務局として関わって来られた上條課長。
 そのお二人が今、社長に振り回されている。

 俺の軽はずみな発言から今に至っている事を考えると、俺の心中も暗くなってしまった。
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