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Part30:魔王という言葉が指す意味の違いについて話し合ってみた

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「という事は、何かきっかけがあれば元の力を取り戻せる……!!」

勇者ちゃん乗っちゃったw 乗せられちゃったよwww
でもまぁそうですね、そう考えるのが建設的、いや精神衛生上よろしいですね。事実かどうかは別として、ですが。

「やっぱり俺はスライムを倒す事から始めなければならないんだ」

「外に出るなとは言いません。出たいのであれば、私達に言って下さい」

 とっても優しく、そしてはっきりとした口調で話すラミィちゃん。応援していると、元の力を取り戻すまで私達が守ってあげると、そう聞こえる暖かい言葉。

 しかし本心は違います。しばしの間、勇者ちゃんをこの地に留めておく事が出来ればこちらのもの。ローラちゃんの誕生日成人を迎えられれば勝ち筋です。自分達姉妹で勇者ちゃんを囲って大事に大事に養って暮らせば、いつかは勇者ちゃんも旅の目的に対して諦めが付く時が来るだろう。
 恐らくそんな事を考えているのでしょうねw そして厳密に言うと、ローラちゃんの成人すら待つ必要はないのです。婚約さえすれば、いえ既成事実さえ作れば、もう勇者ちゃんが逃げる事は不可能になります。
 しかしそれは下策である事を姉妹は理解しています。勇者ちゃんが自ら納得の上で姉妹と結ばれなければ意味がない。だから、今はゆっくりと外堀を埋めて行く事が重畳。

「それにしても、魔王と敵対するというのに何故個人単位パーティーで行動されていたんですか? 軍を相手するのは軍だと思うのですが」

 この発言は作戦や思惑関係なく、単純にローラちゃんの価値観から来るものですね。ローラちゃんの疑問はもっともです。勇者ちゃんの持つ魔王観と、姉妹達が暮らすこの世界の魔王観とでは相違があるのですから。

「軍、ですか? 魔王は魔物の王、率いているのは魔物です。四天王のように知性があるものも確認されていますが、基本的には本能のままに人間に襲い掛かります。どのような手段を使ってか、魔王やその配下が魔物を隷属させて行動させるようですが」

 これが勇者ちゃんの生まれた世界での当たり前。対してこの世界での常識とは。

「え? 魔物の王、ですか。魔法王国の王の事を魔王と呼ぶ訳ではないのですね」

 ランヴェルスマン魔法王国。その国王こそが、魔王。魔法使いの王。

「魔法王国……、この国の事でしたよね? という事は、この大陸における魔王とは、この国の王様の事を指す、と?」

 3人が無言で頷きます。

「なるほど、だからあの時……。俺と皆さんでは、魔王という言葉が指す意味が違ったんですね」

 どこかほっとしたような顔を見せる勇者ちゃん。やはり勇者ちゃんの中で何かが引かかっていたようですね。もしこの姉妹が魔王と関係する人間なのだとしたら、行きつく先には対立だったでしょうからね。
 まぁ勇者ちゃんが思う魔王ではないにせよ、姉妹が魔王と連なる存在である事が否定された訳ではないのですが。

「そう、魔王と呼んでいるけれど、それはただの呼び方の問題。この国は他国よりも魔法に長けた者が住む国。その王が伝統的に魔王と呼ばれているだけ」

 イリスちゃんの補足説明を聞きながら、勇者ちゃんが何度も頷きます。良かったね勇者ちゃん。怖かったんだねw もう安心して寝れるねw
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