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Part15:主人公がヒロイン達に対して自己紹介をするようです

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「俺はゼノンと申します。生まれはドゥウィヌカ村と言う王国の外れにある村です。
 何故外で倒れていたのかは分かりませんが、恐らく魔王との決戦で俺と魔王の魔力がぶつかり合い、爆発を起こして、それで飛ばされたのかも知れません。
 ここは魔王城の近くなのでしょうか?」

「ドゥウィヌカ村……?」

「魔王……?」

「魔力の爆発……?」

「やはり、運命なのですわねっ」

 ローラちゃ約一名んのみ話が噛み合っておりませんが、銀髪姉妹シルバーシスターズは勇者ちゃんが語るほぼ全ての内容に対して疑問を示しています。

「すみません、王国にドゥウィヌカ村という村はないと思うのです」

 少し申し訳なさそうにそう切り出すのはラミィちゃんですね。眼鏡越しに勇者ちゃんの表情を窺いながら、再び口を開きます。

「このランヴェルスマン魔法王国には、ドゥウィヌカ村という村はありません」

 ないと思う、からありません、という言い切りに変えるラミィちゃん。一つの国の全ての村や街を把握しているかのような発言ですね。ですが勇者ちゃんはそんな小さな情報には気付きません。それどころではないのですからね。

「ランヴェルスマン……、魔法王国……?」

 はい、勇者ちゃんがどうやら自分は全く知らない土地に飛ばされたのだという事に気付き始めました。しかし、まだ異世界である、どこを探し歩いてもドゥウィヌカ村に辿り着く事は出来ない、という事までは思い当たっておりません。
 勇者ちゃんはいつ、気付くのでしょうか。

「失礼ですが、ゼノン様の仰る王国というのは……?」

 一方レミィちゃんは勇者ちゃんが自分達の知らないどこかから来たのではないかと疑い始めているようです。つまり、この男は帰る場所がないのではないか、という可能性に思い至った訳です。

「モトゥイター王国です。周辺国の中では一番大きな国ですが、近くに魔法王国と名乗る国はないはずなのですが……」

 勇者ちゃんの生まれた国であるモトゥイター王国。周辺は小さな公国や都市国家群、宗教国家や部族国家などに囲まれていますが、魔法王国を名乗る国はないのです。
 人間が治める領域の中心国、モトゥイター王国から旅立ってわざわざ魔族領へ向かった勇者パーティーですので、様々な国を実際に歩き、見て回っているのですから、勇者ちゃんは周辺国の地理的関係を把握しているんです。

「モトゥイター王国……、残念ですが私達はそのような国を存じ上げません。爆発で遙か遠くまで飛ばされたのか、もしくは意図して魔法的な力で別の場所へ移動させられた可能性もありますね」

 かなり確信を持った言い方をするラミィちゃん。残りの姉妹達はラミィちゃんの言葉に疑問や反論の声を上げません。みなラミィちゃんの仮説に対し少なからず賛同しているように見受けられます。

「意図した魔法的な力……?
 あっ、そう言えば魔王を確実に仕留められたかどうか確認出来てない……」

 呆然としながらも、少しずつ冷静に現状を確認し始める勇者ちゃん。そう、今自分の置かれた状況を把握し、自分がこれからどのように行動すれば良いのかを考えねばなりません。

「魔王と敵対しているの?」

「え……?」

 スノォちゃんから飛び出た意図不明な発言を受け、勇者ちゃんは身を固くします。横目でチラっと伝説の剣を確認。必要であれば見目麗しい姉妹を前にしても勇ましき世界の守護者として、その剣を振るわなければならない事を痛いほど自覚しているのです。
 外見上は普通の村人だったのに、気を許して背中を見せた瞬間に魔物へと変身して襲われた経験もある勇者ちゃん。あっ、あと仲間だと思っていた人達に置いて行かれた経験もあるんですよねwww
 さぁさぁ勇者ちゃんの反応を見て、銀髪姉妹はどのように対応するのでしょうか。
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