塞翁が馬

紐下 育

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序章 正臣side

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「まーくん、ほら、さくちゃんもいるわよ!」

「う、うわぁぁぁん!!」

「まぁくん、おいで。つよいつよいしてあげる」

「うわぁぁぁ、さくぅわぁぁ!!」

幼稚園のころの、俺と探良。
親と離れることにどうしても慣れなくて、俺はいつも泣いていた。

あの幼稚園でもし、探良に出会っていなかったら。
今の俺はいないだろう。

「へんしんちぇんじ!さくらもまぁくんもひーろーだ!」

「ふふっ」

「いまわらった!?せんせー!まぁくんがわらった!!」


幼稚園で一切笑えなかった俺を、最後まで見捨てずにいてくれたのは探良。


「おはよう…。」

「おう、おはよう探良。」

「また起きられなかった…。」

俺は知っている。
探良がいつも、頑張っていること。
真面目で、理想と現実のはざまで苦しみながら、もがき続けている。
いつも、俺が一番近くで探良を見ているのだから。
これからも、探良を一番近くで、一番大切にできるのは俺だけだ。
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