34 / 41
34
しおりを挟む
穂乃果さんとエレベーターで合流する。
「建都君?今日もありがとう。」
「穂乃果さん、おはようございます。穂乃果さんも、お疲れ様です。」
「母親なのに、沙羅にも母親らしいことしてあげられなくてね…。」
穂乃果さんは、沙羅のせいで俺が学校に行けなくなったと思ってる。
だからなのか、最近は、顔を合わせるたびに申し訳なさそうな顔をされる。
「あの、俺、本当にここに来るのが楽しみなんです。学校が辛くなっても、ここに来ることで落ち着くことができてるというか。だから俺の方こそ、沙羅に感謝したいくらいです。」
だんだん自分でも何言ってるのかわからなくなって、声が小さくなっていく。
沙羅があんなに頑張ってるのに、申し訳ない、って顔されると「そうじゃない」って思ってしまう。
それに耐えきれなくて、見切り発車で話しはじめてしまった。
「ならいいんだけど…本当にいつもありがとう。」
穂乃果さんも不思議そうな顔してこっちを見てくる。
急にこんなこと言われたら戸惑いますよね、すみません…。
そう心の中で謝りながら、二人して沙羅の病室に向かった。
「沙羅、おはよう。」
「お母さん、けんと、おはよう。」
沙羅の睡眠時間はだんだん短くなってきていた。
この間までは朝来ても起きてないことがしばしばあったけど、最近は朝しっかりと起きられてるみたいで、穂乃果さんも嬉しそう。
夜、布団をかけたりはいだりするたびにナースコールをしなくちゃいけなかったせいでまとまった時間で眠れなかったのが、腕が治ってきたことで夜起きずに眠れるようになったことも大きいみたい。
その代わりあんまり夢を見なくなったって言ってて、沙羅はちょっと残念そうだったのが面白い。
「夢で建都見られなくなった。」
唇をとんがらせて本気で残念がっていて、思わず笑いそうになった。
まとまった時間で睡眠がとれるようになったのに、なんでそんな残念がっているのか。
「沙羅、今日はプリン買ってきたから、建都君と一緒に食べてちょうだい。」
「「ありがとうございます。」」
穂乃果さんはいつも、ちょっとしたお菓子とかを置いて行ってくれる。
「回診の先生は来た?」
「うん。もう来た。」
「熱とかはなかった?」
「うん。体調も悪くないし、熱もないよ。」
「そう。よかった。」
いつもと同じやりとり。
十分くらいして、穂乃果さんはすぐ会社に出勤していった。
「あ、そうだ。絵本できたよ。」
穂乃果さんがいる間は、俺はできるだけ口を挟まないようにしている。
十分しかない親子の時間なんだから、二人だけで大切にしてもらいたい。
「え、ほんと!?痛っ…。」
ガバッと起き上がったせいで、足を動かしてしまったらしい。
「見せて見せて!」
明らかにテンションがあがった沙羅をちょっといなして、リュックから絵本を取り出す。
「はい、これ。」
目をきらきらさせる沙羅に、安心する。
とりあえず、納品できた。
沙羅が絵本を読み始めたのを見て、俺はスマホを取り出した。
岸谷さんにするLINEの文面考えないと。
「建都君?今日もありがとう。」
「穂乃果さん、おはようございます。穂乃果さんも、お疲れ様です。」
「母親なのに、沙羅にも母親らしいことしてあげられなくてね…。」
穂乃果さんは、沙羅のせいで俺が学校に行けなくなったと思ってる。
だからなのか、最近は、顔を合わせるたびに申し訳なさそうな顔をされる。
「あの、俺、本当にここに来るのが楽しみなんです。学校が辛くなっても、ここに来ることで落ち着くことができてるというか。だから俺の方こそ、沙羅に感謝したいくらいです。」
だんだん自分でも何言ってるのかわからなくなって、声が小さくなっていく。
沙羅があんなに頑張ってるのに、申し訳ない、って顔されると「そうじゃない」って思ってしまう。
それに耐えきれなくて、見切り発車で話しはじめてしまった。
「ならいいんだけど…本当にいつもありがとう。」
穂乃果さんも不思議そうな顔してこっちを見てくる。
急にこんなこと言われたら戸惑いますよね、すみません…。
そう心の中で謝りながら、二人して沙羅の病室に向かった。
「沙羅、おはよう。」
「お母さん、けんと、おはよう。」
沙羅の睡眠時間はだんだん短くなってきていた。
この間までは朝来ても起きてないことがしばしばあったけど、最近は朝しっかりと起きられてるみたいで、穂乃果さんも嬉しそう。
夜、布団をかけたりはいだりするたびにナースコールをしなくちゃいけなかったせいでまとまった時間で眠れなかったのが、腕が治ってきたことで夜起きずに眠れるようになったことも大きいみたい。
その代わりあんまり夢を見なくなったって言ってて、沙羅はちょっと残念そうだったのが面白い。
「夢で建都見られなくなった。」
唇をとんがらせて本気で残念がっていて、思わず笑いそうになった。
まとまった時間で睡眠がとれるようになったのに、なんでそんな残念がっているのか。
「沙羅、今日はプリン買ってきたから、建都君と一緒に食べてちょうだい。」
「「ありがとうございます。」」
穂乃果さんはいつも、ちょっとしたお菓子とかを置いて行ってくれる。
「回診の先生は来た?」
「うん。もう来た。」
「熱とかはなかった?」
「うん。体調も悪くないし、熱もないよ。」
「そう。よかった。」
いつもと同じやりとり。
十分くらいして、穂乃果さんはすぐ会社に出勤していった。
「あ、そうだ。絵本できたよ。」
穂乃果さんがいる間は、俺はできるだけ口を挟まないようにしている。
十分しかない親子の時間なんだから、二人だけで大切にしてもらいたい。
「え、ほんと!?痛っ…。」
ガバッと起き上がったせいで、足を動かしてしまったらしい。
「見せて見せて!」
明らかにテンションがあがった沙羅をちょっといなして、リュックから絵本を取り出す。
「はい、これ。」
目をきらきらさせる沙羅に、安心する。
とりあえず、納品できた。
沙羅が絵本を読み始めたのを見て、俺はスマホを取り出した。
岸谷さんにするLINEの文面考えないと。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
踏切少女は、線香花火を灯す
住倉霜秋
青春
僕の中の夏らしさを詰め込んでみました。
生きていると、隣を歩いている人が増えたり減ったりしますよね。
もう二度と隣を歩けない人を想うことは、その人への弔いであり祈りであるのです。
だから、私はこの小説が好きです。
この物語には祈りがあります。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、青春学園物語。
ほんのりと百合の香るお話です。
ごく稀に男子が出てくることもありますが、男女の恋愛に発展することは一切ありませんのでご安心ください。
イラストはtojo様。「リアルなDカップ」を始め、たくさんの要望にパーフェクトにお応えいただきました。
★Kindle情報★
1巻:第1話~第12話、番外編『帰宅部活動』、書き下ろしを収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:第13話~第19話に、書き下ろしを2本、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:第20話~第28話、番外編『チェアリング』、書き下ろしを4本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:第29話~第40話、番外編『芝居』、書き下ろし2本、挿絵と1P漫画を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:第41話~第49話、番外編2本、書き下ろし2本、イラスト2枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:第50話~第55話、番外編2本、書き下ろし1本、イラスト1枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
Chit-Chat!1:1話25本のネタを30話750本と、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
★第1話『アイス』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
★番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
★Chit-Chat!1★
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる