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穂乃果さんとエレベーターで合流する。
「建都君?今日もありがとう。」
「穂乃果さん、おはようございます。穂乃果さんも、お疲れ様です。」
「母親なのに、沙羅にも母親らしいことしてあげられなくてね…。」
穂乃果さんは、沙羅のせいで俺が学校に行けなくなったと思ってる。
だからなのか、最近は、顔を合わせるたびに申し訳なさそうな顔をされる。
「あの、俺、本当にここに来るのが楽しみなんです。学校が辛くなっても、ここに来ることで落ち着くことができてるというか。だから俺の方こそ、沙羅に感謝したいくらいです。」
だんだん自分でも何言ってるのかわからなくなって、声が小さくなっていく。
沙羅があんなに頑張ってるのに、申し訳ない、って顔されると「そうじゃない」って思ってしまう。
それに耐えきれなくて、見切り発車で話しはじめてしまった。
「ならいいんだけど…本当にいつもありがとう。」
穂乃果さんも不思議そうな顔してこっちを見てくる。
急にこんなこと言われたら戸惑いますよね、すみません…。
そう心の中で謝りながら、二人して沙羅の病室に向かった。
「沙羅、おはよう。」
「お母さん、けんと、おはよう。」
沙羅の睡眠時間はだんだん短くなってきていた。
この間までは朝来ても起きてないことがしばしばあったけど、最近は朝しっかりと起きられてるみたいで、穂乃果さんも嬉しそう。
夜、布団をかけたりはいだりするたびにナースコールをしなくちゃいけなかったせいでまとまった時間で眠れなかったのが、腕が治ってきたことで夜起きずに眠れるようになったことも大きいみたい。
その代わりあんまり夢を見なくなったって言ってて、沙羅はちょっと残念そうだったのが面白い。
「夢で建都見られなくなった。」
唇をとんがらせて本気で残念がっていて、思わず笑いそうになった。
まとまった時間で睡眠がとれるようになったのに、なんでそんな残念がっているのか。
「沙羅、今日はプリン買ってきたから、建都君と一緒に食べてちょうだい。」
「「ありがとうございます。」」
穂乃果さんはいつも、ちょっとしたお菓子とかを置いて行ってくれる。
「回診の先生は来た?」
「うん。もう来た。」
「熱とかはなかった?」
「うん。体調も悪くないし、熱もないよ。」
「そう。よかった。」
いつもと同じやりとり。
十分くらいして、穂乃果さんはすぐ会社に出勤していった。
「あ、そうだ。絵本できたよ。」
穂乃果さんがいる間は、俺はできるだけ口を挟まないようにしている。
十分しかない親子の時間なんだから、二人だけで大切にしてもらいたい。
「え、ほんと!?痛っ…。」
ガバッと起き上がったせいで、足を動かしてしまったらしい。
「見せて見せて!」
明らかにテンションがあがった沙羅をちょっといなして、リュックから絵本を取り出す。
「はい、これ。」
目をきらきらさせる沙羅に、安心する。
とりあえず、納品できた。
沙羅が絵本を読み始めたのを見て、俺はスマホを取り出した。
岸谷さんにするLINEの文面考えないと。
「建都君?今日もありがとう。」
「穂乃果さん、おはようございます。穂乃果さんも、お疲れ様です。」
「母親なのに、沙羅にも母親らしいことしてあげられなくてね…。」
穂乃果さんは、沙羅のせいで俺が学校に行けなくなったと思ってる。
だからなのか、最近は、顔を合わせるたびに申し訳なさそうな顔をされる。
「あの、俺、本当にここに来るのが楽しみなんです。学校が辛くなっても、ここに来ることで落ち着くことができてるというか。だから俺の方こそ、沙羅に感謝したいくらいです。」
だんだん自分でも何言ってるのかわからなくなって、声が小さくなっていく。
沙羅があんなに頑張ってるのに、申し訳ない、って顔されると「そうじゃない」って思ってしまう。
それに耐えきれなくて、見切り発車で話しはじめてしまった。
「ならいいんだけど…本当にいつもありがとう。」
穂乃果さんも不思議そうな顔してこっちを見てくる。
急にこんなこと言われたら戸惑いますよね、すみません…。
そう心の中で謝りながら、二人して沙羅の病室に向かった。
「沙羅、おはよう。」
「お母さん、けんと、おはよう。」
沙羅の睡眠時間はだんだん短くなってきていた。
この間までは朝来ても起きてないことがしばしばあったけど、最近は朝しっかりと起きられてるみたいで、穂乃果さんも嬉しそう。
夜、布団をかけたりはいだりするたびにナースコールをしなくちゃいけなかったせいでまとまった時間で眠れなかったのが、腕が治ってきたことで夜起きずに眠れるようになったことも大きいみたい。
その代わりあんまり夢を見なくなったって言ってて、沙羅はちょっと残念そうだったのが面白い。
「夢で建都見られなくなった。」
唇をとんがらせて本気で残念がっていて、思わず笑いそうになった。
まとまった時間で睡眠がとれるようになったのに、なんでそんな残念がっているのか。
「沙羅、今日はプリン買ってきたから、建都君と一緒に食べてちょうだい。」
「「ありがとうございます。」」
穂乃果さんはいつも、ちょっとしたお菓子とかを置いて行ってくれる。
「回診の先生は来た?」
「うん。もう来た。」
「熱とかはなかった?」
「うん。体調も悪くないし、熱もないよ。」
「そう。よかった。」
いつもと同じやりとり。
十分くらいして、穂乃果さんはすぐ会社に出勤していった。
「あ、そうだ。絵本できたよ。」
穂乃果さんがいる間は、俺はできるだけ口を挟まないようにしている。
十分しかない親子の時間なんだから、二人だけで大切にしてもらいたい。
「え、ほんと!?痛っ…。」
ガバッと起き上がったせいで、足を動かしてしまったらしい。
「見せて見せて!」
明らかにテンションがあがった沙羅をちょっといなして、リュックから絵本を取り出す。
「はい、これ。」
目をきらきらさせる沙羅に、安心する。
とりあえず、納品できた。
沙羅が絵本を読み始めたのを見て、俺はスマホを取り出した。
岸谷さんにするLINEの文面考えないと。
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