青春なんて要らないのに

紐下 育

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September

75

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「結局、大したもの買わずに帰ってきちゃったな…。」

どうしよう。先生に食べたいもの買ってきてもらうのも手だけど…先生が全部買ってきてくれるとは思わない方がよさそうだ。多分先生は、自分の好物の材料も全部は理解してないだろう。
この間も、ハンバーグにパン粉が必要になるっていう事実に驚愕してた人だし。

とりあえず今日はもう買い物行きたくないし、あるもので適当に作るか。
俺は別に明日も暇だから、いつでも買い出し行こうと思えばできるからね。
シャインマスカットを入れるついでに野菜室を確認する。
ニンジンとキャベツに、もやしとしめじ。これだけあれば十分だ。さっき買ってきた安い豚バラ肉もあるから、今日は焼きそばに決定。

でもまだ夕飯作るには早い。
おやつにシャインマスカットを三粒食べて、ちょっと休憩することにした。

俺の部屋は、夏休み前から全く変わってない。
埃がたまってるわけでもないから、先生が定期的に掃除してくれてたんだと思う、きっと。
布団もお日様の匂いがする。

「気持ちい…」

窓を開けると風が入ってきて、まるで旅館にいるような気持ちになる。
このあたりの家は木を植えてたり花を植えてたりしてるから、外の景色も緑が多くてすごく和やか。
そのおかげか空気も澄んでるし、何をするにも快適だ。
まだまだ気温は暑いけど、空気は秋に近づいてる気がする。
肌にまとわりついてくるうざったい湿気もなくなって、、肌に感じるのは穏やかな風だけ。
目をつぶってそんな風に感覚を研ぎ澄ませているうちに、俺は無意識の眠りに落ちた。

「はっ!」

ちょっと汗をかいて起きたときには、もうすでに夕方の18時だった。
そろそろ焼きそば、作り始めないと。
部屋を出ると、奥の部屋から出ている布団と目が合った。
ちょっと、胸のあたりがざわっとする。

「これ、片付けていいのかも先生に聞いてみないと。」

タオルで不安と汗を軽く拭って、キッチンに立った。

ざっくざっくとキャベツを切り、ニンジンは短冊型に切りそろえる。豚バラ肉も適当に切って、一口大にそろえる。しめじも軽くほぐしたら、サラダ油をひいたフライパンにぶち込んでいく。
これぞ、男飯っていうくらいの適当さ。
最近は料理作ってなかったから、包丁握るのとかも久しぶりだ。
少し水を加えて炒めた焼きそばの麺がほぐれてきたら、ソースを絡めて仕上げる。
ほんのりした黄色の麺が混ぜるごとに色づいていくこの感覚が、「料理してる」って感じがしてすごく好き。
さっきの具材と混ぜ合わせて、
「完成!」

青のりをパラパラと振りかけて、先生が帰ってくるのを待った。
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