79 / 134
September
70
しおりを挟む
「…。」
気まずい。
いや、俺がこうやって黙ってるから、よけい気まずくなるんだろうけど。
広瀬も広瀬で黙ってる。
「…俺が昨日LINEしたから、来てくれたの?」
からからの喉から音を絞り出す。なんというか、この沈黙を破る責任は俺にある気がして。
「うん。朝起きられなくて、ちょっと遅くなっちゃった。」
「なんか昨日は『行けたら行く』みたいな感じだったから、来ると思ってなかった。」
「今朝、寝坊したけどその後永瀬のLINEに連絡入れたんだけどね。」
「え、まじ?」
「うん。既読つかなかった。」
「…やばい。スマホ家に忘れてきてるわ。」
「はっ?」
「気づかなかった…。」
「この時代にスマホ忘れて、あげくここまで気づかないって相当だな…。」
「俺もびっくりしてるよ…。」
話し始めたらそれなりに会話が進んで、一安心。
最近広瀬とは勉強するって流れが体に染みついてるみたいで、すぐに勉強にも入れた。
「そういえば永瀬、何時までここいるつもり?」
「途中で昼休憩は取る予定だけど、その後は図書館閉まるまでいようかなって思ってるよ。」
「受験生かよ…。俺今もうその勉強できんわ。」
「ついこの間までできてたんだからできるだろ。」
「永瀬のそういうとこ、ほんとスパルタだよな。」
最近会ったことをまったり話しながら、英語の問題を解いていく。
こうやって話せるのが、大学図書館のいいところだと思う。
もちろんうるさくはしないけど、ちょっと話しながらグループワークできる。
「もう文法もあやふやになってるわ…。」
「俺なんかもとからあやふやだわ。」
「ふははっ。」
「お疲れ。そういえば、永瀬って英語できるの?」
「うーん、そこそこ?全然できないと言ったらうそになるけど、別に海外経験があるわけでもないし、めっちゃペラペラってわけでもない。」
昼すぎ。近くのコンビニでご飯を買って、図書館の飲食可能なスペースで食べていると、広瀬がそんなことを聞いてきた。
「まじ?結構あの問題集難しくね?」
「そうかも。俺もやっと解けるようになってきた。」
「ちゃんと英語力伸びてんのすごいわ…。」
「そういう広瀬はどうなん?」
「英語力?」
「うん。」
「俺は完全に感覚派。子どもの頃海外住んでたから、全然勉強してない。」
「そうだったの!?初めて知った。」
「うん、誰にも言ってないからな。」
「誰にも?」
「うん、誰にも。」
「ん、っ。」
耳打ちをしてくる広瀬に、背筋がぞわっとする。
ちょっと離れたのに、また広瀬が近づいてきて、あわてて逃げたくなるようなぞわっと感が怖い。
先生にされた時と違う…。
こういう時、先生だったら。すぐに俺の気持ちに気づいて、離れてくれるのかな。
それとも、にやっと笑って「なんで逃げるの?」って聞くのかな。
想像するだけで無性に恋しくなって、広瀬の話は右耳から左耳へと通り抜けていった。
気まずい。
いや、俺がこうやって黙ってるから、よけい気まずくなるんだろうけど。
広瀬も広瀬で黙ってる。
「…俺が昨日LINEしたから、来てくれたの?」
からからの喉から音を絞り出す。なんというか、この沈黙を破る責任は俺にある気がして。
「うん。朝起きられなくて、ちょっと遅くなっちゃった。」
「なんか昨日は『行けたら行く』みたいな感じだったから、来ると思ってなかった。」
「今朝、寝坊したけどその後永瀬のLINEに連絡入れたんだけどね。」
「え、まじ?」
「うん。既読つかなかった。」
「…やばい。スマホ家に忘れてきてるわ。」
「はっ?」
「気づかなかった…。」
「この時代にスマホ忘れて、あげくここまで気づかないって相当だな…。」
「俺もびっくりしてるよ…。」
話し始めたらそれなりに会話が進んで、一安心。
最近広瀬とは勉強するって流れが体に染みついてるみたいで、すぐに勉強にも入れた。
「そういえば永瀬、何時までここいるつもり?」
「途中で昼休憩は取る予定だけど、その後は図書館閉まるまでいようかなって思ってるよ。」
「受験生かよ…。俺今もうその勉強できんわ。」
「ついこの間までできてたんだからできるだろ。」
「永瀬のそういうとこ、ほんとスパルタだよな。」
最近会ったことをまったり話しながら、英語の問題を解いていく。
こうやって話せるのが、大学図書館のいいところだと思う。
もちろんうるさくはしないけど、ちょっと話しながらグループワークできる。
「もう文法もあやふやになってるわ…。」
「俺なんかもとからあやふやだわ。」
「ふははっ。」
「お疲れ。そういえば、永瀬って英語できるの?」
「うーん、そこそこ?全然できないと言ったらうそになるけど、別に海外経験があるわけでもないし、めっちゃペラペラってわけでもない。」
昼すぎ。近くのコンビニでご飯を買って、図書館の飲食可能なスペースで食べていると、広瀬がそんなことを聞いてきた。
「まじ?結構あの問題集難しくね?」
「そうかも。俺もやっと解けるようになってきた。」
「ちゃんと英語力伸びてんのすごいわ…。」
「そういう広瀬はどうなん?」
「英語力?」
「うん。」
「俺は完全に感覚派。子どもの頃海外住んでたから、全然勉強してない。」
「そうだったの!?初めて知った。」
「うん、誰にも言ってないからな。」
「誰にも?」
「うん、誰にも。」
「ん、っ。」
耳打ちをしてくる広瀬に、背筋がぞわっとする。
ちょっと離れたのに、また広瀬が近づいてきて、あわてて逃げたくなるようなぞわっと感が怖い。
先生にされた時と違う…。
こういう時、先生だったら。すぐに俺の気持ちに気づいて、離れてくれるのかな。
それとも、にやっと笑って「なんで逃げるの?」って聞くのかな。
想像するだけで無性に恋しくなって、広瀬の話は右耳から左耳へと通り抜けていった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる