58 / 117
August
53
しおりを挟む
「毎日一緒に寝るってこと、ですか…?」
「て、手始めに…?」
「うん!」
「手始め」の意味、わかってるのかな。
だいぶハードだと思うんだけど。
「他になにかやりたいことあった?」
違う、そうじゃない…。
「今まで何回か一緒に寝たことあるし、それが毎日になるってだけだから大丈夫じゃない?」
「いや、でも…。」
「じゃあ、他に何かずっとくっついてられる案ある?」
ちょっと拗ねてる?
きれいに左右対称になってる薄い唇が、いつもよりとんがってる気がする。
「うーん、そういわれると難しいですけど…。」
「毎日一緒にお風呂入るとか、僕がゆうの部屋で仕事するとか?」
「…一緒に寝るのがいいです。」
こうして三択にされると「一緒に寝る」が安牌に思えてくるから不思議だ。
俺の部屋で仕事なんてしたら、先生の仕事の効率が最悪になるのは目に見えてる。
大きな机も、おしゃれなカウンタースペースも、俺の部屋にはない。
本とか論文を参照するためだけに先生の部屋と俺の部屋を往復するなんてことになったら、先生の能力が下がっちゃう。
そんなこと、俺が絶対に許せない。たとえ先生がそれを気にしなくても、俺にとってはすっごく重大なことだ。
一緒にお風呂は普通に論外。恥ずかしいし。
先生のきれいに割れてる腹筋とか、大きく育ったあそことかの前で俺の裸体を晒すなんて、公開処刑も同然だ。俺にとっては。
それに比べて一緒に寝るのは、恥ずかしさはあるけどお風呂ほどじゃないし、俺の部屋で仕事する場合に比べたら先生のパフォーマンスも下がらなそう。
「よし!決まり!」
あぁ、決まっちゃった。
「僕のベッドは移さなくていいよね。ゆうのベッドもそれなりの大きさだから、二人で寝ても余裕あるでしょう?」
「まぁ、はい…。」
「じゃあさっそく、今日からゆうのお部屋で寝かせてもらいます!」
そう元気に宣言してから、先生は仕事を始めた。
自分の部屋じゃなくて、リビングで。
なんかにこにこしてる…。
今日待ち合わせしたときのあの寂しそうな顔じゃなくなっただけ、よかった。
「あぁ、仕事がよく進む!実は今日一日、寂しくて仕事がはかどらなかったんだ。」
それは由々しき事態。
俺がこうして恥ずかしいのを我慢して先生の仕事がはかどるなら、仕方ないよな。
先生の距離の近さには戸惑うことが多いけど、それでも俺は先生の研究のファンだし、先生のことが大好きなのに変わりはない。
「今って何やってるんですか?あ、もし俺が見てもいいお仕事なら、ですけど…。」
「今はゼミの授業の構成を考えているところだよ。学生たちの興味は毎年変わるし、何より研究も進んで知見もアップデートされていくから、毎年内容を変えるんだ。」
「へぇ、すごいですね…!」
「えへへ、嬉しいな。あ、そうだ。ここについてゼミでディベートしてもらおうと思ってるんだけど、こういう感じの流れで議論まで持っていけばスムーズにいくかな?どっかわかりにくいところとかある?」
「うーん…。ここ、『どうすればいいか』って言われてもあんまりピンとこない気がします…。俺が思いつかないだけかもしれないですけど。」
「やっぱりそうだよね。僕もそう思っていたから、少し書き直すことにするよ。ありがとう。」
先生の仕事はどんどん熱を増していく。
俺の受けてる授業も、先生がこうやって作ってくれてるのかな、嬉しいな。
でも、俺はそろそろ眠くなってきた。
「さくくん、すみません。ちょっと眠くなってきたのでお先に寝ててもいいですか?」
「あ、もちろん!遅くまでありがとう!僕もゆうの部屋に移動することにするよ。机、ちょっと借りてもいい?」
「あ、はい、大丈夫です…。」
あれ、なんか本末転倒…?
先生、結局俺の部屋で仕事してない?
でも、眠くなった頭では難しいことは考えられなくて、ベッドに包まれながら眠りに落ちた。
「て、手始めに…?」
「うん!」
「手始め」の意味、わかってるのかな。
だいぶハードだと思うんだけど。
「他になにかやりたいことあった?」
違う、そうじゃない…。
「今まで何回か一緒に寝たことあるし、それが毎日になるってだけだから大丈夫じゃない?」
「いや、でも…。」
「じゃあ、他に何かずっとくっついてられる案ある?」
ちょっと拗ねてる?
きれいに左右対称になってる薄い唇が、いつもよりとんがってる気がする。
「うーん、そういわれると難しいですけど…。」
「毎日一緒にお風呂入るとか、僕がゆうの部屋で仕事するとか?」
「…一緒に寝るのがいいです。」
こうして三択にされると「一緒に寝る」が安牌に思えてくるから不思議だ。
俺の部屋で仕事なんてしたら、先生の仕事の効率が最悪になるのは目に見えてる。
大きな机も、おしゃれなカウンタースペースも、俺の部屋にはない。
本とか論文を参照するためだけに先生の部屋と俺の部屋を往復するなんてことになったら、先生の能力が下がっちゃう。
そんなこと、俺が絶対に許せない。たとえ先生がそれを気にしなくても、俺にとってはすっごく重大なことだ。
一緒にお風呂は普通に論外。恥ずかしいし。
先生のきれいに割れてる腹筋とか、大きく育ったあそことかの前で俺の裸体を晒すなんて、公開処刑も同然だ。俺にとっては。
それに比べて一緒に寝るのは、恥ずかしさはあるけどお風呂ほどじゃないし、俺の部屋で仕事する場合に比べたら先生のパフォーマンスも下がらなそう。
「よし!決まり!」
あぁ、決まっちゃった。
「僕のベッドは移さなくていいよね。ゆうのベッドもそれなりの大きさだから、二人で寝ても余裕あるでしょう?」
「まぁ、はい…。」
「じゃあさっそく、今日からゆうのお部屋で寝かせてもらいます!」
そう元気に宣言してから、先生は仕事を始めた。
自分の部屋じゃなくて、リビングで。
なんかにこにこしてる…。
今日待ち合わせしたときのあの寂しそうな顔じゃなくなっただけ、よかった。
「あぁ、仕事がよく進む!実は今日一日、寂しくて仕事がはかどらなかったんだ。」
それは由々しき事態。
俺がこうして恥ずかしいのを我慢して先生の仕事がはかどるなら、仕方ないよな。
先生の距離の近さには戸惑うことが多いけど、それでも俺は先生の研究のファンだし、先生のことが大好きなのに変わりはない。
「今って何やってるんですか?あ、もし俺が見てもいいお仕事なら、ですけど…。」
「今はゼミの授業の構成を考えているところだよ。学生たちの興味は毎年変わるし、何より研究も進んで知見もアップデートされていくから、毎年内容を変えるんだ。」
「へぇ、すごいですね…!」
「えへへ、嬉しいな。あ、そうだ。ここについてゼミでディベートしてもらおうと思ってるんだけど、こういう感じの流れで議論まで持っていけばスムーズにいくかな?どっかわかりにくいところとかある?」
「うーん…。ここ、『どうすればいいか』って言われてもあんまりピンとこない気がします…。俺が思いつかないだけかもしれないですけど。」
「やっぱりそうだよね。僕もそう思っていたから、少し書き直すことにするよ。ありがとう。」
先生の仕事はどんどん熱を増していく。
俺の受けてる授業も、先生がこうやって作ってくれてるのかな、嬉しいな。
でも、俺はそろそろ眠くなってきた。
「さくくん、すみません。ちょっと眠くなってきたのでお先に寝ててもいいですか?」
「あ、もちろん!遅くまでありがとう!僕もゆうの部屋に移動することにするよ。机、ちょっと借りてもいい?」
「あ、はい、大丈夫です…。」
あれ、なんか本末転倒…?
先生、結局俺の部屋で仕事してない?
でも、眠くなった頭では難しいことは考えられなくて、ベッドに包まれながら眠りに落ちた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる