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May
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よく晴れた日曜日。先生の家の庭では、木の緑がどんどん深まってきていた。
あんまり植物に詳しくないから、これがなんの木なのかわからない。あとで先生に聞いてみよう。
「よし!出発できそう?」
「はい!お願いします」
今日は俺が住んでいた学生アパートの荷物を先生の家に運搬する日。
とはいっても、俺がしっかり住んでいたのは1カ月くらいで、その後は先生の家に入り浸っていたから、片付けとかはそこまで必要なさそう。
まだ潰していないダンボールもあったはずだ。
とりあえずいくつかダンボールを持って、出発する。
今回は、先生に荷造りも手伝ってもらうことにした。
申し訳なさがないわけではないが、二人でやった方が早く終わるでしょ、と先生に正論を突きつけられてしまい、お願いすることにした。
到着して、荷造りを始める。
先生の家からすると少し遠いので、できれば一回の往復で全部の荷物を引き上げちゃいたい。
集中して頑張るぞ。
先生の豪華な家から俺の学生アパートを見ると、落差がすごい。
ここも小綺麗なアパートではあるんだけど、先生の家にいると感覚がバグる。よくない。
8畳の、学生のアパートにしては広めな部屋が、窮屈に感じる。まぁ、先生がでっかいせいで部屋を圧迫してる説もあったりなかったり。
先生は、俺の使わなかったキッチングッズをダンボールに入れてくれる。
その間、俺はランドリーグッズを片付ける。
「ゆう、青が好きなの?お茶碗とか、青いものが多い気がする。」
「青、好きですね。小さいころから、何か色を選ぶ時は青を選んでる気がします。」
「そっかぁ、いいこと聞いた!」
大学入学前は、ちょっと丁寧な暮らしに憧れていた。だから、色味も統一されるように家具を選んだ。学校生活が始まって新生活に忙殺され、不可能だと悟ってあきらめたけど。
そんなわけで、布団、洋服、洗濯ばさみや茶碗は青で統一されている。青空みたいな、澄んだ青に。
荷物を車に運ぶのは先生がやってくれた。
「重たいものもあるから僕が運ぶよ!ゆうはドア開けておいてくれると嬉しいな」
と先生が言ってくれたので、俺は子どもでもできるようなドアの開閉を担当した。
アパートと車を何往復かして、アパートはまっさらな状態になった。たった1カ月とはいえ、住んでいた場所を離れるのは少し寂しい気がする。
この鍵をかけたら、もうこの部屋に戻ることはないんだな。そう思いつつドアを閉めた。
ちょっとおセンチな気分。
でもそれも、車に乗り込んで待っている先生がにこやかに手を振る姿を見てふっとんだ。
そういえば、この状況を他の学生に見られたらまずくないか…?
そんな思いが去来する。汗だか冷や汗だかわからないなにかが、背中を伝った。
荷物を引き上げなくちゃ、という思いが先行したせいで、先生に変装してもらうのを忘れていた。やばい。早く帰らないと。
「お待たせしました。出発して大丈夫です」
「忘れ物とかないか、もう一回確認しなくて大丈夫?」
こういう焦っている時に限ってなかなか事が進まないのはあるあるだと思う。
早く帰ろうよ先生。
「よーし、じゃあ、これでゆうは正式にうちの子だね!」
うちの子、って言われるとこっ恥ずかしい。
「改めて、これからよろしくお願いします」
帰ったら、荷解きが待っている。
憂鬱なはずなのに、わくわくした。
あんまり植物に詳しくないから、これがなんの木なのかわからない。あとで先生に聞いてみよう。
「よし!出発できそう?」
「はい!お願いします」
今日は俺が住んでいた学生アパートの荷物を先生の家に運搬する日。
とはいっても、俺がしっかり住んでいたのは1カ月くらいで、その後は先生の家に入り浸っていたから、片付けとかはそこまで必要なさそう。
まだ潰していないダンボールもあったはずだ。
とりあえずいくつかダンボールを持って、出発する。
今回は、先生に荷造りも手伝ってもらうことにした。
申し訳なさがないわけではないが、二人でやった方が早く終わるでしょ、と先生に正論を突きつけられてしまい、お願いすることにした。
到着して、荷造りを始める。
先生の家からすると少し遠いので、できれば一回の往復で全部の荷物を引き上げちゃいたい。
集中して頑張るぞ。
先生の豪華な家から俺の学生アパートを見ると、落差がすごい。
ここも小綺麗なアパートではあるんだけど、先生の家にいると感覚がバグる。よくない。
8畳の、学生のアパートにしては広めな部屋が、窮屈に感じる。まぁ、先生がでっかいせいで部屋を圧迫してる説もあったりなかったり。
先生は、俺の使わなかったキッチングッズをダンボールに入れてくれる。
その間、俺はランドリーグッズを片付ける。
「ゆう、青が好きなの?お茶碗とか、青いものが多い気がする。」
「青、好きですね。小さいころから、何か色を選ぶ時は青を選んでる気がします。」
「そっかぁ、いいこと聞いた!」
大学入学前は、ちょっと丁寧な暮らしに憧れていた。だから、色味も統一されるように家具を選んだ。学校生活が始まって新生活に忙殺され、不可能だと悟ってあきらめたけど。
そんなわけで、布団、洋服、洗濯ばさみや茶碗は青で統一されている。青空みたいな、澄んだ青に。
荷物を車に運ぶのは先生がやってくれた。
「重たいものもあるから僕が運ぶよ!ゆうはドア開けておいてくれると嬉しいな」
と先生が言ってくれたので、俺は子どもでもできるようなドアの開閉を担当した。
アパートと車を何往復かして、アパートはまっさらな状態になった。たった1カ月とはいえ、住んでいた場所を離れるのは少し寂しい気がする。
この鍵をかけたら、もうこの部屋に戻ることはないんだな。そう思いつつドアを閉めた。
ちょっとおセンチな気分。
でもそれも、車に乗り込んで待っている先生がにこやかに手を振る姿を見てふっとんだ。
そういえば、この状況を他の学生に見られたらまずくないか…?
そんな思いが去来する。汗だか冷や汗だかわからないなにかが、背中を伝った。
荷物を引き上げなくちゃ、という思いが先行したせいで、先生に変装してもらうのを忘れていた。やばい。早く帰らないと。
「お待たせしました。出発して大丈夫です」
「忘れ物とかないか、もう一回確認しなくて大丈夫?」
こういう焦っている時に限ってなかなか事が進まないのはあるあるだと思う。
早く帰ろうよ先生。
「よーし、じゃあ、これでゆうは正式にうちの子だね!」
うちの子、って言われるとこっ恥ずかしい。
「改めて、これからよろしくお願いします」
帰ったら、荷解きが待っている。
憂鬱なはずなのに、わくわくした。
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