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第四章
71:あれでは色気もなにも、あったもんじゃない
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「あれでは色気もなにも、あったもんじゃない。子供同士が、オアシスで遊んでいるようなものだね」
と、あと少しの母艦を作りながらジョシュアが居間でため息をつく。
寝室では、子供のようないさかいが続く。
「ずるいぞ、サミイ。お前、もうマデリーンに乗り換えたのか」
「乗り換えたって、そんな」
「マデリーン。いいから見せろって」
「サミイ様。助けて」
「アシュラフ様。こんなに嫌がっておいでですから」
「うるさい」
ひとしきり寝台の上で争って、とうとうアシュラフは本をマデリーンの胸の中から取りあげた。そして数ページをめくって過激な挿絵を見つけたのか、「……うおっ」という声を上げる。
「ひ、ひどい。止めてって言ったのに」
サミイの後ろで、マデリーンが泣き始めた。
「泣かした」
居間で母艦を作り続けるジョシュアが、またため息をついた。
「マデリーン。悪かった。俺だけ、のけものにされた気分だったんだよ」とアシュラフが謝ると「マデリーン様。アシュラフ様は大抵こんな感じです」とサミイが取りなす。すると「サミイ。お前はどっちの見方なんだよ」とアシュラフがぼやく。
ミオには、三人が微笑ましく映った。夫と妻と召使いというより、まるで兄弟姉妹だ。
「アシュラフ。できたよ」
母艦が完成したことをジョシュアが伝えると、「できたってよ」とアシュラフがまだ泣いているマデリーンの肩をこわごわ突く。
「見に行きましょう。マデリーン様」とサミイが促した。
「西班牙の無敵艦隊。波止場に浮かんでいた姿そのまま」
居間に戻ってきたマデリーンが、泣きはらした目で艦隊を触った。
「里心がついちまったか?」とアシュラフがマデリーンを伺う。またサミイの背中に隠れようとしたマデリーンの手を、アシュラフが取った。そして、サミイとも手を繋ぐ。
「サミイ。ようやく分かった。マデリーンには、俺だけじゃ足りないみたいだ。手伝ってくれ。そして、マデリーン。俺の大切なサミイを、あんたの傍に置くことにする。サミイは今、職がないから離宮勤めにしてやってくれないか。二人で離宮で俺の文句を言いあっていればいい。俺は、どんなに文句を言われたって、会いに行ってやる」
「アシュラフ様」
サミイが耐え切れず嗚咽を漏らすと、アシュラフが二人を片腕ずつ抱いた。
「俺は、二人を同時に愛すぞ。先にサミイを見たら、マデリーンの方を倍見つめる。逆の場合も同じだ」
「はい」と涙声でサミイが返事をして、マデリーンはアシュラフの腕の中で恥ずかしそうに頷いた。
ミオは、ジョシュアのサイティの袖を掴んだ。すると、ジョシュアが抱き上げてきつく抱きしめてくれた。幸せすぎて三人の前だというのに、何度も口づけを交わした。
ミオは、気持ちが溢れ出し、ジュジュアが好きだと言ってくれた激しい口づけを与えていた。
「ウ、ウウン」
アシュラフの咳払いが聞こえて来て、顔をあげると、三人がこちらを見ていた。
ミオは我を忘れてジョシュアを求めていたことに、赤面する。
「ミオさん。僕たちはお暇することにしようか」
ジョシュアに耳元で囁やかれ頷くと、マデリーンが一歩踏み出してきてジョシュアに聞いてきた。
「あなた様は、私に尋問するためにやってきたのではないのですか?グレートマザーは西班牙に大層お怒りだと聞いています。本や無敵艦隊の模型は、本当は尋問の小道具なのでしょう?」
「君が大丈夫かどうか、心配だったのも本当だよ」
マデリーンは、急いで寝室に戻り部屋の扉を閉めた。数分後、本を持って戻ってきて、なぜかミオに渡した。
「ミオ様。もしかしてあなたはジョシュア様の愛しい方?だったら、これを差し上げます。先とは別の本です」
「こんな高価なものをいただいてもいいのですか?それに俺は字が……」
「挿絵だけでも楽しめます。ジョシュア様のお相手には、きっとぴったりな本です。ジョシュア様、グレートマザーによろしくお伝えくださいませ」
マデリーンが、今までの中で一番明るい声で言った。
と、あと少しの母艦を作りながらジョシュアが居間でため息をつく。
寝室では、子供のようないさかいが続く。
「ずるいぞ、サミイ。お前、もうマデリーンに乗り換えたのか」
「乗り換えたって、そんな」
「マデリーン。いいから見せろって」
「サミイ様。助けて」
「アシュラフ様。こんなに嫌がっておいでですから」
「うるさい」
ひとしきり寝台の上で争って、とうとうアシュラフは本をマデリーンの胸の中から取りあげた。そして数ページをめくって過激な挿絵を見つけたのか、「……うおっ」という声を上げる。
「ひ、ひどい。止めてって言ったのに」
サミイの後ろで、マデリーンが泣き始めた。
「泣かした」
居間で母艦を作り続けるジョシュアが、またため息をついた。
「マデリーン。悪かった。俺だけ、のけものにされた気分だったんだよ」とアシュラフが謝ると「マデリーン様。アシュラフ様は大抵こんな感じです」とサミイが取りなす。すると「サミイ。お前はどっちの見方なんだよ」とアシュラフがぼやく。
ミオには、三人が微笑ましく映った。夫と妻と召使いというより、まるで兄弟姉妹だ。
「アシュラフ。できたよ」
母艦が完成したことをジョシュアが伝えると、「できたってよ」とアシュラフがまだ泣いているマデリーンの肩をこわごわ突く。
「見に行きましょう。マデリーン様」とサミイが促した。
「西班牙の無敵艦隊。波止場に浮かんでいた姿そのまま」
居間に戻ってきたマデリーンが、泣きはらした目で艦隊を触った。
「里心がついちまったか?」とアシュラフがマデリーンを伺う。またサミイの背中に隠れようとしたマデリーンの手を、アシュラフが取った。そして、サミイとも手を繋ぐ。
「サミイ。ようやく分かった。マデリーンには、俺だけじゃ足りないみたいだ。手伝ってくれ。そして、マデリーン。俺の大切なサミイを、あんたの傍に置くことにする。サミイは今、職がないから離宮勤めにしてやってくれないか。二人で離宮で俺の文句を言いあっていればいい。俺は、どんなに文句を言われたって、会いに行ってやる」
「アシュラフ様」
サミイが耐え切れず嗚咽を漏らすと、アシュラフが二人を片腕ずつ抱いた。
「俺は、二人を同時に愛すぞ。先にサミイを見たら、マデリーンの方を倍見つめる。逆の場合も同じだ」
「はい」と涙声でサミイが返事をして、マデリーンはアシュラフの腕の中で恥ずかしそうに頷いた。
ミオは、ジョシュアのサイティの袖を掴んだ。すると、ジョシュアが抱き上げてきつく抱きしめてくれた。幸せすぎて三人の前だというのに、何度も口づけを交わした。
ミオは、気持ちが溢れ出し、ジュジュアが好きだと言ってくれた激しい口づけを与えていた。
「ウ、ウウン」
アシュラフの咳払いが聞こえて来て、顔をあげると、三人がこちらを見ていた。
ミオは我を忘れてジョシュアを求めていたことに、赤面する。
「ミオさん。僕たちはお暇することにしようか」
ジョシュアに耳元で囁やかれ頷くと、マデリーンが一歩踏み出してきてジョシュアに聞いてきた。
「あなた様は、私に尋問するためにやってきたのではないのですか?グレートマザーは西班牙に大層お怒りだと聞いています。本や無敵艦隊の模型は、本当は尋問の小道具なのでしょう?」
「君が大丈夫かどうか、心配だったのも本当だよ」
マデリーンは、急いで寝室に戻り部屋の扉を閉めた。数分後、本を持って戻ってきて、なぜかミオに渡した。
「ミオ様。もしかしてあなたはジョシュア様の愛しい方?だったら、これを差し上げます。先とは別の本です」
「こんな高価なものをいただいてもいいのですか?それに俺は字が……」
「挿絵だけでも楽しめます。ジョシュア様のお相手には、きっとぴったりな本です。ジョシュア様、グレートマザーによろしくお伝えくださいませ」
マデリーンが、今までの中で一番明るい声で言った。
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