61 / 92
第四章
61:俺は、明日から王だ。それでも嫌か?
しおりを挟む
身体は、硬そうな筋肉で覆われている。首からは、鍵付きのネックレスを下げていた。
ミオは、ブランケットに潜り込んで、巣穴の中にいる砂漠キツネのように丸まった。
「ア、アシュラフ様。俺、したことがありません。なのに、旅行社の店主に自慰を見せろと言われ何回も披露しています。そんな、俺を抱いたって……」
必死になって弁明するミオの隣りに、アシュラフが身体を滑り込ませてきた。
「勘違いするな。俺は、いつも寝るとき、裸なんだよ。にしても、勤め先でそんなことを強制されていたのか?大変だったんだな、お前も」
しんみりと言われ、チラっとアシュラフを伺った。アシュラフは、肘枕をしミオを見ていた。
「涙は?引っ込んだか?」
「は、はい」
ブランケットを少し捲られ、はだけた背中を触られた。
「香油を塗られたのか?しっとりしているし、いい匂いがするな」
「あ、う……。あの……」
ぎゅっと両目を瞑る。少し触っただけで、それ以上のことをアシュラフはしてこなかった。
代わりに話が始まった。
「びっくりさせてしまったな。俺が、今夜は一緒に休ませると言ったら、召使いたちが勘違いしたようだ。俺は、お前がジョシュアから引き離されて、今夜ビービー泣くかと思ってそう言ったまでだったんだがな」
「別に、アシュラフ様の前では、泣きません」
「ふん。そうか?十年前のサミイみたいなことになったら困るから、念には念を入れてだ。夜中にあの窓から飛び降りるのもなしだぞ。約束しないなら、こうやってきつく抱きしめて眠……何、持ってるんだ?」
アシュラフが、本を抱えているミオに気づいた。
「ジョシュア様の本です」
「ふうん。返しておこうか?」
「いいです。次にお会いしたとき、俺から返します」
「次といっても、明後日にはここを立たせる」
「そんな早く……」
「泣くな。俺は、ジョジュアと似ているだろう。口づけぐらいなら、マデリーンに内緒でしてやってもいい」
「明日、妻を迎える方が言うセリフとは思えません」
ジョシュアだったら、絶対にそんこと言わない。
「マ、マデリーン様に、お会いになれたんですか」
怯えながら皮肉を放つと、ふうっとため息が首筋にかかる。
「明日、初めて顔を見ることになる」
「え?あの方が王都にやってきてもう二週間近いのでは?」
「そういう関係なんだ、俺たちは」
「最初から冷え切った関係なら、どうしてサミイ様を手放したりしたんです?アシュラフ様は、全身でサミイ様を気にされています。俺を慈しんでくれるジョシュア様と同じだから分かります」
「この状況で言うねえ、お前も」
と言ったアシュラフは、首筋に鼻を埋めてきた。
「ああ、いい匂いだ」
「ひっ……」
「何だその悲鳴は?俺は、明日から王だ。それでも嫌か?」
「……」
「沈黙か。なかなか賢いな。だったら、都合のいいように解釈しよう」
声色から、本気ではなさそうだった。ミオをからかいながら、慰めているだけのようだ。
「……さっき、俺が泣くかもしれないから、傍にいるだけだとおっしゃったじゃないですか」
「ジョシュアがいいか?」
「……。……っ」
答えるだけ無駄だと、無言を貫こうとしたら首筋を噛まれた。
「もう一度聞く。ジョシュアがいいか?」
「……はい」
ミオは、ブランケットに潜り込んで、巣穴の中にいる砂漠キツネのように丸まった。
「ア、アシュラフ様。俺、したことがありません。なのに、旅行社の店主に自慰を見せろと言われ何回も披露しています。そんな、俺を抱いたって……」
必死になって弁明するミオの隣りに、アシュラフが身体を滑り込ませてきた。
「勘違いするな。俺は、いつも寝るとき、裸なんだよ。にしても、勤め先でそんなことを強制されていたのか?大変だったんだな、お前も」
しんみりと言われ、チラっとアシュラフを伺った。アシュラフは、肘枕をしミオを見ていた。
「涙は?引っ込んだか?」
「は、はい」
ブランケットを少し捲られ、はだけた背中を触られた。
「香油を塗られたのか?しっとりしているし、いい匂いがするな」
「あ、う……。あの……」
ぎゅっと両目を瞑る。少し触っただけで、それ以上のことをアシュラフはしてこなかった。
代わりに話が始まった。
「びっくりさせてしまったな。俺が、今夜は一緒に休ませると言ったら、召使いたちが勘違いしたようだ。俺は、お前がジョシュアから引き離されて、今夜ビービー泣くかと思ってそう言ったまでだったんだがな」
「別に、アシュラフ様の前では、泣きません」
「ふん。そうか?十年前のサミイみたいなことになったら困るから、念には念を入れてだ。夜中にあの窓から飛び降りるのもなしだぞ。約束しないなら、こうやってきつく抱きしめて眠……何、持ってるんだ?」
アシュラフが、本を抱えているミオに気づいた。
「ジョシュア様の本です」
「ふうん。返しておこうか?」
「いいです。次にお会いしたとき、俺から返します」
「次といっても、明後日にはここを立たせる」
「そんな早く……」
「泣くな。俺は、ジョジュアと似ているだろう。口づけぐらいなら、マデリーンに内緒でしてやってもいい」
「明日、妻を迎える方が言うセリフとは思えません」
ジョシュアだったら、絶対にそんこと言わない。
「マ、マデリーン様に、お会いになれたんですか」
怯えながら皮肉を放つと、ふうっとため息が首筋にかかる。
「明日、初めて顔を見ることになる」
「え?あの方が王都にやってきてもう二週間近いのでは?」
「そういう関係なんだ、俺たちは」
「最初から冷え切った関係なら、どうしてサミイ様を手放したりしたんです?アシュラフ様は、全身でサミイ様を気にされています。俺を慈しんでくれるジョシュア様と同じだから分かります」
「この状況で言うねえ、お前も」
と言ったアシュラフは、首筋に鼻を埋めてきた。
「ああ、いい匂いだ」
「ひっ……」
「何だその悲鳴は?俺は、明日から王だ。それでも嫌か?」
「……」
「沈黙か。なかなか賢いな。だったら、都合のいいように解釈しよう」
声色から、本気ではなさそうだった。ミオをからかいながら、慰めているだけのようだ。
「……さっき、俺が泣くかもしれないから、傍にいるだけだとおっしゃったじゃないですか」
「ジョシュアがいいか?」
「……。……っ」
答えるだけ無駄だと、無言を貫こうとしたら首筋を噛まれた。
「もう一度聞く。ジョシュアがいいか?」
「……はい」
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの高校一年生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の主人公への好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
君の番として映りたい【オメガバース】
さか【傘路さか】
BL
全9話/オメガバース/休業中の俳優アルファ×ライター業で性別を隠すオメガ/受視点/
『水曜日の最初の上映回。左右から見たら中央あたり、前後で見たら後ろあたり。同じ座席にあのアルファは座っている』
ライター業をしている山吹は、家の近くのミニシアターで上映料が安い曜日に、最初の上映を観る習慣がある。ある時から、同じ人物が同じ回を、同じような席で見ている事に気がつく。
その人物は、俳優業をしている村雨だった。
山吹は昔から村雨のファンであり、だからこそ声を掛けるつもりはなかった。
だが、とある日。村雨の忘れ物を届けたことをきっかけに、休業中である彼と気晴らしに外出をする習慣がはじまってしまう。
※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。
無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。
自サイト:
https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/
誤字脱字報告フォーム:
https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる