53 / 92
第四章
53:最高に美しい『白』
しおりを挟む
眠りから覚めると、天蓋がついた寝台に寝かされていた。薄い布が何枚もたらされて幕を作っていた。
まるで、王様のような寝台だ。
身体がじっとりと熱い。
何度か、汗ばむ身体を冷たいタオルで拭われた記憶がある。
うめき声を上げた時、誰かが手を握ってくれた。ジョシュアかと尋ねると「違います」と小さな声で言われた。
そうだ。
黒髪を長く伸ばした浅黒い肌の青年だ。
目は、黄金をはめ込んだように金色に淡く光っていて、女性と見まごうほど華奢で美しかった。彼の額にはミオと同じ奴隷印があった。
折れそうなぐらい細い腰をしていて、よく手入れされた髪の毛は絹糸みたいに艶があった。きっと、歓楽都市ソアレの女性も敵わない。
手首には大きな宝石がついたブレスレットが何個も嵌められていた。
青年は、たしかこう言った。
『ミオ様。私はサミイと申します。傍に降りますので、苦しいときはいつでも御呼び下さい』
「……サミイ様。熱を上げ過ぎて、美しいニンフ(精霊)の幻でも見てしまったのかな?」
ぼそっと呟くと、さっと薄い布がかき分けられた。
「お目覚めですか?」
顔を出したのは、夢の中の住人だと思っていた黄金の瞳を持つ美しい青年だ。
この青年は、ミオと同じ『白』なのだろう。
しかも、最高に美しい『白』。
サミイは、汗で張り付いたミオの前髪を掻き分け、額に手を当てて体温を確かめる。
「大分、容体が落ち着かれたようですね。冷たい水をご用意します。少しお待ちください」
ミオの額から手を離したサミイは、部屋の隅でギッと鳴った音に素早く振り返った。そして、そそくさと幕を捲って出て行った。
やがて、嗅いだことのないような淫靡で上等な香りが部屋に漂い始めた。
「今日は一日中、お忙しいのでは?」
「もう俺がその場にいなくてもなんとかなる」
サミイが、幕の外で話している。
香りは、この人物が連れてきたようだ。
ミオは、自分が置かれた状況を思い出していた。
イリアの街までジョシュアを追いかけて行って、輿に飛び乗った後、引き離された。とすれば、ここは王都に向かう途中に寄せてもらうという大富豪の館だろうか?
なら、奴隷印を額に持つ『白』のサミイが、手首に美しい宝石のついたブレスレットを嵌めているのもわかる。大富豪に愛でられる存在なのだろう。
まるで、王様のような寝台だ。
身体がじっとりと熱い。
何度か、汗ばむ身体を冷たいタオルで拭われた記憶がある。
うめき声を上げた時、誰かが手を握ってくれた。ジョシュアかと尋ねると「違います」と小さな声で言われた。
そうだ。
黒髪を長く伸ばした浅黒い肌の青年だ。
目は、黄金をはめ込んだように金色に淡く光っていて、女性と見まごうほど華奢で美しかった。彼の額にはミオと同じ奴隷印があった。
折れそうなぐらい細い腰をしていて、よく手入れされた髪の毛は絹糸みたいに艶があった。きっと、歓楽都市ソアレの女性も敵わない。
手首には大きな宝石がついたブレスレットが何個も嵌められていた。
青年は、たしかこう言った。
『ミオ様。私はサミイと申します。傍に降りますので、苦しいときはいつでも御呼び下さい』
「……サミイ様。熱を上げ過ぎて、美しいニンフ(精霊)の幻でも見てしまったのかな?」
ぼそっと呟くと、さっと薄い布がかき分けられた。
「お目覚めですか?」
顔を出したのは、夢の中の住人だと思っていた黄金の瞳を持つ美しい青年だ。
この青年は、ミオと同じ『白』なのだろう。
しかも、最高に美しい『白』。
サミイは、汗で張り付いたミオの前髪を掻き分け、額に手を当てて体温を確かめる。
「大分、容体が落ち着かれたようですね。冷たい水をご用意します。少しお待ちください」
ミオの額から手を離したサミイは、部屋の隅でギッと鳴った音に素早く振り返った。そして、そそくさと幕を捲って出て行った。
やがて、嗅いだことのないような淫靡で上等な香りが部屋に漂い始めた。
「今日は一日中、お忙しいのでは?」
「もう俺がその場にいなくてもなんとかなる」
サミイが、幕の外で話している。
香りは、この人物が連れてきたようだ。
ミオは、自分が置かれた状況を思い出していた。
イリアの街までジョシュアを追いかけて行って、輿に飛び乗った後、引き離された。とすれば、ここは王都に向かう途中に寄せてもらうという大富豪の館だろうか?
なら、奴隷印を額に持つ『白』のサミイが、手首に美しい宝石のついたブレスレットを嵌めているのもわかる。大富豪に愛でられる存在なのだろう。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
水色と恋
和栗
BL
男子高校生の恋のお話。
登場人物は「水出透吾(みずいで とうご)」「成瀬真喜雄(なるせ まきお)」と読みます。
本編は全9話です。そのあとは1話完結の短編をつらつらと載せていきます。
※印は性描写ありです。基本的にぬるいです。
☆スポーツに詳しくないので大会時期とかよく分かってません。激しいツッコミや時系列のご指摘は何卒ご遠慮いただきますようお願いいたします。
こちらは愉快な仲間たちの話です。
群青色の約束 #アルファポリス https://www.alphapolis.co.jp/novel/389502078/435292725
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる