【完結】片恋鳥は初恋の夜を越える

おまけのバットゥータ おかわり

172：ボク、友達いなかった。アハハ

　無惨にも扉は締められた。
　もう一度、扉を叩く勇気はボクにはなかった。
　宿の各部屋からは様子を伺っている人がチラホラいて、ボクは慌てて服を着込んで、二階から一階に階段も使わず飛び折りた。
　他の部屋の掃除に向かうためにエミルが綺麗な敷布やタオルを持って階段を上りかけていて、何が起こったのかすぐ察してボクにタオルを一枚落としてきた。
　鼻血は止まらない。
　それよりも殴られたことが衝撃だった。
　アドリー父様は悪いことすれば雷は落とすが、叩いたり殴ったりすることはない。
　使用人の前でもそうだ。
　ローマのララは、見た目からして虫も殺せぬような感じなので、やっぱり暴力は皆無。
　だから、この前首を締められたのは衝撃だった。
　なのに、バットゥータまで。
　ボクの恋は、人の気分を悪くさせるようだ。
　ただ、バットゥータのことが好きなだけなのに。
　そりゃあ、薬を盛ったのは、盛大にやり方を間違えたのかもしれないけれど。
　今、ボクは現実についていけなくて、呆然としてしまっていた。
　血だらけじゃあ街中には行けない。
　憲兵が飛んできてしまう。
　じゃあ、友達の部屋に行こうかなと思ったのだが、
「ボク、友達いなかった。アハハ」