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おまけのバットゥータ
169:今、スレイヤー様にまとわりつかれても、俺も困る
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強引にアドリーは店に入っていく。
小鳥は小鳥で、バットゥータの背中を押してきた。
席に着くや否や、
「で?顔が冴えないのって、スレイヤーの件か?」
とアドリーが聞いてくる。
「顔が冴えないじゃなくて、表情が冴えないって言ってくれませんか?」
「同じようなもんだろ」
「違います」
言い合いをしていると、『まあまあ』と小鳥がとりなしてくる。
この二人は、さぞかし上手くいってんだろうなあ、夜の方も。
バットゥータは下世話なことを考える。
なんとなく、皆、話づらいようで、黙ってしまった。
バットゥータ、アドリー、小鳥の誰かの件でなく、その子供スレイヤーのやらかしたことで顔を突合すなんて、やっぱり、自分らは年を取った。
珈琲が運ばれてきて、バットゥータはそれを飲みながら口火を切る。
「ちょうどいい。小鳥に聞きたいことが」
『何?』
小鳥がすぐに反応してきた。
彼も沈黙に困っていたようだ。
「この前の首絞めの件。スレイヤー様に説教するとき、どうやって説明したんだ?温厚なあんたが怒る理由がはっきりしなければ、スレイヤー様の心には響かないぜ」
小鳥が紙の束を出し、文字を書き始める。
『あの日の翌日ね、落ち着いたらこれまでのこと全部説明しようとしたんだけど、部屋に引きこもっちゃって。その今朝も……出て来ない』
「出自の件は、断片的に、色んな奴らから聞いているのかもしれないが、間違った情報を鵜呑みにしているかもしれない。だから、街をぶらぶらしつつ、どういう切り口でいこうとか二人で話してたんだ」
『あと、バットゥータに正式な謝罪に行きたいから、その話も』
「いいよ、それは、もう」
すると、アドリーが
「いいわけないだろっ」
と少し怒る。
「当人がいいって言ってるんで、そっとしておいてください。で、スレイヤー様にいつ言うんですか?言えば、こっちに泣きついてくるのは目に見えてますが」
『また迷惑かけちゃうね』
と小鳥がすまなさそうな顔をする。
バットゥータは椅子を引いた。
「あんた方の気持ちが整ってないなら、少し待ってください。今、スレイヤー様にまとわりつかれても、俺も困る」
この件、アドリーと小鳥。バットゥータは単品で問題を解決しようとしている。
それが分かって、心が波打ち始めた。
「じゃ、俺、帰るんで」
「おい。バットゥータ。お前、平気か?」
そそくさと店を出るとアドリーが後を追ってくる。
昔は杖無しじゃ歩けなかった。一歩歩くのも関節が痛むから、歩調もゆっくりで。
そんなアドリーをいつまでも支えたいと思っていたのだが、急に現れた小鳥が彼の足を直し、自由にしてしまった。俺っていう籠にずっと閉じ込めていたかったのに。
「スレイヤー様の件は関係ないです。俺が犯されたわけでもあるまいし。犯されたとしたって、俺、男ですよ?」
「そういうこと言うと、小鳥がブチ切れるから止めろ。とにかく、スレイヤーは最低なことをしたんだから」
「アドリー様はすっかり父親ですね」
「養父だからな」
「小鳥もね。ローマのララって呼ばせているけれど、スレイヤー様には実の父親です。俺だけ独り身なんだなあって実感しちゃって。結婚でもしようかなあ。誰かいい人いないですか……って、その前に、スレイヤー様の伴侶を見つけてやらなきゃ」
喋り続ける自分をアドリーが黙って見つめていて、バットゥータは居心地が悪かった。
「お前、少ししんどい?」
小鳥は小鳥で、バットゥータの背中を押してきた。
席に着くや否や、
「で?顔が冴えないのって、スレイヤーの件か?」
とアドリーが聞いてくる。
「顔が冴えないじゃなくて、表情が冴えないって言ってくれませんか?」
「同じようなもんだろ」
「違います」
言い合いをしていると、『まあまあ』と小鳥がとりなしてくる。
この二人は、さぞかし上手くいってんだろうなあ、夜の方も。
バットゥータは下世話なことを考える。
なんとなく、皆、話づらいようで、黙ってしまった。
バットゥータ、アドリー、小鳥の誰かの件でなく、その子供スレイヤーのやらかしたことで顔を突合すなんて、やっぱり、自分らは年を取った。
珈琲が運ばれてきて、バットゥータはそれを飲みながら口火を切る。
「ちょうどいい。小鳥に聞きたいことが」
『何?』
小鳥がすぐに反応してきた。
彼も沈黙に困っていたようだ。
「この前の首絞めの件。スレイヤー様に説教するとき、どうやって説明したんだ?温厚なあんたが怒る理由がはっきりしなければ、スレイヤー様の心には響かないぜ」
小鳥が紙の束を出し、文字を書き始める。
『あの日の翌日ね、落ち着いたらこれまでのこと全部説明しようとしたんだけど、部屋に引きこもっちゃって。その今朝も……出て来ない』
「出自の件は、断片的に、色んな奴らから聞いているのかもしれないが、間違った情報を鵜呑みにしているかもしれない。だから、街をぶらぶらしつつ、どういう切り口でいこうとか二人で話してたんだ」
『あと、バットゥータに正式な謝罪に行きたいから、その話も』
「いいよ、それは、もう」
すると、アドリーが
「いいわけないだろっ」
と少し怒る。
「当人がいいって言ってるんで、そっとしておいてください。で、スレイヤー様にいつ言うんですか?言えば、こっちに泣きついてくるのは目に見えてますが」
『また迷惑かけちゃうね』
と小鳥がすまなさそうな顔をする。
バットゥータは椅子を引いた。
「あんた方の気持ちが整ってないなら、少し待ってください。今、スレイヤー様にまとわりつかれても、俺も困る」
この件、アドリーと小鳥。バットゥータは単品で問題を解決しようとしている。
それが分かって、心が波打ち始めた。
「じゃ、俺、帰るんで」
「おい。バットゥータ。お前、平気か?」
そそくさと店を出るとアドリーが後を追ってくる。
昔は杖無しじゃ歩けなかった。一歩歩くのも関節が痛むから、歩調もゆっくりで。
そんなアドリーをいつまでも支えたいと思っていたのだが、急に現れた小鳥が彼の足を直し、自由にしてしまった。俺っていう籠にずっと閉じ込めていたかったのに。
「スレイヤー様の件は関係ないです。俺が犯されたわけでもあるまいし。犯されたとしたって、俺、男ですよ?」
「そういうこと言うと、小鳥がブチ切れるから止めろ。とにかく、スレイヤーは最低なことをしたんだから」
「アドリー様はすっかり父親ですね」
「養父だからな」
「小鳥もね。ローマのララって呼ばせているけれど、スレイヤー様には実の父親です。俺だけ独り身なんだなあって実感しちゃって。結婚でもしようかなあ。誰かいい人いないですか……って、その前に、スレイヤー様の伴侶を見つけてやらなきゃ」
喋り続ける自分をアドリーが黙って見つめていて、バットゥータは居心地が悪かった。
「お前、少ししんどい?」
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