121 / 183
第七章
120:何すねてんだ?帰すんだよ、ローマに。前々から言ってるだろ?
しおりを挟む
『小鳥。いい時を選んで叔父上に伝えて欲しい。金の流れを調べるうちに、ムラト三世の
死因を私は知ってしまった。原因不明の突然死となっているが、おそらく心臓発作だ。ムラト三世は死の何年も前から不能治療薬を投薬されていたようだ。男の部分は活発になる変わり、心臓に過大な負担がかかる代物だ。これは、スルタンを決めるのは兄弟殺ししか策はないと思っていたムラト三世の母后の命令だと思う。母后の命令は、スルタンの意思を超える事がある。なんせ、母后が賢くなければ、男児は生きのびられないし、スルタンの座にもつけないのだからな。しかし、叔父上が生まれて以降、寵姫らは誰も子をなしていない。それは、やはり、ムラト三世も、自分が死んだ後兄弟殺しが起こることに心を痛め、疑問に思っていたからだと思う』
「最後、何、話してたんだ?」
「そもそも手話ができるなんて聞いてねえぞ」
途方もない広さの宮殿の中庭を三人でゆっく歩いていると、アドリーとバットゥータが聞いてきた。
『あ、うん。いろいろ』
アドリーの足を壊した母親と、縁あって再会したことで、心の中で燻ぶっていた感情は消え去る方向に向かっているらしい。
「何ですって?アドリー様?」
「いろいろだと。ごまかしやがった」
隠されてアドリーは少し不機嫌なようだ。
『アドリー様、あのね』
と僕が言いかけると、バットゥータが遮った。
「ふふ。俺らが、宮廷で働きたいです、今までお世話になりましたって言い出すんじゃないかって思ってんでしょう?」
「望むなら、別にいいぜ。ただし、バットゥータだけな」
「へえ?小鳥は、ご自分の手元に置くと?」
「何すねてんだ?帰すんだよ、ローマに。前々から言ってるだろ?」
『待って!勝手に決めないでよ!』
「はあ?なんて?勝手に決めるな?お前、この国に残ってどうすんだ?赤ん坊連れてローマに戻れ。赤ん坊が育てられないなら、お前の親に育ててもらえ」
『僕、帰るつもりないよ。こんな身体じゃ帰れない』
「いや、どんな身体であろうが帰れって。正直、迷惑」
僕の顔に痙攣が走るのを見て、バットゥータが天を仰いだ。
「あーあーあー!今日はせっかく小鳥が牢を出られたんだから、喧嘩は止めましょ」
「喧嘩ってそもそも、バットゥータが妙な絡み方をしてくるからだろうがっ!?」
とアドリーが怒鳴る。
「そうです。俺が全面的に悪い。この世の悪事、全部が俺のせいです」
素早くバットゥータがいなした。
すると、さらにアドリーが怒る。
「お前、まじめに反省しろよ?んで、小鳥はローマに帰れ」
『だから』
僕がアドリーに詰め寄ると、
「だから、じゃねえ。お前の赤ん坊を今後もオレたちに面倒見させるつもりか」
と彼は言い返してきて、
「面倒って、アドリー様だって、ちょっと抱いてあやしてすぐ飽きるじゃないですか」
とバットゥータが余計な助け舟を出す。
「バットゥータは黙ってろ。いいか、小鳥。オスマン帝国から出る商船は春と秋の二回、大船団を組んで西洋に向かう。間もなくその時期がやってくる。それに乗れば、海賊だって襲ってこない」
『帰らない』
「小鳥っ!!」
「荷馬車呼びましょう、ね、荷馬車。館まで徒歩で延々と喧嘩を聞かされるの勘弁です」
耐えきれなくなったのか、一番先にバットゥータが音を上げた。
広間で、「アドリー様、おかえりなさいませ。バットゥータ様も、それに小鳥様も!ご無事で!」
死因を私は知ってしまった。原因不明の突然死となっているが、おそらく心臓発作だ。ムラト三世は死の何年も前から不能治療薬を投薬されていたようだ。男の部分は活発になる変わり、心臓に過大な負担がかかる代物だ。これは、スルタンを決めるのは兄弟殺ししか策はないと思っていたムラト三世の母后の命令だと思う。母后の命令は、スルタンの意思を超える事がある。なんせ、母后が賢くなければ、男児は生きのびられないし、スルタンの座にもつけないのだからな。しかし、叔父上が生まれて以降、寵姫らは誰も子をなしていない。それは、やはり、ムラト三世も、自分が死んだ後兄弟殺しが起こることに心を痛め、疑問に思っていたからだと思う』
「最後、何、話してたんだ?」
「そもそも手話ができるなんて聞いてねえぞ」
途方もない広さの宮殿の中庭を三人でゆっく歩いていると、アドリーとバットゥータが聞いてきた。
『あ、うん。いろいろ』
アドリーの足を壊した母親と、縁あって再会したことで、心の中で燻ぶっていた感情は消え去る方向に向かっているらしい。
「何ですって?アドリー様?」
「いろいろだと。ごまかしやがった」
隠されてアドリーは少し不機嫌なようだ。
『アドリー様、あのね』
と僕が言いかけると、バットゥータが遮った。
「ふふ。俺らが、宮廷で働きたいです、今までお世話になりましたって言い出すんじゃないかって思ってんでしょう?」
「望むなら、別にいいぜ。ただし、バットゥータだけな」
「へえ?小鳥は、ご自分の手元に置くと?」
「何すねてんだ?帰すんだよ、ローマに。前々から言ってるだろ?」
『待って!勝手に決めないでよ!』
「はあ?なんて?勝手に決めるな?お前、この国に残ってどうすんだ?赤ん坊連れてローマに戻れ。赤ん坊が育てられないなら、お前の親に育ててもらえ」
『僕、帰るつもりないよ。こんな身体じゃ帰れない』
「いや、どんな身体であろうが帰れって。正直、迷惑」
僕の顔に痙攣が走るのを見て、バットゥータが天を仰いだ。
「あーあーあー!今日はせっかく小鳥が牢を出られたんだから、喧嘩は止めましょ」
「喧嘩ってそもそも、バットゥータが妙な絡み方をしてくるからだろうがっ!?」
とアドリーが怒鳴る。
「そうです。俺が全面的に悪い。この世の悪事、全部が俺のせいです」
素早くバットゥータがいなした。
すると、さらにアドリーが怒る。
「お前、まじめに反省しろよ?んで、小鳥はローマに帰れ」
『だから』
僕がアドリーに詰め寄ると、
「だから、じゃねえ。お前の赤ん坊を今後もオレたちに面倒見させるつもりか」
と彼は言い返してきて、
「面倒って、アドリー様だって、ちょっと抱いてあやしてすぐ飽きるじゃないですか」
とバットゥータが余計な助け舟を出す。
「バットゥータは黙ってろ。いいか、小鳥。オスマン帝国から出る商船は春と秋の二回、大船団を組んで西洋に向かう。間もなくその時期がやってくる。それに乗れば、海賊だって襲ってこない」
『帰らない』
「小鳥っ!!」
「荷馬車呼びましょう、ね、荷馬車。館まで徒歩で延々と喧嘩を聞かされるの勘弁です」
耐えきれなくなったのか、一番先にバットゥータが音を上げた。
広間で、「アドリー様、おかえりなさいませ。バットゥータ様も、それに小鳥様も!ご無事で!」
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
身体検査が恥ずかしすぎる
Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。
しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。
※注意:エロです
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
先生を誰が先に孕ませるかゲーム
及川雨音
BL
複数ショタ×おっぱい有りマッチョ両性具有先生総受け
おっぱいとおしりがデカいむちむちエロボディー!
強姦凌辱調教洗脳脅迫誘導だけど愛があるから大丈夫!
ヤンデレ気味なショタたちに毎日日替わりで犯されます!
【書いていくうちに注意事項変わりますので、確認してからお読みいただくよう、お願い致します】
*先生の肉体は淫乱なのですぐ従順になります。
*淫語強要されます。
*複数プレイ多め、基本は一対一です。ギャラリーがいるのはプレイの一環です。ある意味チームプレイです。
*詳しい女性器・生理描写が有ります。
*ゴミを漁る、トイレ盗撮、ハッキングなど犯罪とストーカー行為をナチュラルにしています。
*相手により小スカ、飲尿、おもらし、強制放尿有ります。
*相手により赤ちゃんプレイ、授乳プレイ有ります。
*パイズリ有り。
*オモチャ、拘束器具、クスコ、尿道カテーテル、緊縛、口枷、吸引機、貞操帯もどき使います。
*相手によりフィストファック有ります。
*集団ぶっかけ有り。
*ごく一般的な行動でも攻めにとってはNTRだと感じるシーン有ります。
*二穴責め有り
*金玉舐め有り
*潮吹き有り
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる