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第五章

102:歌え

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 話せたとしても、ムラト三世の夜の小鳥を努めたことを端折ることができないだろうし、そうすれば、アドリーに……。
 自分の父親がそんなことをしていたと知りたくないだろうし、僕のことを恨めしく思うかもしれない。はっきり言えば、アドリーにさらに軽蔑されるのが嫌なのだ、僕は。
『緩んだ』
 僕はアドリーの尻穴から指を抜いて、バットゥータに譲る。
 そして、香油をたっぷり手につけて、バットゥータの夜着をたくしあげ性器を握って上下した。
「だから、それ、止めろって」
 バットゥータは喘ぎながら、僕の手技に耐える。
 なかなか我慢強い。
 そして、「もういいか?」と僕に聞いた後、アドリーの足を抱えて尻穴に性器を挿入しようと試み始めた。
「『今までで、一番ゆっくり、腰を進めて』だっけ?はは。今日もすげえ穴の仕上がり」
 一瞬、使用人ではなく、雄の顔を見せて、バットゥータがアドリーへと身体を沈めていく。
「あんたさ、小鳥だったことが辛そうなのに、小鳥って名乗るのは何で?しがみつきたいようには見えないけど?」
「ん、ん、ん」
 バットゥータに揺さぶられて、嬌声を上げるアドリーは、すぐに彼に口を塞がれる。
 そして、バットゥータの舌が引き抜かれたそこに、二本指を入れられた。
 口の端から唾液が垂れていく。
『元の名前を神様に捧げたから』
 紙にそう書いて、見せる。
 読み取ったバットゥータは、「ふうん」と一言。
「変わってんな」「くだらねえな」と言うんだと思って、僕は身構えていたから、肩透かしを食らったかんじだ。
 本格的に、挿入が繰り返させるようになり、僕が寝台から遠ざかろうとすると、
「いろ。そこへ」
と命令された。
 黙って見ていろ、ということだろうか。
 バットゥータは変わり者だが、性的にも変わっているんだなあと思っていると、
「歌え」
とバットゥータが腰を振りながら言った。
「アドリー様の耳元で」
 性器ですりあげられた尻穴から香油が溢れ出してくちゅんといやらしい音を立てる。
 それでも、やっぱり、アドリーはきつそうな表情をしている。
「あんたが歌うと、昔の記憶が少しだけ戻ってくるみたいだ。それに身体も緩む。なあ。言わねえからさ。歌えるってことを隠していることは」
 息を少し乱しながらバットゥータは、身体を折って半開きになったアドリーの口を塞ぎにかかる。
 僕は再びアドリーの耳元に口を埋めた。
 歌い始めると、「クッソ。何なんだよ、この穴の具合」とさらにバットゥータが息を乱した。

 痛みで呻いていたアドリーの声は、すーすーという規則正しい寝息に変わった。
「まだ、夜も白んでねえってのに」
 雨はいつの間にか止んでいて、雲も晴れていた。星が瞬いている。
「すぐ晴れたってのもあるけど、それでも寝付くのがかなり早い。普段は明け方なんだ」
 タオルを渡され、僕は手を拭く。
 明け方まで相手をしてバットゥータは睡眠をどこで補ってるんだろう?
 使用人だから寝坊は出来ないだろうし、じゃあ、昼寝かな?
 せかせかした性格だから、そんなのも取らないような気もする。
「あのさあ、せっかく手伝ってくれたけど、アドリー様、今夜のあんたのこと覚えてないはず。一応、説明するけど、本気にしない可能性が高い」
『むしろ、今夜、僕が来たこと自体言わないで』
 男二人から快楽を与えられたなんて、アドリーは嫌かもしれない。
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