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第五章
97:そういうの嫌いじゃないくせに~。アドリー様は可愛らしいお顔立ち。バットゥータ様は、男らしいお顔立ち
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珈琲が無くなれば誰かが銅製のポットから注いでくれ、菓子が少なくなれば、自然と片付けが始まる。
その間、ファトマの腕の中で、赤ん坊はずっと目を瞑っていた。
それを確認したアドリーは、
「今はジタバタしてもしょうがねえ。赤ん坊も寝たことだしオレは通常業務に戻る。お前は適当にしてろ」
と僕だけに聞こえるように言い、お菓子をひとつまみ口に入れると這ってソファーに移動する。
杖がすぐにソファーの横手に置かれた。
手紙部隊にいた女性がアドリーの側に寄っていって紙を見せた。
書かれていた文字に目を走らせたアドリーは、
「おまえ、また、間違えている」
と苦笑いしながら、女性に拳を握って出すようにいった。
折檻でもするのかと思って、見ている僕は身構えてしまう。
「おい。うつむくな。オレの目を見ろ」
とアドリーは女性に命令し、無理やり目を合わさせる。
出させた拳を包むようにして握り、
「いい加減、この言い回し覚えろよ?」
と軽く小首を傾げ、甘い雰囲気を醸し出す。
女性の顔が真っ赤になり、うっすらと汗までかいているみたいに見えた。
照れている女性に、
「駄目だ。こっち見ろ」
アドリーはうつむくことを許さない。
「覚えたか?また間違えたら、同じことするからな?」
と言い聞かせる。
「その子、わざとですよ。アドリー様に手を握って欲しくて」
広間の奥で声が上がった。
「ち、違うもん」
と女性がすかさず言った。
「何だって?聞きづてならねえなあ」
アドリーは女性を掴んだままぐいっと引っ張って、抱き寄せ、耳元に顔を埋める。
「お前、髪につける香油、変えただろ?」
「アドリー様!さすがにやり過ぎ」
と周りが言って、「ん。すまん。すまん」とアドリーが女性を離した。
でも、女性の方は、ぽうっとしていて夢見心地な表情だ。
再び腰を上げたアドリーは、今度は絨毯に座って小机で計算している女性の隣で、まるで兄妹みたいにぴったりとくっついて、解き方を教え始める。
どの女性にも同じ態度。
照れたり、じゃれあったり、わざと反発してみせたりという違いはあっても、誰も嫌がっていないのが不思議だ。
アドリーは今度は弦楽器の音が聞こえてくる部屋へと行ってしまう。
「一時もゆっくりされてなくてびっくりされました?それとも昔のままですか?楽器も手紙や計算と同じく手取り足取り教えてるんですよ。後ろから抱きかかえるような感じで弦の押さえ方とか。きゃあー。見ているこっちが照れてしまいます」
僕は、アドリーと触れ合いのあった女性たちを順番に指差し、最後、部屋全体に多くな円を描いた。
「はい。アドリー様はどの女性にもああやって。若い男性が女性を上手く扱うためだって分かってるですけど、皆、頑張っちゃうんですよ。ときめきに飢えているので。私たちの覚えがよくなって次の館で少しでもいい扱いが受けれるよう、アドリー様なりの工夫らしいです」
「バットゥータ様がアドリー様のあの真似をするのだけは勘弁だわ」
と顔をしかめながら他の女性が会話に加わってきた。
理由は、
「オラッ。どこが分かんねえんだ、なんで、覚えられねんだっオラってやってくるんですよ!最低でしょ、小鳥様」
「そういうの嫌いじゃないくせに~。アドリー様は可愛らしいお顔立ち。バットゥータ様は、男らしいお顔立ち。どっちもいいじゃないのう」
その間、ファトマの腕の中で、赤ん坊はずっと目を瞑っていた。
それを確認したアドリーは、
「今はジタバタしてもしょうがねえ。赤ん坊も寝たことだしオレは通常業務に戻る。お前は適当にしてろ」
と僕だけに聞こえるように言い、お菓子をひとつまみ口に入れると這ってソファーに移動する。
杖がすぐにソファーの横手に置かれた。
手紙部隊にいた女性がアドリーの側に寄っていって紙を見せた。
書かれていた文字に目を走らせたアドリーは、
「おまえ、また、間違えている」
と苦笑いしながら、女性に拳を握って出すようにいった。
折檻でもするのかと思って、見ている僕は身構えてしまう。
「おい。うつむくな。オレの目を見ろ」
とアドリーは女性に命令し、無理やり目を合わさせる。
出させた拳を包むようにして握り、
「いい加減、この言い回し覚えろよ?」
と軽く小首を傾げ、甘い雰囲気を醸し出す。
女性の顔が真っ赤になり、うっすらと汗までかいているみたいに見えた。
照れている女性に、
「駄目だ。こっち見ろ」
アドリーはうつむくことを許さない。
「覚えたか?また間違えたら、同じことするからな?」
と言い聞かせる。
「その子、わざとですよ。アドリー様に手を握って欲しくて」
広間の奥で声が上がった。
「ち、違うもん」
と女性がすかさず言った。
「何だって?聞きづてならねえなあ」
アドリーは女性を掴んだままぐいっと引っ張って、抱き寄せ、耳元に顔を埋める。
「お前、髪につける香油、変えただろ?」
「アドリー様!さすがにやり過ぎ」
と周りが言って、「ん。すまん。すまん」とアドリーが女性を離した。
でも、女性の方は、ぽうっとしていて夢見心地な表情だ。
再び腰を上げたアドリーは、今度は絨毯に座って小机で計算している女性の隣で、まるで兄妹みたいにぴったりとくっついて、解き方を教え始める。
どの女性にも同じ態度。
照れたり、じゃれあったり、わざと反発してみせたりという違いはあっても、誰も嫌がっていないのが不思議だ。
アドリーは今度は弦楽器の音が聞こえてくる部屋へと行ってしまう。
「一時もゆっくりされてなくてびっくりされました?それとも昔のままですか?楽器も手紙や計算と同じく手取り足取り教えてるんですよ。後ろから抱きかかえるような感じで弦の押さえ方とか。きゃあー。見ているこっちが照れてしまいます」
僕は、アドリーと触れ合いのあった女性たちを順番に指差し、最後、部屋全体に多くな円を描いた。
「はい。アドリー様はどの女性にもああやって。若い男性が女性を上手く扱うためだって分かってるですけど、皆、頑張っちゃうんですよ。ときめきに飢えているので。私たちの覚えがよくなって次の館で少しでもいい扱いが受けれるよう、アドリー様なりの工夫らしいです」
「バットゥータ様がアドリー様のあの真似をするのだけは勘弁だわ」
と顔をしかめながら他の女性が会話に加わってきた。
理由は、
「オラッ。どこが分かんねえんだ、なんで、覚えられねんだっオラってやってくるんですよ!最低でしょ、小鳥様」
「そういうの嫌いじゃないくせに~。アドリー様は可愛らしいお顔立ち。バットゥータ様は、男らしいお顔立ち。どっちもいいじゃないのう」
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