【完結】片恋鳥は初恋の夜を越える
僕は七歳のときに性器を切り取られたローマ生まれの馬鹿な「小鳥」。男の部分を失う代償を払って得たのは、小鳥の囀りのような高音で一生歌い続けられる声。当然、手術費用は莫大だ。それを返済するために僕は歌う。世界を支配しているオスマン帝国各地で昼は人前で歌声を、場合によっては夜は呼ばれた閨で嬌声を披露する。
僕がオスマン帝国の首都イスタンブールにやってきたのは、九歳のとき。西暦でいうと千五百九十五年。五十人ほどいる声楽一座で見た目も歌声も抜きん出る部分がない僕を「夜の小鳥」として指名したのはなんと時のスルタン(王)ムラト三世で、断るすべが無い僕は、黙って彼に抱かれた。
純潔を失った初めての日、夜の庭で僕はラシードという名の少年と出会う。僕よりニ歳年上の彼はスルタンの二十番目の王子だった。ラシードは僕に何があったのか察し、部屋に呼んで僕を一人にして思いっきり泣かせてくれた。
スルタンに「夜の小鳥」として呼ばれる度に、僕はその後、ラシードと密会するようになる。彼は僕の歌声を褒めてくれる兄のような、友人のような不思議な存在になりつつあった。ある晩、僕はラシードに急に口付けを迫られ、拒絶してしまう。きっと彼も男の部分を切り取った哀れな僕を蔑んでいたんだと思っていると、ラシードは「口付けたことも、お前を好きという気持も取り消す」と言ってきて……。
僕を抱くスルタンのことを僕は慕っているが、会う度に甘い気持ちを覚えるのはラシードの方。きっとこれが初恋なんだと自覚し、ラシードに会いに行ってみると、宮殿からラシードは忽然と姿を消していて……。
僕がオスマン帝国の首都イスタンブールにやってきたのは、九歳のとき。西暦でいうと千五百九十五年。五十人ほどいる声楽一座で見た目も歌声も抜きん出る部分がない僕を「夜の小鳥」として指名したのはなんと時のスルタン(王)ムラト三世で、断るすべが無い僕は、黙って彼に抱かれた。
純潔を失った初めての日、夜の庭で僕はラシードという名の少年と出会う。僕よりニ歳年上の彼はスルタンの二十番目の王子だった。ラシードは僕に何があったのか察し、部屋に呼んで僕を一人にして思いっきり泣かせてくれた。
スルタンに「夜の小鳥」として呼ばれる度に、僕はその後、ラシードと密会するようになる。彼は僕の歌声を褒めてくれる兄のような、友人のような不思議な存在になりつつあった。ある晩、僕はラシードに急に口付けを迫られ、拒絶してしまう。きっと彼も男の部分を切り取った哀れな僕を蔑んでいたんだと思っていると、ラシードは「口付けたことも、お前を好きという気持も取り消す」と言ってきて……。
僕を抱くスルタンのことを僕は慕っているが、会う度に甘い気持ちを覚えるのはラシードの方。きっとこれが初恋なんだと自覚し、ラシードに会いに行ってみると、宮殿からラシードは忽然と姿を消していて……。
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章
第八章
第九章
おまけのバットゥータ
おまけのバットゥータ おかわり
あなたにおすすめの小説
私の婚約者には、それはそれは大切な幼馴染がいる
下菊みこと
恋愛
絶対に浮気と言えるかは微妙だけど、他者から見てもこれはないわと断言できる婚約者の態度にいい加減決断をしたお話。もちろんざまぁ有り。
ロザリアの婚約者には大切な大切な幼馴染がいる。その幼馴染ばかりを優先する婚約者に、ロザリアはある決心をして証拠を固めていた。
小説家になろう様でも投稿しています。
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。
※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。
※2020-01-16より執筆開始。
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
【完結】人形と皇子
かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。
戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。
性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。
第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜
楠ノ木雫
恋愛
朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。
テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。ある日先輩方と城下町でお酒を飲みべろんべろんになって帰ってきた次の日、ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。
青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった)
妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。
そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。
その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。
私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。
誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・