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第六章
108:帰る、ちゃんと。ジンの言葉を借りるなら、ぶちのめしてくる
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袖口にも取り付けることができる。
特にボタン型は本物そっくりな精巧な出来だ。
「じゃあ。気をつけて」
甲斐大泉駅まで美馬に送ってもらった。美馬は彼方以上に緊張していた。
「大丈夫。一泊二日でここに帰ってくる。猫たちいるし。ジンの帰りも待たなくちゃならないし」
そう告げて、駅舎に入る。
かなり早い時間帯なので、学生の姿は無い。
やがて東京方面に向かう電車がやってきて、彼方はそれに乗り込んだ。
そして、ジンにメッセージを送る。
『これから東京に行く』
すぐに返信があった。
『聞いてない』
『透明ポットの中にあるお金、二万抜いた。運賃と宿泊費』
『俺にまず伝えるのはそこじゃねえだろ。よりにもよってなんで今日なんだ』
『帰る、ちゃんと。ジンの言葉を借りるなら、ぶちのめしてくる。だから、黙って見ていて。猫たちは美馬君が来てくれていて面倒見てもらっている』
このままやり取りを続けたらいつまでたっても終わりそうに無い。
彼方は携帯の電源を一旦落とした。
クソがっ!と怒り狂うジンの姿が目に浮かぶ。
ジンはジンで、変な部分で自信がない人だから、自分を遠くにやっているうちに、彼方が東京へ逃げ帰ろうとしていると思ってるかもしれない。
でもそれは、美馬と千山がフォローを入れてくれるはずだ。
今回の対決の主役は彼方だ。
堀ノ堂の前で思う存分暴れてやるつもりでいた。
朝イチの電車に乗れたお陰で、昼前に東京に付くことが出来た。
東京駅からまず向かった先は、六本木だ。
薪ストーブの部屋でテレビを見ていたら、住んでいたマンションの外観が映っていた。
自分は港区六本木。そこの六丁目に住んでいたらしい。
駅から少し歩いてそびえ立つ高層マンションを反り返る勢いで眺めた。
通行人を捕まえて「僕、ここに去年の夏まで住んでたんですよ。とある政治家に飼われてたんです。捨てられそうになったんで、その前に飛び出したんです。だから、最初、電車の乗り方も分からなくて」と言ったら、びっくりされるだろうか?それとも、こういう街だからねとあっさり流されるだろうか?
梅雨の時期で、蒸し暑い中、雨が降っていて、とにかく住んでいたマンションから離れないとと全力疾走したことを覚えている。だから、周りの景色を見る余裕なんて無くて、「こんな綺麗な街だったのか」と思わず感想を漏らしてしまった。
続いて、指定したレストランに向かった。
六本木から白金台までは地下鉄で十分。いつも運転手が運転する車で連れていかれていたので、こんなに近かったのかと驚かされる。
駅のトイレで、ノンホールピアスを付ける。
そして、首にはネックレス。
堀ノ堂は、彼方に腕時計もつけさせないほどアクセサリーを嫌がっていたので、これだけでたいそう不快だろう。彼方をアクセサリー代わりにしていたくせに、矛盾している奴だ。
レストランに入ると、ウエイターが足早にやってきて、彼方の顔を見ただけで二階へと案内してくれた。コートや旅行バックを預かると言ってくれたが断った。
すでに、堀ノ堂は来ていた。側に、武田が控えている。
普段は一階にあるグランドピアノが二階に運び込まれていた。
椅子が引かれ、彼方はコートを旅行バックの上に置いて、床に放り投げた。
向こうはかなり警戒しているようだった。
「やめなさい。そういうチンピラみたいな格好は。さっそく、ファッションまで中卒の猟師に感化されたか。見ていて恥ずかしい。それに、身につけているのにカメラを仕込んでいるな?話合いの場を用意してやったというのに、さっそく裏切り行為か」
彼方はふてくされた青年を装おって、ノンホールピアスを外す。
「ネックレスもだ」
そう言われて引きちぎるようにしてそれを取って、机に叩きつけた。
武田が堀ノ堂に耳打ちする。
「胸ポケットのは何だ?袖のは?」
「チッ」
特にボタン型は本物そっくりな精巧な出来だ。
「じゃあ。気をつけて」
甲斐大泉駅まで美馬に送ってもらった。美馬は彼方以上に緊張していた。
「大丈夫。一泊二日でここに帰ってくる。猫たちいるし。ジンの帰りも待たなくちゃならないし」
そう告げて、駅舎に入る。
かなり早い時間帯なので、学生の姿は無い。
やがて東京方面に向かう電車がやってきて、彼方はそれに乗り込んだ。
そして、ジンにメッセージを送る。
『これから東京に行く』
すぐに返信があった。
『聞いてない』
『透明ポットの中にあるお金、二万抜いた。運賃と宿泊費』
『俺にまず伝えるのはそこじゃねえだろ。よりにもよってなんで今日なんだ』
『帰る、ちゃんと。ジンの言葉を借りるなら、ぶちのめしてくる。だから、黙って見ていて。猫たちは美馬君が来てくれていて面倒見てもらっている』
このままやり取りを続けたらいつまでたっても終わりそうに無い。
彼方は携帯の電源を一旦落とした。
クソがっ!と怒り狂うジンの姿が目に浮かぶ。
ジンはジンで、変な部分で自信がない人だから、自分を遠くにやっているうちに、彼方が東京へ逃げ帰ろうとしていると思ってるかもしれない。
でもそれは、美馬と千山がフォローを入れてくれるはずだ。
今回の対決の主役は彼方だ。
堀ノ堂の前で思う存分暴れてやるつもりでいた。
朝イチの電車に乗れたお陰で、昼前に東京に付くことが出来た。
東京駅からまず向かった先は、六本木だ。
薪ストーブの部屋でテレビを見ていたら、住んでいたマンションの外観が映っていた。
自分は港区六本木。そこの六丁目に住んでいたらしい。
駅から少し歩いてそびえ立つ高層マンションを反り返る勢いで眺めた。
通行人を捕まえて「僕、ここに去年の夏まで住んでたんですよ。とある政治家に飼われてたんです。捨てられそうになったんで、その前に飛び出したんです。だから、最初、電車の乗り方も分からなくて」と言ったら、びっくりされるだろうか?それとも、こういう街だからねとあっさり流されるだろうか?
梅雨の時期で、蒸し暑い中、雨が降っていて、とにかく住んでいたマンションから離れないとと全力疾走したことを覚えている。だから、周りの景色を見る余裕なんて無くて、「こんな綺麗な街だったのか」と思わず感想を漏らしてしまった。
続いて、指定したレストランに向かった。
六本木から白金台までは地下鉄で十分。いつも運転手が運転する車で連れていかれていたので、こんなに近かったのかと驚かされる。
駅のトイレで、ノンホールピアスを付ける。
そして、首にはネックレス。
堀ノ堂は、彼方に腕時計もつけさせないほどアクセサリーを嫌がっていたので、これだけでたいそう不快だろう。彼方をアクセサリー代わりにしていたくせに、矛盾している奴だ。
レストランに入ると、ウエイターが足早にやってきて、彼方の顔を見ただけで二階へと案内してくれた。コートや旅行バックを預かると言ってくれたが断った。
すでに、堀ノ堂は来ていた。側に、武田が控えている。
普段は一階にあるグランドピアノが二階に運び込まれていた。
椅子が引かれ、彼方はコートを旅行バックの上に置いて、床に放り投げた。
向こうはかなり警戒しているようだった。
「やめなさい。そういうチンピラみたいな格好は。さっそく、ファッションまで中卒の猟師に感化されたか。見ていて恥ずかしい。それに、身につけているのにカメラを仕込んでいるな?話合いの場を用意してやったというのに、さっそく裏切り行為か」
彼方はふてくされた青年を装おって、ノンホールピアスを外す。
「ネックレスもだ」
そう言われて引きちぎるようにしてそれを取って、机に叩きつけた。
武田が堀ノ堂に耳打ちする。
「胸ポケットのは何だ?袖のは?」
「チッ」
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