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第三章
35:買った?過去形?いつ?!
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「分かってる、分かってるけど、嫌なんだ。わがままだって思われるのも分かっている。僕は今、どうやっても立場が弱いから、意見一つ言うにも怖くて、心臓がドキドキしている。でも、別の方法で返したい。ジンは返さなくていいって言うけど、僕は返したい」
「返せるようになったら、どうすんの?」
「理由なんて考えずに、抱きつく」
「くるね」
ジンは彼方の肩から手を離し、下腹部をさすった。
「勃つどころか、いきそう。だから、俺も抱きつかせて」
彼方を腕の中にしまい込む勢いで抱きしめる。
「ただでこの家にいるってのが、負担になるっていうなら、彼方に頼めそうな仕事、あるにはある」
「何?やるよ、僕」
「かなり、面倒だぞ。ガレージ一部屋潰している俺の黒魔術グッズの処分だし」
「鹿の角のこと?」
「皮もある。鹿だけじゃなく、猪や熊のも。それをさー。メルルンで売ってくれよ。俺のアカウントを貸すし、売れたら現金で出金して彼方に渡す」
「手伝わせてくれるだけでいいんだ。夜以外のことで何かしたから、ここに居てもいいだろって主張できる理由と自信が欲しい」
「こっちとしては、綺麗にしてくれるのは金払ってでも、ありがたいんだぜ?きっと、このままじゃ、来年も再来年もあのままだろうし。まず、撮影が手間だ。梱包も面倒くさい。なにより、購入者とのやり取りがめんどくせえ。値下げしねえって言ってるのに、無視してメッセージしてくるし、コンビニ払いで買っておいて支払いはグズグズしやがる」
「ジンは、そういうの苦手そうだね」
「お陰様で、俺のアカウント、超汚い」
携帯を取り出してアプリを開き、百件まで、よかった、残念だったのどちらかがの評価が表示される一覧を彼方に見せる。
「わあ、残念だったが、七件も」
「恐れ入ったか。俺のコミュ障ぶりを」
「でも、僕、携帯止まっているからメルルンのアプリをダウンロードして、ジンのアカウントで入ることができないよ。ジンの携帯をその都度借りるの?」
「俺の名義でもう一台携帯買ったから、それを渡す」
「買った?過去形?いつ?!」
「今日。大丈夫。携帯本体は投げ売りで一円だったし。月額使用料は格安SIMを使えば二千円ぐらいだろうから、気にするならメルルンの売上で払ってくれればいい。ってことで、ひとまず、この冬の仕事はガーレジの片付け兼黒魔術グッズ販売でOK?」
シャンパンの入ったグラスを差し出すと、彼方がグビグビと喉を鳴らして飲み干していく。
「承知した」
「何だよ、その言い方」
ジンは笑い出す。
「自分の携帯が持てるなら、彼方は自分のメルルンアカウント持ちたいだろうなと思って調べた。けどさ、本人確認必要なんだよ。俺も随分昔にメルルンに登録したから忘れていたけど。マイナンバーカードとか、運転免許証。あと売上金を出金したいなら、銀行口座も」
「そういう問題を放置してる……わけじゃないよ」
「分かってる。じゃあ、この話は今夜はここで終わり。食おうぜ」
ジンから追求されないことに、彼方はあからさまにほっとしていた。
---どうやっても立場が弱いから、意見一つ言うにも怖くて。
かなり、パンチの効いた言葉だ。
それでも、彼方は伝えてくれた。
触れ合うなら、金も契約も抜きがいいと言われて、それが嬉しすぎて、天井に頭をぶっつけそうだ。
彼方は以前より食欲が出てきたようで、おかずをいくつか腹に収めた。
「彼方サン。唐揚げさっき食った?唇に油べったり」
親指で拭ってやると、大人しくそのままにされている。
「一個完食。大きいやつ」
拍手してやろうと手を引きかけると、手首を取られ耳元に移動させられた。
「これ、嬉しかった。最初にしてもらえたとき。びっくりしたけど、嬉しかった」
初めて出会った夜、耳が不調だと聞かされて、とっさにした行為だった。
痛い部分に手を翳して貰えば、少しは楽になる。
「返せるようになったら、どうすんの?」
「理由なんて考えずに、抱きつく」
「くるね」
ジンは彼方の肩から手を離し、下腹部をさすった。
「勃つどころか、いきそう。だから、俺も抱きつかせて」
彼方を腕の中にしまい込む勢いで抱きしめる。
「ただでこの家にいるってのが、負担になるっていうなら、彼方に頼めそうな仕事、あるにはある」
「何?やるよ、僕」
「かなり、面倒だぞ。ガレージ一部屋潰している俺の黒魔術グッズの処分だし」
「鹿の角のこと?」
「皮もある。鹿だけじゃなく、猪や熊のも。それをさー。メルルンで売ってくれよ。俺のアカウントを貸すし、売れたら現金で出金して彼方に渡す」
「手伝わせてくれるだけでいいんだ。夜以外のことで何かしたから、ここに居てもいいだろって主張できる理由と自信が欲しい」
「こっちとしては、綺麗にしてくれるのは金払ってでも、ありがたいんだぜ?きっと、このままじゃ、来年も再来年もあのままだろうし。まず、撮影が手間だ。梱包も面倒くさい。なにより、購入者とのやり取りがめんどくせえ。値下げしねえって言ってるのに、無視してメッセージしてくるし、コンビニ払いで買っておいて支払いはグズグズしやがる」
「ジンは、そういうの苦手そうだね」
「お陰様で、俺のアカウント、超汚い」
携帯を取り出してアプリを開き、百件まで、よかった、残念だったのどちらかがの評価が表示される一覧を彼方に見せる。
「わあ、残念だったが、七件も」
「恐れ入ったか。俺のコミュ障ぶりを」
「でも、僕、携帯止まっているからメルルンのアプリをダウンロードして、ジンのアカウントで入ることができないよ。ジンの携帯をその都度借りるの?」
「俺の名義でもう一台携帯買ったから、それを渡す」
「買った?過去形?いつ?!」
「今日。大丈夫。携帯本体は投げ売りで一円だったし。月額使用料は格安SIMを使えば二千円ぐらいだろうから、気にするならメルルンの売上で払ってくれればいい。ってことで、ひとまず、この冬の仕事はガーレジの片付け兼黒魔術グッズ販売でOK?」
シャンパンの入ったグラスを差し出すと、彼方がグビグビと喉を鳴らして飲み干していく。
「承知した」
「何だよ、その言い方」
ジンは笑い出す。
「自分の携帯が持てるなら、彼方は自分のメルルンアカウント持ちたいだろうなと思って調べた。けどさ、本人確認必要なんだよ。俺も随分昔にメルルンに登録したから忘れていたけど。マイナンバーカードとか、運転免許証。あと売上金を出金したいなら、銀行口座も」
「そういう問題を放置してる……わけじゃないよ」
「分かってる。じゃあ、この話は今夜はここで終わり。食おうぜ」
ジンから追求されないことに、彼方はあからさまにほっとしていた。
---どうやっても立場が弱いから、意見一つ言うにも怖くて。
かなり、パンチの効いた言葉だ。
それでも、彼方は伝えてくれた。
触れ合うなら、金も契約も抜きがいいと言われて、それが嬉しすぎて、天井に頭をぶっつけそうだ。
彼方は以前より食欲が出てきたようで、おかずをいくつか腹に収めた。
「彼方サン。唐揚げさっき食った?唇に油べったり」
親指で拭ってやると、大人しくそのままにされている。
「一個完食。大きいやつ」
拍手してやろうと手を引きかけると、手首を取られ耳元に移動させられた。
「これ、嬉しかった。最初にしてもらえたとき。びっくりしたけど、嬉しかった」
初めて出会った夜、耳が不調だと聞かされて、とっさにした行為だった。
痛い部分に手を翳して貰えば、少しは楽になる。
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