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第七章

150:週一ぐらいで来ようか。掃除しに

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 綺麗になった時雨の台所で、手早くうどんを作って、また氷雨の元に帰っていく。
 かつおだしのいい匂いで目覚めたのか、時雨が起き上がってきたので、尚はそれを出した。
 完食まではいかなかったが、まずまず食べてくれたので安心する。
 尚の面倒を見ていた頃の時雨もこんな気分だったのだろうか。
「しばらく翠雨さんが作りに来てくれるって」
「悪いね」
「そう言っとく」
「疎雨に対してもだよ。ありがとうね」
「お、おう」
 正月もほとんど終わりかけている中、気の抜けたような正月番組を二人で観て、翠雨が持ってきてくれた氷雨の神社のみかんを食べ、時雨は風呂に。そしてそのまま布団に直行してしまったので、尚もシャワーを浴びてかつて寝巻きとして使わせてもらっていた浴衣を探し出して身につけて、棚で埃を被っていたノート型パソコンを持って時雨の隣に滑り込む。
「泊まるのは許可してない」
「翠雨さんと氷雨さんが、時雨さんが心配だから泊まってけって」
「余計なことを」
「まあ、嘘だけど」
 すると時雨がため息をつく。
「何する気?」
「不幸買取センターのメモのまとめ作業。夏に二人分しただけで全然、終わらせられてなかったから。あ、ブラウザが明るすぎて眠れない?」
「それは大丈夫だけど……」
「だけど、何?」
「労わられるのって不思議な感じ」
「時雨さんは、今まで労ってばっかりだったから、たまにはいいでしょ」
「……落ち着かない」
「俺、居着くつもりはないよ。ちゃんと冬休みが明けたら、氷雨さんちに帰る」
「え、そんなにいる気?」
「なら、明日帰るけれど?」
 しばらく沈黙があって、「冬休みっていつ終わるの?」と時雨が尚に背を向けて寝返りを打ちながら聞いてきた。
「あと五日。だったら、いていい?」
「明日も掃除をしてくれるなら」
「やった」
 キーボードを叩く尚の手が軽やかに踊る。
「早くなったね。キータッチ」
「神様学校の提出物は手書き不可なのも多いから。自然と早くなった」
「昔は、こんなの無かったのに、時代は変わるなあ。授業にちゃんとついていけてる?」
「う、うーん。歴史とか書道とかはまあなんとか。護符とか使う授業はお手上げ」
「氷雨に聞きな」
「ちゃんとその都度、聞いているし」
 それから、また時雨は黙り込んでしまったが、尚には会話の無い静けさも心地よかった。
 ある程度片付けると、眠くなってきた。
 ノート型パソコンを閉じて、時雨の隣で眠りに入ろうとする。
「進路の方は決まった?」
「あれ、寝ていると思ったのに」
「ずっと、起きてたよ」
「そういやあ、声が元気。充電切れは直った?」
「なにそれ」
「今の言い方、まるで俺」
「確かに、久しぶりに誰かと接して元気は出たみたい」
「週一ぐらいで来ようか。掃除しに」
「来てくれるのは嬉しいけれど、卒業後に望んでもいないヘルパーやハウスキーパーの道には進まないこと」
「……分かったよ。うひゃ」
 急に時雨な布団の下で尚の腕を掴んできた。続いて、太ももも。
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