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第六章

122:ずっと一緒にいられる方法が無くはないんだ

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「ここに巣食っているもの」
「俺の真の復讐って何だよ」
「さあ。僕は尚じゃないから解らない。自分で考えないと」
「冷たいんだな」
「そうだね。僕は神様だから、人間の望む優しさは提供できない」
「どこまでいってもあんたにとっては仕事か。じゃあ、キスなんてするな。添い寝なんてするな。本当にしたかどうかも分からないけれど、射精の手伝いだって」
「尚」
 時雨が静かに言った。
 そして、尚の左目と手術痕が残る左脇腹に手を当てる。
「今から、僕、ちょっとだけズルをするからね」
 二箇所から突如、温かいものが流れ込んでくる。
 自分自身が発光体にでもなった気分だった。
 心地いいのは苦手だ。次によくないことが起こりそうで怖くなる。
 でも、止めて欲しいのに拒めない。 
「あああっ」
 気持ちよさについ声が出る。
 光が止むと、随分、身体が軽くなっていた。
 例えるなら他人の身体のよう。
 時雨が息を切らしていた。
「あげるね、新しい腎臓。他の臓器への影響もよくなるはず」
「だからか」
 身体が、特に性器が滾るのだ。
 真正面には時雨。背後には翠雨と氷雨がいる中でだって、自慰に及びたい、そう思わせるほど強烈だった。
「ものすごいんだけど」
「でもね」
 時雨がしょげる。
「眼球の再生は今の僕の力では無理だった」
「時雨さん、とてもしんどそうだ」
「僕のことはいいから。これで、選べる仕事の幅は少しは広がったね」
「身体だけよくなってどうするんだよ!」
 尚は怒鳴った。
「ずっと具合が悪くても、あんたがいる世界がよかった。一人にするな。いなくなるぐらいだったら近づいて来るな!」
「寂しさもすぐ慣れる。藤井久子を刺したことは尚の神様ノートにだけ書かれていたことだから罪は償わなればならないだろうけど、刑期を全うしたら、また地道に働くんだ。尚ならできる」
 尚は、時雨の腕の中から無理やり抜け出し、蚊帳の外に出た。
「あのね」
 蚊帳越しに時雨が話しかけてくる。
「ずっと一緒にいられる方法が無くはないんだ」
「……じゃあ、それ、しろよ」
「無理だよ」
「しろって」
「それって、尚が不幸なまま、救済チャンスリストに載り続けることだもの。尚のことを大切に思っているから……できない」
「罪を償って、社会に戻ってきて、ひっそり生きるのが俺の幸せ?」
「好きな人を見つけて一緒に生きなよ。尚は本当は寂しがり屋だから」
「そういうことを簡単に言うあんたが大嫌い」
 尚は一点を見つめた。
 自分の最後が容易に想像できて笑えるぐらいだった。
 すると、時雨が焦ったように蚊帳から出てきた。
「死のうとなんてしないでね。寿命を全うして」
「あんたに指図されたくない。返せって言うなら」
 尚は左脇腹に手を当てる。
「これ、返すよ。だから、……一緒に……いて」
 時雨が尚を抱きしめてくる。
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