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恋の矢印

アネゴとダンナ

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総大くんはまるで銃口を後頭部に押し付けられたような顔になって、冷や汗を大量に噴き出し始めた。
そして背後に佇む大魔王の機嫌を損なわないよう、慎重に言葉を選びまくった。

もう、何て言うか。
総大くんは身長180センチ以上ありそうな巨漢なのに(千鶴よりもちょっとだけ高い)、今じゃモルモットのように縮こまっているわ。

‥‥可哀想に。ん?ていうか今、
『藤堂先輩』って言った?
この2人はもしかしなくとも、顔見知りだったりするのだろうか。


「ねぇ、ちょっと!2人共知り合いなの?」


私は千鶴に怯えてブルブル震え出した総大くんを助けるついでに、変態の肩をこずきながらそう言った。


「はい。‥‥ですが、知り合いというか‥‥。何と言いましょう。ねぇ?松島君。」


―ニタァー


千鶴の私に向けられた爽やかな笑顔は花火よりも早く散り、すぐにドス黒い笑みに変わった。


「へ、へい‥‥!!
オレは先輩のパシリですから!
犬ですからァッ!」


『だからその理不尽なプレッシャー攻撃を止めて下さい‥‥』と、その後ボソボソと千鶴に決して聞こえない程度に総大くんは呟いた。


「ハッ‥‥貴方に『先輩』などと言われると、鳥肌が立ちますね。
止めてもらえませんか?」


私にはその台詞が『ブチ殺すぞ、クソ野郎』と聞こえて仕方ない。


「んなぁッ!?
じ、じゃあ、兄貴と呼ばせてもらいますぁ!!」


「兄貴?
いつから僕は貴方の血縁者になったんでしょう?想像しただけでも吐き気を催します、ね!」


「ひ、ひぃ!!じゃあ、旦那で!ダンナ!いよっ、アネゴのダンナ様!!」


『ひ、ひぃ!!』は、こっちの台詞じゃあー!!!
何てこと閃くんだよ、このモップ頭ぁー!!!


「ほほう、良い響きじゃあないですか。
旦那様‥‥か。
何やら裸にエプロン的な澪の姿が目にウかッ、ブッッ!!!!」


―ドサァ‥‥!


悪の総師、変態大魔王は
『裸にエプロン』という言葉を残して床に倒れた。


「ちょ、あ、アネゴ!!
何てこと‥‥ッッ!
せんぱ‥‥じゃない、ダンナを殴るなんて!!」


「大丈夫、水月をちょっと突いただけだから。
てか、こんなサディストの心配するだなんて優しいのね、総大くんは。」


「す、水月てッ!!
‥‥って、違うッスー!
そんなことしたら、矛先がオレに向けられるじゃないッスかァ!!」


ああ、そっちの心配?
 
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