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恋は狂気

頼むから帰ってくれ!

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「そう!その通り!何でもいいから早く出ていっ……」

「僕の愛が不足していた……!
澪が地上最強のツンデレだということは、僕が誰よりも理解しているのに。
なんたる失態……」


千鶴は私の言葉を遮り、
『嗚呼!』と嘆きながら顔を両手で覆い隠してその場に崩れ落ちた。


「はぁ?ちょっと、誰がツンデレよ!」


「いいんですよ、澪。
僕の前でそんなに恥ずかしがらなくったって。
僕らの仲じゃないですか?
……けれど僕は屈しませんよ。
障害を乗り越えてこそ、愛は泉のように深まるというもの。
さあ!飛び込んでくるのです、
僕の胸に!」


私は千鶴のあまりの阿呆さに面を食らい、口をポカンと開けてしまった。

そして今更ながらに、ある事実に気が付いた。

この藤堂千鶴という男に、いくら常識を訴えても無駄だということだ。
この男は、全ての物事に対して都合の良い解釈をしているのだ。恐らく何を言っても、無駄であろう。


自意識過剰というか、
誇大妄想というか……。



とりあえず


『変態』。



私は諦めに近い溜め息をついた。
そして千鶴の内面に不釣り合いなその綺麗な顔を見つめながら、口を開く。


「……ねぇ、何でもいいから今日はもう帰ってよ。お願い」


そう、落ち着いて冷静に対処すれば、まだ道はあるはずだわ。

こんなに私に夢中だと言うのなら、頼み事くらいは聞いてくれるわよね?



「……分かりました。夜も更けてきましたしね。
澪が咲き乱れる薔薇の花のように心開かせる日が来るまで、僕はめげません……!
今日は楽しかったですよ」


ニコリと千鶴は爽やかに笑った。
そして不覚にも、その笑顔に私はときめいてしまったのだ。


「べ、別に、めげてくれた方が助かるけど……。
分かったんならさっさと出て行ってよね」


私は複雑な感情に目を反らすように、千鶴の顔から目を反らした。


「はい……。
それじゃあ、おやすみのキスを……」



ーードスッ!



「いいから本当にさっさと出て行け……!」


「グフッ……、分かりました……。
おやすみなさい、澪」


千鶴は私に蹴られた腹部を押さえながら、玄関から出て行った。

 
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