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大事をとって、1日学園をお休みした。
若いから体力があるのか、1日ゆっくり休んだだけで体調は復活したみたいだ。
さあ、今日からしっかり頑張るぞ!
と意気込んだはいいものの、朝ごはん中のお母様の発言に頭がショートした。
私の頭がまともに動かない状態でも、優秀な侍女たちの手に掛かれば準備は進められるらしい。
「ほら。いつまで呆けているのですか。きちんと準備をしなくては、もうすぐセオドア様がいらっしゃるお時間ですよ。」
はっとなり、急いで自分の服装を確認する。
そう、お母様は笑顔でこう言ったのだ。
"今日から毎日セオドア様がレイチェルの送り迎えをして下さることになったわ。いつもレイチェルが学園に向かう時間にあわせて来て下さるようだからきちんと準備をするように。"
その宣言に私とお父様はフォークを落とした。
聞いてない、約束が、どういう事だとお父様が詰め寄っていたが、"私がお願いしたのです。最近は落ち着いているもののレイチェルは元々体があまり強くないのだから1人より余程安心だわ何か問題がありまして?"と笑顔であっさり切り返されていた。
まぁ、正直それどころではない。
いや、そもそも忙しいお方になんてお願いを!
申し訳なさにしょんぼりとしていると、セオドア様の到着をシリウスが伝えてくれた。
お父様は執務室に引きこもっているらしい。
お母様に行ってまいりますと告げ、セオドア様の元へと急ぐ。
「おはようございます、セオドア様。」
「あぁ、おはよう。レイチェル、体調は大丈夫だろうか?」
「その節は大変ご迷惑をおかけ致しました。その上、母が送り迎えなどとんでもないお願いをしてしまったようで、何とお詫びすれば良いのか…」
「ん?いや、私としては役得だから気にしなくていい。有難く送り迎えをさせて貰うから、何か予定がある時は遠慮なく教えてくれ。」
あまりに優しい声で伝えられた内容に、顔を赤くする。
なんて優しい人なんだろう。
ありがとうございますと伝え、学園までの道のりを静かに過ごす。
「…いつもは、移動中何をしている?」
「え?えと、読書をしている事が多いでしょうか。帰りは御者に学園であったことを聞いてもらったりもしますが、朝は物語を読んでいることが多いですね。」
まぁ、今日はセオドア様に送って貰っているので本を持ってきてはいないが。
「そうか、では明日からは本を持ち込むといい。」
「あ、はい。」
ただでさえ毎日送って貰っているのだ、朝までご一緒するのはやはりご迷惑なのだろう。
手元に何も無いと会話が必要だろうし、これは失敗した。何か持ってくるべきだったか…
「…あまり負担になるのは本意じゃないんだ。君が過ごしやすいようにして欲しい。」
続いた言葉に息が詰まる。
本当にお優しい方だ。
氷のイメージとはかけ離れた暖かな優しさに思わず笑みがこぼれる。
「はい。ありがとうございます。」
「今日の午後は特に予定はないだろうか?なければいつもの時間に迎えに行く。」
「はい!特に予定はございません。あ、でも、わざわざ教室にお越しいただくのは申し訳ないので、噴水広場でお待ちしておりますよ?」
「いや、教室の方が安全だろう。迎えに行くというのは良い牽制にもなると最近気がついたのだ、このままで良い。」
迎えに行くまでちゃんと教室にいるように、と約束をさせられてからエスコートをされて馬車を離れる。校舎のところでお礼を伝えようとするも手が離されることはなく、首を傾げる。
「…教室まで送ろう。」
…朝から供給過多で、死んでしまいそうです。
若いから体力があるのか、1日ゆっくり休んだだけで体調は復活したみたいだ。
さあ、今日からしっかり頑張るぞ!
と意気込んだはいいものの、朝ごはん中のお母様の発言に頭がショートした。
私の頭がまともに動かない状態でも、優秀な侍女たちの手に掛かれば準備は進められるらしい。
「ほら。いつまで呆けているのですか。きちんと準備をしなくては、もうすぐセオドア様がいらっしゃるお時間ですよ。」
はっとなり、急いで自分の服装を確認する。
そう、お母様は笑顔でこう言ったのだ。
"今日から毎日セオドア様がレイチェルの送り迎えをして下さることになったわ。いつもレイチェルが学園に向かう時間にあわせて来て下さるようだからきちんと準備をするように。"
その宣言に私とお父様はフォークを落とした。
聞いてない、約束が、どういう事だとお父様が詰め寄っていたが、"私がお願いしたのです。最近は落ち着いているもののレイチェルは元々体があまり強くないのだから1人より余程安心だわ何か問題がありまして?"と笑顔であっさり切り返されていた。
まぁ、正直それどころではない。
いや、そもそも忙しいお方になんてお願いを!
申し訳なさにしょんぼりとしていると、セオドア様の到着をシリウスが伝えてくれた。
お父様は執務室に引きこもっているらしい。
お母様に行ってまいりますと告げ、セオドア様の元へと急ぐ。
「おはようございます、セオドア様。」
「あぁ、おはよう。レイチェル、体調は大丈夫だろうか?」
「その節は大変ご迷惑をおかけ致しました。その上、母が送り迎えなどとんでもないお願いをしてしまったようで、何とお詫びすれば良いのか…」
「ん?いや、私としては役得だから気にしなくていい。有難く送り迎えをさせて貰うから、何か予定がある時は遠慮なく教えてくれ。」
あまりに優しい声で伝えられた内容に、顔を赤くする。
なんて優しい人なんだろう。
ありがとうございますと伝え、学園までの道のりを静かに過ごす。
「…いつもは、移動中何をしている?」
「え?えと、読書をしている事が多いでしょうか。帰りは御者に学園であったことを聞いてもらったりもしますが、朝は物語を読んでいることが多いですね。」
まぁ、今日はセオドア様に送って貰っているので本を持ってきてはいないが。
「そうか、では明日からは本を持ち込むといい。」
「あ、はい。」
ただでさえ毎日送って貰っているのだ、朝までご一緒するのはやはりご迷惑なのだろう。
手元に何も無いと会話が必要だろうし、これは失敗した。何か持ってくるべきだったか…
「…あまり負担になるのは本意じゃないんだ。君が過ごしやすいようにして欲しい。」
続いた言葉に息が詰まる。
本当にお優しい方だ。
氷のイメージとはかけ離れた暖かな優しさに思わず笑みがこぼれる。
「はい。ありがとうございます。」
「今日の午後は特に予定はないだろうか?なければいつもの時間に迎えに行く。」
「はい!特に予定はございません。あ、でも、わざわざ教室にお越しいただくのは申し訳ないので、噴水広場でお待ちしておりますよ?」
「いや、教室の方が安全だろう。迎えに行くというのは良い牽制にもなると最近気がついたのだ、このままで良い。」
迎えに行くまでちゃんと教室にいるように、と約束をさせられてからエスコートをされて馬車を離れる。校舎のところでお礼を伝えようとするも手が離されることはなく、首を傾げる。
「…教室まで送ろう。」
…朝から供給過多で、死んでしまいそうです。
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