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「…んっ」

ふと光を感じ、意識を浮上させる。

「!レイチェル様、お加減はいかがですか?」

侍女のサラが声をかけてくる。
体を起こすのを支え、水の入ったコップを渡してくれる。

「奥様にお声がけしてきますので、お待ちください。」

パタパタと走り去るサラを見送りながら、記憶を掘り起こす。
えーと?

バタンと言う音と共にノックもなく扉が開け放たれ、お母様が駆け寄ってくる。
「あぁ、レイチェル。よかった…気分は?痛みや、違和感はない?」

「あれ?私…?」

「帰宅中に倒れたみたいなの。家のすぐそこだったからそのままセオドア様が運んで下さったわ。今お医者様を呼びに行ってくださってるからもう少し待っていてね。」

あ…思い出した。
推しの供給過多で意識が飛んだんだった…

え、お医者様って?なんて説明するの?
いや、ごめんなさい、私元気なんです!!!
あまりの恥ずかしさに顔に熱が集まり、涙で目が潤んだ。

「熱があるのね…大丈夫よ。セオドア様が直ぐにお医者様を連れて戻ってきてくださいますからね。」

「…お母様、すみません、あの、体調は大丈夫なんです。だから、お医者様なんてそんな!」

「奥様、失礼致します。お医者様とセオドア様が到着致しました。」

「ご案内してちょうだい。セオドア様は客間にお通しして。」

あぁ…間に合わなかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

大人しく診察を受け、出た結果は
不眠による疲労との事。
熱は無いが軽い風邪の症状も出ているから、薬を飲んで大人しく寝るようにとの指示でした。

不眠になってることすら気づいてなかったけれど恥ずかしい理由は暴露せずに済んだから良しとしましょう。

診察結果が出るまでセオドア様もお待ちくださり「大事がないならよかった。ゆっくり休んでくれ」とお母様に言伝だけ頼んで帰って行ったらしい。

部屋まで運んでくださったのもセオドア様ときき、意識がなかった事を大いに悔やんだ。
推しのお姫様抱っこ…!!

とにかく今度色々とお礼をしなくては…
次のお休みはお茶会もあるし、何か準備をした方がいいかしら。

うーん、とぐるぐると考えていると、くすりと小さな笑い声が聞こえた。

「…お母様?」
「セオドア様が一緒でよかったわね。移動中の馬車の中でもずっと支えていてくれたみたいよ?お医者の手配も直ぐに済ませて下さって。運ぶのもシリウスにって伝えたのだけれど"彼女に触れる男は自分だけだと嬉しい、任せて頂けないだろうか"なんて言われて思わずお任せしてしまったわ!」

仲良く出来ているようでよかった。とにこにこと微笑まれる。
お母様の後ろでは侍従のシリウスも頷いている。

「…セオドア様には今度きちんと御礼を致します。」

えぇ、そうしてちょうだい。ゆっくり休むのよ。と頭を軽く撫でられベッドに寝るように促される。

味方を増やすためのご招待のお手紙とか、書こうと思ってたんだけどなぁ…
とはいえ、ベッドに沈み込み目を閉じるとあっという間に意識は遠のいていく。
お医者の見立て通り疲れてはいるようだ。

今日はちょっと色々ありすぎて疲れたわ。
動き出すのは明日からにしましょう。
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