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15.たまには落ち込むこともある
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水、出せた!の感動を残したまま、足取りもかるく自室へと戻る。
しかしお気に入りのふかふかのソファーに腰掛けると、どっと体の重みを感じた。
「思っていたより疲れているみたいね…」
「初めて魔術をお使いになったのですもの。お疲れが出るのも当然かと。今日はお風呂が終わりましたらしっかりマッサージを致しましょうね」
温かな紅茶を目の前に置かれた。
いつの間にか現れたペルルが準備をしてくれたようだ。
優しく微笑みながら素敵な提案をしてくれる彼女に満面の笑みで感謝を伝える。
ペルルのマッサージ、ほんとに素晴らしいのよ。
王宮の侍女様は流石だわ。
「明日も魔術のお勉強の予定でしたよね?」
「はい。午前中に魔術のお勉強を、午後は特に予定がありませんが何かございますでしょうか。」
ふむ。特にやりたい事がある訳でもないのだけれど…文字学習のためにも本でも読もうかしら?と、とりあえず読書の予定だけ伝え簡単な本の用意をお願いする。
色々な事が凄い勢いで通り過ぎて行く日々だった。
こうしてゆっくり予定を考えるというのも久しぶりかもしれない。
紅茶を口に含みそっと瞼を閉じる。
深いため息と共に思考が沈んで行くのを感じる。
この世界に馴染むために学ぶべき事は沢山あるけれど、今後どうやって生きていくかを決めなければ学ぶ内容も定まらない。
王宮にお世話になるなら歴史やマナーは細かく知っておくべきだろうし、恐らく多少なり貴族の派閥やきな臭いメンバー位は把握しておかねば身を滅ぼすかもしれない。
市井に行くとしたら、仕事を得ることは必須だし多少なりの護身術位は必要になるだろう。商人や職人として生きるならそれ相応の知識を身につける必要があるし、単純に売り子になるとしてもよりしっかりとした一般常識を学ばなければ受け入れて貰えないかもしれない。
チートな能力がある訳ではない。
そうなるといかに効率よく知識を得て早く生活の基盤を整えるかが重要なわけで…
なおかつ、奏ちゃんをある程度守らなければと思うと、与えられる情報を精査するだけの知識はないといけない。
しかし今私が頼れる先は王宮のみとなると与えられる情報もどれくらい信用すべきか悩ましい…
現状、これ以上ないくらいには良い待遇を受けていると思う。
ペルルの事は頼りにしているし、団長職のクラージュさんがこまめに護衛に来てくれているのも、サフィールさんに魔術を教わっているのも高待遇だろう。
皆好意的に接してくれているし、生きづらさはないがどことなく信用しきれない自分が居て申し訳ない気持ちもある。
でも、人の人生を一方的に変える力がある人達が怖い。この思いはどうしても心の底に残ってしまうのだ。
今はまだ私はこの世界を理解出来ていない、赤子同然なわけで。でも赤子と違い先を想像出来てしまう。
それが見当違いな妄想だとしても、ふとした瞬間に飢えの苦しみや孤独の虚しさや死の恐怖を考えてしまう。
今は、高待遇でも何かの拍子に急に放り出されるかもしれない。
来た時のようにふと全然違う世界に飛ばされるかもしれない。
剣や魔術のある世界なのだから、急にその矛先が自分になるかもしれない。
今回だって私を消してしまえば全てが丸く収まると考える人がいてもおかしくない。
何せ私には何も無いのだから。
しかしお気に入りのふかふかのソファーに腰掛けると、どっと体の重みを感じた。
「思っていたより疲れているみたいね…」
「初めて魔術をお使いになったのですもの。お疲れが出るのも当然かと。今日はお風呂が終わりましたらしっかりマッサージを致しましょうね」
温かな紅茶を目の前に置かれた。
いつの間にか現れたペルルが準備をしてくれたようだ。
優しく微笑みながら素敵な提案をしてくれる彼女に満面の笑みで感謝を伝える。
ペルルのマッサージ、ほんとに素晴らしいのよ。
王宮の侍女様は流石だわ。
「明日も魔術のお勉強の予定でしたよね?」
「はい。午前中に魔術のお勉強を、午後は特に予定がありませんが何かございますでしょうか。」
ふむ。特にやりたい事がある訳でもないのだけれど…文字学習のためにも本でも読もうかしら?と、とりあえず読書の予定だけ伝え簡単な本の用意をお願いする。
色々な事が凄い勢いで通り過ぎて行く日々だった。
こうしてゆっくり予定を考えるというのも久しぶりかもしれない。
紅茶を口に含みそっと瞼を閉じる。
深いため息と共に思考が沈んで行くのを感じる。
この世界に馴染むために学ぶべき事は沢山あるけれど、今後どうやって生きていくかを決めなければ学ぶ内容も定まらない。
王宮にお世話になるなら歴史やマナーは細かく知っておくべきだろうし、恐らく多少なり貴族の派閥やきな臭いメンバー位は把握しておかねば身を滅ぼすかもしれない。
市井に行くとしたら、仕事を得ることは必須だし多少なりの護身術位は必要になるだろう。商人や職人として生きるならそれ相応の知識を身につける必要があるし、単純に売り子になるとしてもよりしっかりとした一般常識を学ばなければ受け入れて貰えないかもしれない。
チートな能力がある訳ではない。
そうなるといかに効率よく知識を得て早く生活の基盤を整えるかが重要なわけで…
なおかつ、奏ちゃんをある程度守らなければと思うと、与えられる情報を精査するだけの知識はないといけない。
しかし今私が頼れる先は王宮のみとなると与えられる情報もどれくらい信用すべきか悩ましい…
現状、これ以上ないくらいには良い待遇を受けていると思う。
ペルルの事は頼りにしているし、団長職のクラージュさんがこまめに護衛に来てくれているのも、サフィールさんに魔術を教わっているのも高待遇だろう。
皆好意的に接してくれているし、生きづらさはないがどことなく信用しきれない自分が居て申し訳ない気持ちもある。
でも、人の人生を一方的に変える力がある人達が怖い。この思いはどうしても心の底に残ってしまうのだ。
今はまだ私はこの世界を理解出来ていない、赤子同然なわけで。でも赤子と違い先を想像出来てしまう。
それが見当違いな妄想だとしても、ふとした瞬間に飢えの苦しみや孤独の虚しさや死の恐怖を考えてしまう。
今は、高待遇でも何かの拍子に急に放り出されるかもしれない。
来た時のようにふと全然違う世界に飛ばされるかもしれない。
剣や魔術のある世界なのだから、急にその矛先が自分になるかもしれない。
今回だって私を消してしまえば全てが丸く収まると考える人がいてもおかしくない。
何せ私には何も無いのだから。
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