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第219話 呼び出し

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 リラと一緒に、二人が出てくるまで待つことにした。それよりも先にやってきたのは国王陛下と王妃様だった。

「無事であったか」

 膝をつき、手短に現状を説明する。お二人が無事ということは、あの闇に飲まれたものは生きていると知れた。だが、他に誰も連れていないことから、いい状況でないことも理解できる。

「魔力の多いものは目が覚め始めていましたが、ほとんどの者はまだ眠ったままです」

 王妃様の言葉で納得する。お二人はかなり魔力量が多い。ソレイユ公爵である父も既に目が覚めていたため、広間に関しては任してきたという。両親も無事であるのは朗報だ。

「……二人はまだ出てこないのか」

「はい」

 純白な扉には、細かい飾りが施されている。美しいそれには、防護の魔法も施されているだろう。飾りに魔法陣が隠されている。その一部だけが見えていた。

 暗闇を照らすリラの魔法の中、マリウス様の指示に従って進んだので、王宮のどこにあるのかもわからない。

「……中から何か聞こえませんでしたか」

 リラが、ドアの方をじっと見て問いかける。

 耳を澄ませると、マリウス様がリリアン様を呼ぶ声が聞こえた。

「他のものはここで待て」

 いうと、国王陛下がドアを押し中へ入る。ドアが開くと、マリウス様の泣き叫ぶような声がはっきりと聞こえた。

 ドアが閉まり、声が遠くなる。何か異常事態があったのは確かだ。もどかしさを感じる中、王妃様が口を開く。

「……リラ・ライラック」

 そちらを見ると、王妃様が静かに口を開き続ける。

「リリアンを助けて」

 いつものように、顔にベールをかけた王妃殿下の顔ははっきりと見れない。だが、ゆっくりとドアを指し示す腕の動きは、まるで誰かに操られているような不自然さがあった。

「……ええ」

 王妃様に対する返事としてはあまりにもラフな口調で、リラが答えると、ドアを開けて入って行ってしまう。

「どういうことですか、王妃殿下」

 振り返ると、王妃様がその場で崩れるように倒れていた。

 嫌な気配を感じて、下手をすれば極刑に処されると分かりながら、リラを追っていた。

 中は真っ白い空間で、池の様に大きな浴槽と、その中で叫ぶマリウス様がいた。黒く濁った水の中からコインでも探しているようだった。

「リラ」

 止める間もなく、リラがその浴槽に足を踏み入れていた。

 黒く濁った水が、リラの通る場所から綺麗に澄んでいく。

「リラ……何をしている。ここは、聖女と王族にしか入れない場だぞ」

 マリウス殿下が止めようとしたが、まるで誰かに足でも掴まれたように、リラへ近づくことができていない。

 対照的にリラは水すらないようにまっすぐに進んでいく。

 そして、頭の先まで沈んでしまった。

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