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第175話 お掃除魔法
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俺を助けたことで、リラが死ぬ可能性が出ていた。
リラが黒くなった石を無害にできる前提で研究しようと考えていた。だが、リラが浄化した時にも同じ現象が起きている場合、膨大過ぎる魔力量を制御する魔法特性が下がり、魔力暴走で死ぬ可能性がある。
「……なるほど、半分ほどわかりました」
真面目な顔でリラが頷いた。
「魔力量が増えたように感じたのは、相対的に魔法特性が下がった可能性があるから、と」
今回持ってきたのは黒く変わる前の石をいくつかだけだ。だが、鉱山に埋まっていた石は計り知れない。それこそ、死んでもおかしくない状況かも知れない。
「……多分、大丈夫ですよ」
リラがあっさりとそう言った。
「なんというか、あの石が色を変える原理はわかりませんが、特に体調に変化はありませんでした。普段からこう……」
言うと、リラが大きめの水球を作り出し、それを部屋全体に薄く広げた。それにデージーが目を丸くしている。
「ちょっと汚れている部屋を綺麗にする、それと似た感じでしかないので」
床や壁、天井にまで伸びていた水がリラのすぐ近くに戻り一つの水球になる。さっきは綺麗な水だったが、今はくすんでゴミが混じっているのがわかる。
「すっ、すす、凄い。え、も、もういっかい、もう一回見せてくれないかい!? 大丈夫、変なことはしないから、ぐふふ」
顔も生まれよく、頭脳明晰だが頭がおかしい従兄がリラに気味の悪い笑みを浮かべながらにじり寄る。リラがそれに引いている。
「……落ち着いてください。リラ、ルビアナ国での崩落事故の後など、体に負荷がかかるような感じもないですか?」
デージーの首根っこを文字通り掴んで止める。
リラも一時昏睡状態だったと聞いていた。
「まあ、調べたいというのでしたら付き合いますが、昔は病弱だったようですが、すっかり健康体になりました」
「……」
「そのように心配な顔をしないでください。それに、心配する前にこの水、どこかへ捨てたいです」
リラが自分で作った掃除後の水を見て微妙な顔をする。
「窓を」
「待ってくれ、是非、バケツに、ああ、でも水が消えてしまうか」
窓を開けて外にと思ったが、ゴミ箱から捨てた紙束を引っ張り出してデージーが言う。
「こんな汚れた水が欲しいのですか?」
「欲しいデス!」
きりっとした顔で言う。たまに、その勢いが羨ましい。
「………お手間でなければ、差し上げてください」
「流石に防水でないと、流れるので……」
「すぐ、すぐに持ってくるからっ」
駆けていくのを見送り、ため息がでる。
「本当に、本当にすみません、変な従兄で」
女と魔法が絡まなければ比較的まともだが、どちらも絡まない状況が基本ないひとだ。
「何かに、没頭できるのは羨ましいです。それに……レオンの意外な一面も見れましたし。あの本、借りて行ってもいいでしょうか」
可愛らしさにぐっと胸が痛む。
「……あれは、あまり出来が良くないですし、初心者向けではないです。先に初心者向けの魔法陣の本をお貸しします」
「レオンが書いたものに興味がありますが……先に基礎から勉強しないと理解は難しいですか……」
少し残念そうに言われる。
本当に恥ずかしい出来なので、見せたくなかった。基礎から学べば、俺が書いたあれの質の低さがばれるだろうが、仕方ない。
「どちらかと言うと、飛行船などの機械を使った魔法の活用が専門で、魔法陣は本当にまだまだのレベルです。というか、あまり向いていませんから」
「私も、何かしら得意分野を作るべきでしょうか……」
「無理強いはしませんが、リラの魔法はかなり稀有なものですから、それらの研究をされるのがいいかと」
ビオラ母上の趣味と実益を兼ねて始まった事業だが、今では公爵家の中核を担っている。ここから生まれた研究結果は莫大な利益となっている。
「水を固定する方法が定着すれば、水不足に一役買うでしょう」
「水を、固定、だとっ」
戻ってきたデージーがバケツを取り落とした。
リラが黒くなった石を無害にできる前提で研究しようと考えていた。だが、リラが浄化した時にも同じ現象が起きている場合、膨大過ぎる魔力量を制御する魔法特性が下がり、魔力暴走で死ぬ可能性がある。
「……なるほど、半分ほどわかりました」
真面目な顔でリラが頷いた。
「魔力量が増えたように感じたのは、相対的に魔法特性が下がった可能性があるから、と」
今回持ってきたのは黒く変わる前の石をいくつかだけだ。だが、鉱山に埋まっていた石は計り知れない。それこそ、死んでもおかしくない状況かも知れない。
「……多分、大丈夫ですよ」
リラがあっさりとそう言った。
「なんというか、あの石が色を変える原理はわかりませんが、特に体調に変化はありませんでした。普段からこう……」
言うと、リラが大きめの水球を作り出し、それを部屋全体に薄く広げた。それにデージーが目を丸くしている。
「ちょっと汚れている部屋を綺麗にする、それと似た感じでしかないので」
床や壁、天井にまで伸びていた水がリラのすぐ近くに戻り一つの水球になる。さっきは綺麗な水だったが、今はくすんでゴミが混じっているのがわかる。
「すっ、すす、凄い。え、も、もういっかい、もう一回見せてくれないかい!? 大丈夫、変なことはしないから、ぐふふ」
顔も生まれよく、頭脳明晰だが頭がおかしい従兄がリラに気味の悪い笑みを浮かべながらにじり寄る。リラがそれに引いている。
「……落ち着いてください。リラ、ルビアナ国での崩落事故の後など、体に負荷がかかるような感じもないですか?」
デージーの首根っこを文字通り掴んで止める。
リラも一時昏睡状態だったと聞いていた。
「まあ、調べたいというのでしたら付き合いますが、昔は病弱だったようですが、すっかり健康体になりました」
「……」
「そのように心配な顔をしないでください。それに、心配する前にこの水、どこかへ捨てたいです」
リラが自分で作った掃除後の水を見て微妙な顔をする。
「窓を」
「待ってくれ、是非、バケツに、ああ、でも水が消えてしまうか」
窓を開けて外にと思ったが、ゴミ箱から捨てた紙束を引っ張り出してデージーが言う。
「こんな汚れた水が欲しいのですか?」
「欲しいデス!」
きりっとした顔で言う。たまに、その勢いが羨ましい。
「………お手間でなければ、差し上げてください」
「流石に防水でないと、流れるので……」
「すぐ、すぐに持ってくるからっ」
駆けていくのを見送り、ため息がでる。
「本当に、本当にすみません、変な従兄で」
女と魔法が絡まなければ比較的まともだが、どちらも絡まない状況が基本ないひとだ。
「何かに、没頭できるのは羨ましいです。それに……レオンの意外な一面も見れましたし。あの本、借りて行ってもいいでしょうか」
可愛らしさにぐっと胸が痛む。
「……あれは、あまり出来が良くないですし、初心者向けではないです。先に初心者向けの魔法陣の本をお貸しします」
「レオンが書いたものに興味がありますが……先に基礎から勉強しないと理解は難しいですか……」
少し残念そうに言われる。
本当に恥ずかしい出来なので、見せたくなかった。基礎から学べば、俺が書いたあれの質の低さがばれるだろうが、仕方ない。
「どちらかと言うと、飛行船などの機械を使った魔法の活用が専門で、魔法陣は本当にまだまだのレベルです。というか、あまり向いていませんから」
「私も、何かしら得意分野を作るべきでしょうか……」
「無理強いはしませんが、リラの魔法はかなり稀有なものですから、それらの研究をされるのがいいかと」
ビオラ母上の趣味と実益を兼ねて始まった事業だが、今では公爵家の中核を担っている。ここから生まれた研究結果は莫大な利益となっている。
「水を固定する方法が定着すれば、水不足に一役買うでしょう」
「水を、固定、だとっ」
戻ってきたデージーがバケツを取り落とした。
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