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第174話 測定結果
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戻ってはきたが、レオン達はかなり真剣に話し込んでいる。
暇だが、女子たちの追求は避けたくて魔力測定待ちで読んでいた本の続きを読んでみる。
ふと、著者の名前を見ると、瞬きをして、もう一度確認してしまった。
レオン・ソレイユと書かれている。発行年を見ると、五年ほど前のものだ。
「……」
以前、レオンが研究畑の人間だとは言っていたが、領地管理に王太子の手伝い、その上研究までしていたというのかと言葉を失った。
私の中でのレオンの評価は、仕事もできるので優秀ではあった。だが、どこか平凡の域を脱していなかったのだ。
いや、ソレイユ家の箔を付けるために誰かに書かせたのかもしれない。だが、そういう不正をレオンがするかと言われれば、原案を出して後は専門家に書かせるくらいはするかもしれないが、全てを書かせるとは思えなかった。
「長い間お待たせしてすみません」
戻ってきたレオンを見上げる。
「この本……レオン……さんが?」
なんとなく、呼び捨てにするのがはばかられてしまった。
「ああ、どの本を選んだのかとは思っていましたが、こんなのが紛れていましたか? お恥ずかしい。この本をデージー兄さんに散々馬鹿にされたのであまり人には見せたくないのですが」
「私では、理解が及びませんでしたが、凄いと思います」
「そんな大したものでは……。俺は自分の魔力や魔法に対して驕っていると言われ、半ば無理やりさせられた課題のようなものです。今ならばもう少しまともなものはできるかと思いますが、やはり魔法陣は苦手です。以前の精神に関与する魔法も、私では理論を理解するのがやっとで」
レオンが苦笑いを漏らす。
「そうですよ。レオンは自分に魔力が多いからと鍛錬しかしない馬鹿なので、少し勉強をさせたらこんな穴だらけの物を出して。はぁ、ラナンキュラス様の息子として恥を知ればいい」
やってきた従兄が罵るが、レオンはそんなのをここに置いとかないで欲しいと愚痴を返すだけだった。
「それで、何か分かりましたか?」
話題を変えたほうがよさそうだと聞いてみる。
「まだ基礎的な解析を始めたばかりだから何とも言えないけれど、リラ嬢、お体に障りはありませんか?」
「特に問題はありませんが?」
何か悪いところでも見つかったのか……と心配になる。
「昼食前に、いくつか追加の測定をさせてもらえますか?」
「……はい」
なんとも微妙な雰囲気だ。
その後、魔法陣の施された寝台に寝て、手足や体に何やら器具を付けられ、色々と検査された。その度に二人して難しそうな顔をしている。
器具はさっきの女性研究員の年配の人の方がつけ外しを担当してくれたが、それ以外では人を入れないようになっていた。
「あの……どこか悪いんでしょうか?」
流石に不安になって問いかける。
「ああ、そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。ただ、少し魔力が多くて驚いただけです」
いつものように優しく言われたが、何か隠しているように感じてしまう。
「下手に隠されるよりも、はっきりと言われた方がいいのですが?」
「……」
困ったような顔をされた後、別室へ行きましょうと言われた。
職員用の休憩室とは違う、少し散らかった執務室に案内される。ついて来ている彼の従兄の執務室だろうと思った。
「私から説明しようか」
そう言うと、従兄が続ける。
「魔力量と魔法特性が魔法を使う力量を計るものになっている。リラ嬢は、どちらもこれまでの計測での最高値を出している。魔力量が多い場合、魔力特性の数値が低いほど魔力暴走の可能性が高く、炎魔法では最悪それだけで処分対象になる」
他の魔法も魔力暴走は危険視されるが、レオンの炎属性だけは特別に危険視されているのは知っている。
「魔法特性は、ある程度は鍛えることができるとはされているが、伸びしろには個々の限界があると言われている。なので、魔力量を増やしすぎることは危険だと言われている」
「はい……」
「リラ嬢は魔力量が最近増えたと言っていたそうだけど、それは……あの魔法石に触れてからじゃないかい?」
「さあ……どうでしょう。ただ、あれに触れても、魔力が減った感じはなかったです」
「あれを黒くなるまで使ったものたちは、普段の魔力量よりも消費は少なかったようだが、かなり精神を酷使したようだ。計測すると、魔力量は使用した魔法に比べて減少が少なかったようだが、魔法特性が著しく下がっていた」
難しい話になってきて、首を傾げた。
「私も、魔法特性が下がっている可能性があるということですか?」
「いや、少なくともどちらの数値にも大きな変化はないようだった。まあ、簡易的な検査だけれど」
確かに、二度目の検査は一度目ほど長くなかった。
「……不確定が多すぎるが、一度精密検査をした方がいいだろう。魔法特性が高いから生きているが、それが下がればいつ魔力暴走を起こして死んでも不思議がない。例の石が魔力よりも魔法特性を下げるならば、嘔吐や気分不良の症状も頷ける」
私は理解できず頷けない状況だ。
暇だが、女子たちの追求は避けたくて魔力測定待ちで読んでいた本の続きを読んでみる。
ふと、著者の名前を見ると、瞬きをして、もう一度確認してしまった。
レオン・ソレイユと書かれている。発行年を見ると、五年ほど前のものだ。
「……」
以前、レオンが研究畑の人間だとは言っていたが、領地管理に王太子の手伝い、その上研究までしていたというのかと言葉を失った。
私の中でのレオンの評価は、仕事もできるので優秀ではあった。だが、どこか平凡の域を脱していなかったのだ。
いや、ソレイユ家の箔を付けるために誰かに書かせたのかもしれない。だが、そういう不正をレオンがするかと言われれば、原案を出して後は専門家に書かせるくらいはするかもしれないが、全てを書かせるとは思えなかった。
「長い間お待たせしてすみません」
戻ってきたレオンを見上げる。
「この本……レオン……さんが?」
なんとなく、呼び捨てにするのがはばかられてしまった。
「ああ、どの本を選んだのかとは思っていましたが、こんなのが紛れていましたか? お恥ずかしい。この本をデージー兄さんに散々馬鹿にされたのであまり人には見せたくないのですが」
「私では、理解が及びませんでしたが、凄いと思います」
「そんな大したものでは……。俺は自分の魔力や魔法に対して驕っていると言われ、半ば無理やりさせられた課題のようなものです。今ならばもう少しまともなものはできるかと思いますが、やはり魔法陣は苦手です。以前の精神に関与する魔法も、私では理論を理解するのがやっとで」
レオンが苦笑いを漏らす。
「そうですよ。レオンは自分に魔力が多いからと鍛錬しかしない馬鹿なので、少し勉強をさせたらこんな穴だらけの物を出して。はぁ、ラナンキュラス様の息子として恥を知ればいい」
やってきた従兄が罵るが、レオンはそんなのをここに置いとかないで欲しいと愚痴を返すだけだった。
「それで、何か分かりましたか?」
話題を変えたほうがよさそうだと聞いてみる。
「まだ基礎的な解析を始めたばかりだから何とも言えないけれど、リラ嬢、お体に障りはありませんか?」
「特に問題はありませんが?」
何か悪いところでも見つかったのか……と心配になる。
「昼食前に、いくつか追加の測定をさせてもらえますか?」
「……はい」
なんとも微妙な雰囲気だ。
その後、魔法陣の施された寝台に寝て、手足や体に何やら器具を付けられ、色々と検査された。その度に二人して難しそうな顔をしている。
器具はさっきの女性研究員の年配の人の方がつけ外しを担当してくれたが、それ以外では人を入れないようになっていた。
「あの……どこか悪いんでしょうか?」
流石に不安になって問いかける。
「ああ、そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。ただ、少し魔力が多くて驚いただけです」
いつものように優しく言われたが、何か隠しているように感じてしまう。
「下手に隠されるよりも、はっきりと言われた方がいいのですが?」
「……」
困ったような顔をされた後、別室へ行きましょうと言われた。
職員用の休憩室とは違う、少し散らかった執務室に案内される。ついて来ている彼の従兄の執務室だろうと思った。
「私から説明しようか」
そう言うと、従兄が続ける。
「魔力量と魔法特性が魔法を使う力量を計るものになっている。リラ嬢は、どちらもこれまでの計測での最高値を出している。魔力量が多い場合、魔力特性の数値が低いほど魔力暴走の可能性が高く、炎魔法では最悪それだけで処分対象になる」
他の魔法も魔力暴走は危険視されるが、レオンの炎属性だけは特別に危険視されているのは知っている。
「魔法特性は、ある程度は鍛えることができるとはされているが、伸びしろには個々の限界があると言われている。なので、魔力量を増やしすぎることは危険だと言われている」
「はい……」
「リラ嬢は魔力量が最近増えたと言っていたそうだけど、それは……あの魔法石に触れてからじゃないかい?」
「さあ……どうでしょう。ただ、あれに触れても、魔力が減った感じはなかったです」
「あれを黒くなるまで使ったものたちは、普段の魔力量よりも消費は少なかったようだが、かなり精神を酷使したようだ。計測すると、魔力量は使用した魔法に比べて減少が少なかったようだが、魔法特性が著しく下がっていた」
難しい話になってきて、首を傾げた。
「私も、魔法特性が下がっている可能性があるということですか?」
「いや、少なくともどちらの数値にも大きな変化はないようだった。まあ、簡易的な検査だけれど」
確かに、二度目の検査は一度目ほど長くなかった。
「……不確定が多すぎるが、一度精密検査をした方がいいだろう。魔法特性が高いから生きているが、それが下がればいつ魔力暴走を起こして死んでも不思議がない。例の石が魔力よりも魔法特性を下げるならば、嘔吐や気分不良の症状も頷ける」
私は理解できず頷けない状況だ。
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