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10章:戦いの行方
27.メイの決意
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魔王ゼストダークの吐いた炎は師匠を包んだかに見えたが、彼はそれを瞬時に水の魔法を唱えて消滅させた。
しかし、その後も魔王は立て続けに炎を吐き、するどい爪で師匠を切り裂こうとする。
さらにその間にも、魔王を援護するように周囲に立っている黒いローブの異形の軍団まで容赦なく攻撃魔法を浴びせてくるのだ。
ルークを召喚して応戦しているが、さすがに捌ききれなくなって、師匠のローブに傷や焦げ目が付き始めた。
「――師匠っ!」
師匠が魔法をかわした拍子に体勢を崩して、わずかによろけた。
その隙についに魔王の爪が彼の体を捉え、とっさに庇った腕から赤い血が噴き出る。
「くっ……」
どうしよう。師匠が――
その時、部屋にイリスさんが飛び込んできた。
「メイさん! ジュリアス様はご無事ですか⁉」
「イリスさん! 師匠が……師匠が……」
彼女は水晶玉に映る、傷つき苦痛に顔をゆがめる師匠とそれに襲いかかる巨大な魔王の姿に大きく目を見開いた。
「これはいったい……」
「――イリスさん、私、師匠のところに行きます」
「でも、ジュリアス様はここに残るようにと……」
「確かにそう言われました。だけど私、ここで見ているだけなんて嫌です!」
思い切って私は彼女に自分の思いを伝えた。
「あの人は昔、私を魔物から守ってくれました」
「昔……?」
「はい。魔法の修行中に私の村に魔物退治に来てくれたんです。その時、彼はまだ幼かった私を魔物の攻撃から庇ってくれました」
「そんなことがあったんですか」
「たぶん彼は覚えてないと思うんですけどね」
きっと覚えてないだろう。だって私もあの時の男の子が師匠だと思い出せたのはつい最近だから。
「それから師匠と弟子の関係になってからも、危ないことがあった時はいつだって私を庇って守ってくれた」
「メイさん……」
「――でも私は“守られているだけの女の子”じゃ嫌なんです。彼と一緒に戦いたい」
私がなりたかったのは彼のように「誰かの為に戦える魔法使い」だ。
このままここで彼の背中を見つめているだけなんて、絶対後悔する。
私の決意に、イリスさんは眉をあげて真剣な表情になった。
「メイさん……」
「止めても無駄ですよ」
「いいえ、私も一緒に参ります! きっとこの剣がお役に立ちましょう」
そう言って、彼女は金色に輝く剣の柄を撫でて微笑んだ。
「イリスさん! ありがとう!」
「ではジュリアス様の元に急ぎましょう!」
しかし扉を開けると、そこにはホワイティ王子が立っていた。
「メイちゃん、ジュリィのところへ行くのかい?」
王子は何もかも見通しているかのように穏やかに問いかける。
おそらく彼のところにも前線の状況は報告されているのだろう。
「……はい。もし止めるなら、たとえホワイティ様でも容赦しません」
私の言葉に、彼はニヤリと口の端を軽くあげて見せた。
「……大丈夫だよ。実は僕も抜け出して来たんだ。よし、爺やに見つからない間に一緒に行こう」
「えっ――!」
今から戦いの場に行くとは思えない晴れやかな表情で、王子は私とイリスさんの手をとって移動の魔法を唱え始めた。
「さぁさぁ、皆でジュリィを助けようじゃないか!」
そして、私達は師匠が戦っている平原へと転送されたのだった。
しかし、その後も魔王は立て続けに炎を吐き、するどい爪で師匠を切り裂こうとする。
さらにその間にも、魔王を援護するように周囲に立っている黒いローブの異形の軍団まで容赦なく攻撃魔法を浴びせてくるのだ。
ルークを召喚して応戦しているが、さすがに捌ききれなくなって、師匠のローブに傷や焦げ目が付き始めた。
「――師匠っ!」
師匠が魔法をかわした拍子に体勢を崩して、わずかによろけた。
その隙についに魔王の爪が彼の体を捉え、とっさに庇った腕から赤い血が噴き出る。
「くっ……」
どうしよう。師匠が――
その時、部屋にイリスさんが飛び込んできた。
「メイさん! ジュリアス様はご無事ですか⁉」
「イリスさん! 師匠が……師匠が……」
彼女は水晶玉に映る、傷つき苦痛に顔をゆがめる師匠とそれに襲いかかる巨大な魔王の姿に大きく目を見開いた。
「これはいったい……」
「――イリスさん、私、師匠のところに行きます」
「でも、ジュリアス様はここに残るようにと……」
「確かにそう言われました。だけど私、ここで見ているだけなんて嫌です!」
思い切って私は彼女に自分の思いを伝えた。
「あの人は昔、私を魔物から守ってくれました」
「昔……?」
「はい。魔法の修行中に私の村に魔物退治に来てくれたんです。その時、彼はまだ幼かった私を魔物の攻撃から庇ってくれました」
「そんなことがあったんですか」
「たぶん彼は覚えてないと思うんですけどね」
きっと覚えてないだろう。だって私もあの時の男の子が師匠だと思い出せたのはつい最近だから。
「それから師匠と弟子の関係になってからも、危ないことがあった時はいつだって私を庇って守ってくれた」
「メイさん……」
「――でも私は“守られているだけの女の子”じゃ嫌なんです。彼と一緒に戦いたい」
私がなりたかったのは彼のように「誰かの為に戦える魔法使い」だ。
このままここで彼の背中を見つめているだけなんて、絶対後悔する。
私の決意に、イリスさんは眉をあげて真剣な表情になった。
「メイさん……」
「止めても無駄ですよ」
「いいえ、私も一緒に参ります! きっとこの剣がお役に立ちましょう」
そう言って、彼女は金色に輝く剣の柄を撫でて微笑んだ。
「イリスさん! ありがとう!」
「ではジュリアス様の元に急ぎましょう!」
しかし扉を開けると、そこにはホワイティ王子が立っていた。
「メイちゃん、ジュリィのところへ行くのかい?」
王子は何もかも見通しているかのように穏やかに問いかける。
おそらく彼のところにも前線の状況は報告されているのだろう。
「……はい。もし止めるなら、たとえホワイティ様でも容赦しません」
私の言葉に、彼はニヤリと口の端を軽くあげて見せた。
「……大丈夫だよ。実は僕も抜け出して来たんだ。よし、爺やに見つからない間に一緒に行こう」
「えっ――!」
今から戦いの場に行くとは思えない晴れやかな表情で、王子は私とイリスさんの手をとって移動の魔法を唱え始めた。
「さぁさぁ、皆でジュリィを助けようじゃないか!」
そして、私達は師匠が戦っている平原へと転送されたのだった。
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