上 下
142 / 163
season2

143話:サンタの贈り物

しおりを挟む
 ――あれ、俺おっちゃんに名前言ってたっけ? まぁいいや。

「俺はパン男ロボが欲しい!」

「パンオトコロボ……どんな物じゃろうなぁ」

「見せてやるよ! ちょっと待っててくれ!」

 俺は自分の部屋から、お気に入りのロボットアニメのおもちゃを持ってきた。

「こっちがRXで、こっちがDX。そんでこれがマークツーだ!」

「むずかしいのう……全部同じに見えるんじゃが」

「おっちゃん、よく見ろ。角の形とか武器の色とか違うんだ」

「ほぅほぅ……」

 俺はパン男ロボがいかに大人気で、カッコいいロボットであるかを熱弁した。
 あまりにもおっちゃんが楽しそうに聞いてくれるので、今から上映会を開こうと思ったのに、そうなる前に店のドアが開いてしまった。

「あの、外にトナカイとそりがあるんですけど。――あ、どうもいらっしゃいませ。ワタクシは店主のジェルマンでございます」

 いつの間にか外は雪が降っていたらしく、ジェルはコートについた雪を軽く掃って店の中へ入ってくる。

「あの、アレク。そちらの方はもしかしてサン――」

「おもちゃ工場で働いてるトナカイが好きなゼツリンのおっちゃんだ!」

「すいません、何言ってるのかわかりません」

 ジェルは俺と話すのを早々に切り上げて、おっちゃんの接客をし始めた。

「……それで、何をお求めでございましょうか?」

「このベルが欲しいんじゃよ。トナカイがどこかで落としたらしくて、ずっと悲しんでいたんでなぁ」

「そうでしたか。やはりあなた様は……ではベルをお譲りいたしましょう」

 ジェルは「少々お待ちください」と軽くお辞儀をして、ベルを布で磨いてピカピカにするとおっちゃんに手渡した。

「すまんのう。お代はいくらかのう?」

「世界中の子ども達に夢を与えるあなた様から、お代をいただくわけにはまいりません。どうぞ、そのままお持ちください」

「そうかい、ありがとうなぁ。じゃあ早速トナカイに付けてやるとするかのう」

 そう言っておっちゃんが店の外に出て行くので、俺たちも付いて行った。
 いつの間にか、店の外には立派な角のトナカイと真っ赤なそりがある。

「すげぇ! トナカイだ!」

「ホッホッホッ、ワシの自慢の相棒じゃよ」

 おっちゃんがトナカイの首にベルを付けてやると、トナカイはうれしそうに首を振り、ベルを揺らして澄んだ音を響かせた。

「――じゃあ早速、出発するかのう。アレクサンドル君、ジェルマン君、世話になったのう。ありがとうよ!」

 おっちゃんが真っ赤なそりに乗り込むと、トナカイは暗くなり始めた空を見上げて進み始めた。
 するとまるで飛行機が離陸するみたいにトナカイとそりが宙に浮かんで、そのまま夕暮れの空に消えていったんだ。

「おっちゃん、本物のサンタだったのか……」

 それから数日後。
 朝、目が覚めると、俺の枕元には木彫りのパン男ロボ、そしてジェルの枕元には木彫りのトナカイのブローチが置かれていた。

 ――あぁそうか、今日はクリスマスだな。サンタのおっちゃん、素敵なプレゼントありがとうな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

あやかし旅籠 ちょっぴり不思議なお宿の広報担当になりました

水縞しま
キャラ文芸
旧題:あやかし旅籠~にぎやか動画とほっこり山菜ごはん~ 第6回キャラ文芸大賞【奨励賞】作品です。 ◇◇◇◇ 廃墟系動画クリエーターとして生計を立てる私、御崎小夏(みさきこなつ)はある日、撮影で訪れた廃村でめずらしいものを見つける。つやつやとした草で編まれたそれは、強い力が宿る茅の輪だった。茅の輪に触れたことで、あやかしの姿が見えるようになってしまい……! 廃村で出会った糸引き女(おっとり美形男性)が営む旅籠屋は、どうやら経営が傾いているらしい。私は山菜料理をごちそうになったお礼も兼ねて、旅籠「紬屋」のCM制作を決意する。CMの効果はすぐにあらわれお客さんが来てくれたのだけど、客のひとりである三つ目小僧にねだられて、あやかし専門チャンネルを開設することに。 デパコスを愛するイマドキ女子の雪女、枕を返すことに執念を燃やす枕返し、お遍路さんスタイルの小豆婆。個性豊かなあやかしを撮影する日々は思いのほか楽しい。けれど、私には廃墟を撮影し続けている理由があって……。 愛が重い美形あやかし×少しクールなにんげん女子のお話。 ほっこりおいしい山菜レシピもあります。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

「お節介鬼神とタヌキ娘のほっこり喫茶店~お疲れ心にお茶を一杯~」

GOM
キャラ文芸
  ここは四国のど真ん中、お大師様の力に守られた地。  そこに住まう、お節介焼きなあやかし達と人々の物語。  GOMがお送りします地元ファンタジー物語。  アルファポリス初登場です。 イラスト:鷲羽さん  

処理中です...