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2章:いろんな人の、いろんな事情。
再び、王城へ ――4
しおりを挟む「……うそ、だって、そんなこと……」
「信じてくれるまで待つさ。……さて、悪いね陛下。変な雰囲気にしてしまって」
「こんな可愛らしい子にプロポーズとは、お前も隅に置けないな」
やっぱり陛下とリンジーって結構フランクな付き合いだったりする?
「……ええと、ここでみんなを預かってくれているんですよね?」
「ああ。衣食住は約束しよう。そして、他に――この子たちの能力を見極めて、それぞれの能力にあったもの――」
「あ、待ってください。能力にあったもの、じゃなくて、一通り体験させてから決めさせてもらっても良いですか? 能力にあっていても、性格が合わないと苦痛でしょうから」
「ほう? 面白い考え方だな」
そうかなぁ。だってコツコツと積み重ねていくタイプ、いろんなことを要領よくできるタイプ、苦手なことでもどうしてもやりたいってタイプ。いろんな子たちがいるだろうし、好きなことをして欲しい……と、思うのは過保護な考え方なんだろうか。
「わ、私からもお願いします。この子たち、掃除や洗濯、料理や刺繍などは得意なんですけれど、男の子たちは騎士に憧れていましたし、女の子の中には自分で服を作りたいって子もいます」
「ふむ。それでは、最初のうちはいろいろやらせてみよう」
陛下はオレらの要望をいろいろと聞いてくれた。――心配いらなかったかな?
とりあえず、子どもたちの部屋の近くを借りることにした。
「なんだ、身ひとつで来てよかったのに」
「え、いや、それはちょっと」
借りる部屋も陛下が案内してくれた。王宮で管理している服に身を包む勇気はない。オレとカイルはベッドがふたつ置いてある部屋を借り、荷物を解き子どもたちの相手をしに行った。
子どもたちは教会で見たときよりも表情が明るい。
「あの、陛下。質問をしてもよろしいでしょうか?」
カイルが陛下を見上げる。「どうした?」と首を傾げ、問いを促(うなが)した。
「リンジー卿とどのようなご関係で……?」
カイルの問いに陛下は目を丸くして、それから「どういう関係、か」と呟く。そして、数秒、いや数分悩み、ポンと手を叩いた。
「悪友、がピッタリかもしれん」
「……あ、悪友?」
「リンジーは人間に関しては優しいだろう。それを利用してちょいとな?」
悪戯っぽく笑っているけれど、なにをやっていたかは怖くて聞けない。……と思ったら、オレらが話している内容が気になったのか、リンジーが近付いてきた。
「おや、ボクはキミに利用されていたのかい?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべて陛下に問うと、陛下はリンジーの肩をぐっと引き寄せてから離し、バシバシと豪快に背中を叩いた。
「リンジーだって俺を利用していただろう。持ちつ持たれつの関係ってわけだ」
「珍しいね、カイルがボクのことを気にするなんて」
……リンジー、いつから聞いていたんだ? カイルが眉を下げてリンジーを見た。彼は陛下から離れると、がしりとカイルの手首を掴み、「そんなに聞きたいなら、教えてあげよう!」と部屋の隅に連れて行ってしまった。
「やれやれ、賑やかになりそうだな、『エリィ』?」
「まぁ、それが子どもたちの安全のためですし……って、え?」
「やっぱり『エリィ』が『エリス』だったか。なかなか似合っていたぞ?」
――や、ら、れ、た!
陛下はしてやったりとほくそ笑んだ。自分の名前と似たような偽名にしていたから、思わず反応してしまったんだ。
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