上 下
162 / 184
2章:いろんな人の、いろんな事情。

そして、それから。 ――11

しおりを挟む

「うーん、じゃあ、手を繋いで一緒に寝る? あ、でも、オレの寝相そんなに良くないから外れちゃうかな」
「でしたら、こういうのはどうでしょう?」

 カイルは懐からリボンを取り出すと、器用にオレとカイルの手首に巻いた。確かにこの方法ならずっと手首は触れ合っているけど、オレはともかくカイルは動きづらくないのだろうか。

「動きづらいんじゃ?」
「大丈夫ですよ。リンジー卿からもらった魔法紙もありますし」

 器用に片手で魔法紙を取り出す。……いや、本当に器用だな?

「それに、彼の結界がある限り、ルトナーク家は王城よりも安全ですよ」

 どんだけすごいんだ、リンジー。

 そういえば、陛下とリンジーも顔見知りっぽい感じだったな。真っ白だったけど、リンジーのことを知っているように見えた。

「そういえば、カイルの髪は黒いままなんだな」

 繋がれていないほうの手で、カイルの髪を摘まむ。そのことに今気付いたのか、目を伏せると元の銀髪になった。髪を染めたのも魔法なのか、もしかして。便利な世界だなぁ。

「リンジーと話し合っていたの?」
「はい。……というか、リンジー卿からの提案です。色を交換してみよう、と」
「……なんかリンジー、楽しんでないか……?」

 カイルはなにも言わずに眉を八の字にして微笑んだ。あ、これオレと同じ意見だな。リンジーは今回の事件のこと、どう思っているんだろうなぁ。彼の視点だと、人間がなんかやってるなぁって感じなのか?

「とりあえず、今日からこの方法を試してみても良いですか?」
「まぁ、試してみるだけなら……」

 あまりにも真剣なまなざしに、思わずうなずいてしまった。

 とはいえ、今からこの状態なのは動きづらいのでリボンは解いてもらった。

「それにしても、よくそんなリボン持っていたな?」
「いろいろ持ち歩いていますよ。なにが必要になるかわかりませんから」

 飴を持ち歩いているのは知っているけど、そんなにいっぱい持ち歩いていたのか? と目を丸くする。

「飴以外はなにを持っているのさ?」
「飴はエリスさまの魔力を回復するのに必要でしょう? その他は、先程のリボンやハンカチ、小型のナイフに包帯……」
「待って、どっから出してるの!?」

 ひょいひょいと物を取り出すカイル。ポケットに手を入れるわけでもなく、むしろどっちかっていうとなにもないところから次々と物が出て来ているような!?

「あ、これも無属性魔法のひとつです」
「便利!」
「はい、とても。あまり知られていないので、秘密ですよ?」
「そうなんだ」

 この世の中に無属性の魔法を使える人は、どのくらいいるんだろう? カイルはいろんなものを持ち歩いているというか、無属性魔法で収納しているようだった。これ、オレも使えたら便利なんだけどなぁ。

 一通り見せてもらってお礼を伝えると、カイルは取り出したものすべて無属性の魔法で飲み込んだ。……いい魔法だなぁ、アレ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

Ωの皇妃

永峯 祥司
BL
転生者の男は皇后となる運命を背負った。しかし、その運命は「転移者」の少女によって狂い始める──一度狂った歯車は、もう止められない。

完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完結】我が国はもうダメかもしれない。

みやこ嬢
BL
【2024年11月26日 完結、既婚子持ち国王総受BL】 ロトム王国の若き国王ジークヴァルトは死後女神アスティレイアから託宣を受ける。このままでは国が滅んでしまう、と。生き返るためには滅亡の原因を把握せねばならない。 幼馴染みの宰相、人見知り王宮医師、胡散臭い大司教、つらい過去持ち諜報部員、チャラい王宮警備隊員、幽閉中の従兄弟、死んだはずの隣国の王子などなど、その他多数の家臣から異様に慕われている事実に幽霊になってから気付いたジークヴァルトは滅亡回避ルートを求めて奔走する。 既婚子持ち国王総受けBLです。

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

処理中です...