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2章:いろんな人の、いろんな事情。

対応策 ――2

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「エリスくん。以前ボクが教えたことは覚えているかな?」
「え? なにを?」
「人間の身体に属性は最大何個かい?」
「えっと、王族でも三属性、だったよな」
「そう。で、きみの属性数は?」

 ……まさか、オレの身体が、多属性についていけない? ドクンドクンと鼓動が大きな音を立てている気がする。胸に手を置き、落ち着かせるように深呼吸を繰り返す。

「結論から言えば、魔力が足りていないのさ。……失ったわけじゃないから、魔力を回復するポーションを飲んでも無駄。魔力自体を強化しないといけない。その手っ取り早い方法を教えてあげよう」
「そんな方法があるの?」

 リンジーは足を組んで、顎の下で手を組み、にこりと微笑む。

 ……なんか、イヤな予感がするぞ?

「質の良い魔力を持つ者と、触れ合えばいい」
「触れ合う?」

 怪訝そうに目元を細めると、リンジーはカイルの手とオレの手を取り、重ねさせた。

「言葉通りさ。もっと効率が良いものがあるけれど、子どもの耳に入れるのはちょっとねぇ。ただ触れ合うだけでも、そこから魔力が混ざり合い、きみの魔力がすこーしずつ増えていくよ」

 思ったよりは簡単に魔力が増えそうだ。胸を撫でおろし、カイルを見た。確かにカイルなら、四六時中一緒にいるし。というか、リンジーはカイルの魔力の質が良いと思っているってことだよな。魔力の質ってなんだろう?

「リンジーは、魔力の良し悪しがわかるの?」
「うん? まぁねぇ。それに、カイルは無属性の持ち主だろう。これほどピッタリな相手はいないよ」

 カイルの眉が跳ねる。自分が無属性であることを、なぜ知っているのかというようにリンジーを凝視していた。彼の属性を知っている人は少ないはずだ。

「えっと、なんでリンジーがカイルの属性を知っているの?」
「それは秘密さ。とにかく、できるだけ一緒にいること。魔力の容量を増やさない限り、エリスくんの頭痛は治らないと思いなさい」
「……二年間は平気だったのに?」
「それだけ属性がきみに馴染んだということさ」

 口角を上げるリンジー。属性に馴染む、馴染まないがあるのか? と重ねていないほうの手をマジマジと見つめていると、リンジーが言葉を続けた。

「カイルの魔力の稀にみる質の高さだ。魔法の属性が『無』というのも、エリスくんと相性が良い。なぜなら、無属性は他の属性の影響を受けない属性だからね。何度エリスくんと触れ合っても、その属性に左右されることはない」

 属性が左右される? どういう意味だ? 説明をお願いするとリンジーは「ふふふ」と笑うだけだった。教えてくれる気はないらしい。

「まぁ、触れ合うだけの方法だとかなり時間が掛かるだろうけど、時間はたくさんあるのだから、ゆっくりと進めれば良いと思うよ」
「そうなんだ……?」

 つまり、あの頭痛を治すには、カイルと触れ合わないとダメってことか。ずっと頭痛と付き合わないといけないのかと考えていたところだから、ちょっと安心した。

 でも、なんでリンジーはそんなことまで知っているんだろう? 長生きしているから、じゃないような気がするんだけど。

 カイルは重なった手を見つめたまま動かない。大丈夫だろうか。

「カイルはどうだい? 自分の魔力がエリスくんの魔力と混じり合うのがわかるかい?」
「ええ、意識するとはっきりと。意識しないとあまり感じませんね」
「そうだろう、そうだろう。エリスくんが学園に入るまでまだ時間があるからね、魔力の容量を増やしたほうが良いだろう。授業中に倒れたくはあるまい?」

 リンジーが椅子から立ち上がり、パチンと指を鳴らすと防音の魔法を消した。

「それじゃあ、ゆっくり休んでくれたまえ」

 ひらりと手を振って、リンジーは部屋の鍵を開けて出て行く。オレとカイルは視線を交わし、同時に息を吐いた。
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