132 / 184
2章:いろんな人の、いろんな事情。
対応策 ――2
しおりを挟む「エリスくん。以前ボクが教えたことは覚えているかな?」
「え? なにを?」
「人間の身体に属性は最大何個かい?」
「えっと、王族でも三属性、だったよな」
「そう。で、きみの属性数は?」
……まさか、オレの身体が、多属性についていけない? ドクンドクンと鼓動が大きな音を立てている気がする。胸に手を置き、落ち着かせるように深呼吸を繰り返す。
「結論から言えば、魔力が足りていないのさ。……失ったわけじゃないから、魔力を回復するポーションを飲んでも無駄。魔力自体を強化しないといけない。その手っ取り早い方法を教えてあげよう」
「そんな方法があるの?」
リンジーは足を組んで、顎の下で手を組み、にこりと微笑む。
……なんか、イヤな予感がするぞ?
「質の良い魔力を持つ者と、触れ合えばいい」
「触れ合う?」
怪訝そうに目元を細めると、リンジーはカイルの手とオレの手を取り、重ねさせた。
「言葉通りさ。もっと効率が良いものがあるけれど、子どもの耳に入れるのはちょっとねぇ。ただ触れ合うだけでも、そこから魔力が混ざり合い、きみの魔力がすこーしずつ増えていくよ」
思ったよりは簡単に魔力が増えそうだ。胸を撫でおろし、カイルを見た。確かにカイルなら、四六時中一緒にいるし。というか、リンジーはカイルの魔力の質が良いと思っているってことだよな。魔力の質ってなんだろう?
「リンジーは、魔力の良し悪しがわかるの?」
「うん? まぁねぇ。それに、カイルは無属性の持ち主だろう。これほどピッタリな相手はいないよ」
カイルの眉が跳ねる。自分が無属性であることを、なぜ知っているのかというようにリンジーを凝視していた。彼の属性を知っている人は少ないはずだ。
「えっと、なんでリンジーがカイルの属性を知っているの?」
「それは秘密さ。とにかく、できるだけ一緒にいること。魔力の容量を増やさない限り、エリスくんの頭痛は治らないと思いなさい」
「……二年間は平気だったのに?」
「それだけ属性がきみに馴染んだということさ」
口角を上げるリンジー。属性に馴染む、馴染まないがあるのか? と重ねていないほうの手をマジマジと見つめていると、リンジーが言葉を続けた。
「カイルの魔力の稀にみる質の高さだ。魔法の属性が『無』というのも、エリスくんと相性が良い。なぜなら、無属性は他の属性の影響を受けない属性だからね。何度エリスくんと触れ合っても、その属性に左右されることはない」
属性が左右される? どういう意味だ? 説明をお願いするとリンジーは「ふふふ」と笑うだけだった。教えてくれる気はないらしい。
「まぁ、触れ合うだけの方法だとかなり時間が掛かるだろうけど、時間はたくさんあるのだから、ゆっくりと進めれば良いと思うよ」
「そうなんだ……?」
つまり、あの頭痛を治すには、カイルと触れ合わないとダメってことか。ずっと頭痛と付き合わないといけないのかと考えていたところだから、ちょっと安心した。
でも、なんでリンジーはそんなことまで知っているんだろう? 長生きしているから、じゃないような気がするんだけど。
カイルは重なった手を見つめたまま動かない。大丈夫だろうか。
「カイルはどうだい? 自分の魔力がエリスくんの魔力と混じり合うのがわかるかい?」
「ええ、意識するとはっきりと。意識しないとあまり感じませんね」
「そうだろう、そうだろう。エリスくんが学園に入るまでまだ時間があるからね、魔力の容量を増やしたほうが良いだろう。授業中に倒れたくはあるまい?」
リンジーが椅子から立ち上がり、パチンと指を鳴らすと防音の魔法を消した。
「それじゃあ、ゆっくり休んでくれたまえ」
ひらりと手を振って、リンジーは部屋の鍵を開けて出て行く。オレとカイルは視線を交わし、同時に息を吐いた。
1
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~
沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。
巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。
予想だにしない事態が起きてしまう
巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。
”召喚された美青年リーマン”
”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”
じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”?
名前のない脇役にも居場所はあるのか。
捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。
「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」
ーーーーーー・ーーーーーー
小説家になろう!でも更新中!
早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる