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2章:いろんな人の、いろんな事情。
無事に渡せた。 ――2
しおりを挟むじゃあオレもサクッと渡そう。護衛の人が集めているみたいだったので、「お願いします」とその人に渡した。山のようにあるアレン殿下へのプレゼントを見て、この中から殿下を害するなにかがあるのかもしれないと眺め、それを阻止するためにこんな風に集めているんだろうな。念には念を、ってことか。
それから十分後くらいにアレン殿下が戻ってきた。大量のプレゼントを見て、一瞬眉を顰めたが、すぐに表情を取り繕い見事な営業スマイルを浮かべた。……王族って大変だなぁとのんきに考えながら、また美味しい料理を堪能することにした。炭酸も飲みたい。
二年で結構食べられるようになったし、ちょっとくらいいつも食べている量より増やしてもいいかなーなんて思っていたら、シェリルに止められた。
「がっつかないの、もう」
「あはは……」
だって美味しいから……と言い訳にならなさそうな言葉を選ぶオレもオレだ。ちょっとこのパーティーの雰囲気にのまれているのかも。
「ところでこのパーティーって何時に終わるんだっけ」
「招待状、ちゃんと見てなかったのね。あたくしたち成人していない子どもはそろそろ終わりよ。そして、明日は城下街で平民たちが楽しめるお祭りをするのよ」
「わぁ、そっちも見たい。っていうか絶対、オレはそっちのほうが浮かない」
「……真顔で言うのやめてくれる……? それに、自分のことを地味地味言っているけど、年々変わってきてるの気付いてないの?」
え? と思わず顔に触れる。地味なままで良いんだけど。ルトナークの家族ははっきりとした美男美女に美少女だけどさ。毎日見ているからか、家族みんなの顔を見ても安心できるようになった。これはきっと『エリス』の記憶が戻ったのも関係あるのかもしれない。
ついでに言えばオレが目指しているのは、田舎でのスローライフ。地味な顔でも構わないと思うのだけど……。シェリルの派手な顔立ちを眺めていると、「なによ?」と口をへの字に曲げた。
「いや、シェリルって大人になると綺麗系だろうなぁと思って」
「褒めたってなにも出ないわよっ」
顔を真っ赤にさせる姿は可愛らしいけどね。
父さんや母さん、シェリー、リンジー、そしてカイルを見て、この中で一番地味な顔立ちなのはやっぱりオレだな、としみじみ思った。というか、いつの間にこっちに来ていたんだ、みんな。
緊張してまともに顔を見られなかったけど、もう雰囲気でわかる。陛下も美男、王妃も美人! さらに紹介された人たちも顔面偏差値高かったし、さすが乙女ゲームの世界って感じだ。
「それにしても、本当、すごい量ね。点検する人たち大変そう」
「他にもいろいろ贈られているだろうから、余計にな」
がんばれ、護衛の人たち。そう心の中で呟いて、喉が渇いたからジュースを取りに行った。どのジュースを飲んでみようかなーとグラスを眺める。
なんせいろんなジュースが飲み放題なのだ。こんなに豊富にあると迷ってしまう。とりあえず、炭酸飲みたい。
あのしゅわしゅわとした喉越し、領地に戻ったら味わえなくなりそうだし。もう一杯くらい飲んでも許されるだろう。許してください。
気泡が見えるグラスに手を伸ばすと、ふとオレに話しかけてきたカーティスがじっとこっちを見ていた。視線がバチっと交わる。このジュース飲みたいのかな?
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