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2章:いろんな人の、いろんな事情。

ダンスレッスン ――2

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 そして――玄関前で王宮の迎えを待っていると、みんなが集まってきた。

「悪いな、カーメル。あとを頼む」
「大丈夫よ、お兄さま。ポーラたちと待っているから、気をつけていってらっしゃい」
「ああ。……さて、そろそろ時間だな」

 この美男美女、美少年、美少女の軍団にオレが入っていて大丈夫なんだろうか。なんて思わず遠くを見つめてしまう。ふと、その遠くからこちらに近付いてくる人がいることに気付いた。まるで紅葉のような赤さのローブを被った人。……ずいぶん目立つローブだな?

「王宮から参りました、魔導師でございます。転移の魔法を使いますので、みなさま一ヶ所に集まってください」

 ちゃんとプレゼントも持ったし、準備は万全だ。

 それにしても、転移の魔法ってテレポート? そういう魔法があるんだ。どの属性に入るんだろう。属性といえば、まだカイルの無属性魔法について教えてもらってないや。

 ぽん、と背中を父さんに叩かれて、見上げる。父さんは「行こうか」と優しく声を掛ける。小さくうなずいてから歩き出す。

 オレらが一ヶ所に集まると、輪になるように手を繋ぐように指示された。カイルとシェリルと手を繋ぐ。ふたりとも、少しドキドキしているみたいだ。ドキドキというか、ワクワクかも? 魔導師は「では、行きますよ」とすぐに魔法を使った。

 そして、あっという間に王宮についたようだった。マジか。なんかあまりにもあっという間すぎて感動もなにもない。

「で、では、このまままっすぐむかってください……」
「……あの、大丈夫ですか?」
「はい、すこしやすめばすぐによくなりますので……」

 魔導師はぐらぐらと身体を揺らしていた。この人数を転移の魔法で運ぶのって、もしかしてかなり大変なことなんじゃ? と考え、カイルを呼んだ。

「はい、エリスさま」
「飴持ってる?」
「ございますよ」
「もらっていい?」

 カイルが飴を持ち歩いているのに気付いたのは、十一歳の頃だった。オレが疲れたと口にすれば、飴をくれるのだ。それもいろんな種類。甘党なのかと思ったけど、これはたぶんオレのために用意された飴だ。なので、どう使っても良い、はず。

 手のひらをカイルに向けると、コロンと飴玉を落した。可愛らしい包み紙を見て、こういう飴をどこで買っているのだろうかと首を傾げつつ、ぎゅっと握って魔力を込める。魔力を回復する飴のできあがり。かさかさと包み紙を広げ、飴玉を取り出す。魔導師のローブを掴んでくいくいと引っ張ると、不思議そうにオレを見た。

「どうしましたか……? むぐっ」
「お礼だよ。ゆっくり舐めて食べてね! 行こう、カイル」

 口が開いたところに飴玉を押し込む。目を白黒させてしまったけど、大丈夫かな? ちょっと不安に思いつつ、魔導師の口がもごもごとしているのを見て大丈夫そうだと結論付けた。

 ちょっと先に行っていたシェリルたちに追いつくために、急いで足を動かした。

 魔法の練習をしていたときに気付いたんだけど、食べ物に魔力を込めると魔力を回復するみたいなんだけど、この力に気付いている人がいないのは、なんでだろう?

 おかげでだいぶ楽に魔法の練習はできているんだけど。

「っと、ここが王宮の門?」
「みたいね。なんか夢みたい」
「本当にね……」

 正門(?)の前にいる騎士? から「招待状をお持ちですか?」と聞かれた。父さんを見ながら。父さんはオレに視線を向けると、小さく首を縦に動かす。胸の内ポケットから招待状を取り出し、騎士に見せると驚いたように目を丸くされた。でも、招待状を見てすぐに微笑み、

「ようこそ、王宮へ。ルトナーク一家を歓迎いたします」

 そう言って頭を深々と下げた。
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